人財マネジメントと育成

基本的な考え方

グループVALUEに掲げている「社員が誇りを持っていきいきと働き、果敢に挑戦できる企業文化を大切にする」ための人事施策や経営幹部後継者および各層の計画的な人財育成、D&I活動などは、グループ全体で一体感を持って取り組む必要があることから、グループ人事ポリシーとして「事業は人なり ~事業の盛衰は人の才徳に拠る~」を掲げ、以下の8つの基本方針に沿って人事戦略を進めています。

日清紡グループ人事ポリシー

事業は人なり ー 事業の盛衰は人の才徳 に拠る ー

  • ①今及びこれからの事業を担い発展させることに貢献できる人を、
  • ②採用し、育成し、適所に配置し、
  • ③熱意、創造性を引き出し、
  • ④心身の健康を保ち、
  • ⑤適正に評価し、適正に処遇する

正しく稼ぐ人を各階層、各機能に持続的に育成・配置する

※ 才徳:「才知(才能と知恵)」と「徳行(道義にかなった行い)」の合成語

日清紡グループ人事戦略

  • ①グループ全体として一体感、統一感のある人事施策を立案・推進する
  • ②多様な人財が大きな働きがいをもち、業績向上にむけ不断の挑戦をする職場風土をつくる
  • ③経営幹部、後継者
    • ・不透明、不確実で正解のない時代に挑戦、変革できるリーダーを計画的に育成する
    • ・世界で戦えるリーダーをつくる
  • ④管理職、管理職候補者
    • ・創造、革新によって事業化力、収益力強化をけん引し正しく稼ぐ管理者をつくる
  • ⑤一般社員層
    • ・技術変革の大きな流れに対応し、業務効率・生産性向上を実現できる人財を育成する
    • ・将来の変革リーダーの候補となる人財を育成する
  • ⑥すべての社員が心身ともに健康で働き、業績に貢献する職場環境をつくる
  • ⑦多様な人財の融合の中で、優秀な人財の採用、登用に繋がる仕組みをつくる
  • ⑧多様な人財の活躍と業績を反映する、よりシンプルかつメリハリの効いた報酬制度をつくる

推進体制

日清紡グループは「事業は人なり」という人事ポリシーに基づき、日清紡ホールディングス(株)の取締役経営戦略センター長を責任者とする体制のもと、将来の事業発展を見据えた人財獲得・育成に取り組んでいます。また、年2回、経営戦略センター 人財・総務室 人財グループが主催する「グループ人事部門会議」を開催し、グループ横断的に人事関連の方針・課題について討議しています。

第5期サステナビリティ推進計画で掲げた、「事業推進に必要な経営幹部候補の育成」「人員年齢構成是正のためのキャリア採用強化」を達成するために、KPI を設定し対策を講じています。

※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標

日清紡グループの具体的な取り組み

「第5期サステナビリティ推進計画」では、人財獲得・育成を重点活動項目とし、人財マネジメントと育成に取り組んでいます。①経営幹部ポスト(執行役員以上)に占める後継者プログラム受講者率を上げる、②人員年齢構成是正のためのキャリア採用強化を目標としてKPI を設定し、PDCAを回しながら活動を進めています。

人財の採用、定着

より多様なバックグランドを持つ人財集団の形成のため、また人員年齢構成是正のため、新卒に加えてキャリア採用を強化しています(概ね新卒とキャリア採用を同数程度)。多様性の確保のため特に女性、外国人については積極的に求人しています。また、優秀なキャリア採用者の獲得および活躍促進のため、以下の対応をしています。

  • ①採用競争力のある給与水準の維持
  • ②職務内容を明確にする役割等級制度
  • ③勤務年数にかかわらず早期昇格を可能とする人事制度
  • ④さまざまな働き方や職業観に対応する複線型人事制度
  • ⑤テレワーク制度やサテライトオフィスなど働く環境の整備
  • ⑥キャリア採用者受入れ教育の充実とフォロー
  • ⑦社員の知人などを紹介する社員紹介制度(リファラル制度)
  • ⑧自己都合退職者に対しての再入社制度(リジョイン制度)
  • ⑨勤続5年ごとに休暇と手当を支給する制度(ディスカバリー休暇制度)

今後は、高度専門職や職種限定職向けの処遇の検討、勤務場所・時間の自由度を高める施策などを企画していきます。

社員の離職を防止するための施策として以下を行っています。

  • ①上司による人事評価面談に加えてキャリアシートによる定期的な面談を実施し、キャリア形成のサポートを行っています。
  • ②多様な価値観・職業観を持つ、より多くの社員が能力開発や新しい事業に自ら挑戦する機会を増やし、また入社・配属後のミスマッチを解消するため社内公募制度(ニューチャレンジシステム)をグループ横断で運用しています。
  • ③環境変化がキャリアに及ぼす影響を知り、将来の新たな働き方や学び直しを考えるきっかけとしてキャリア研修を実施しています。

また、若年者の離職防止対策については、オンボーディングの考え方で、内定段階からラーニングマネジメントシステムの開放を行ったり、人事担当者との面談などを設けているほか、入社後については1年目の社員を対象にメンター制度を設けたり、適宜人事担当者によるフォロー面談、アンケートを実施し早期に変化点を察知し適宜対応するなど、会社生活にスムーズに馴染めるようサポートしています。そのほか、入社初年度、入社2年目、3年目、5年目にはフォローアップ集合研修を実施し、新入社員研修のフォローアップやキャリア研修を行い、定着を図っています。

人財の育成

研修体系図

研修体系図

デジタル人財育成

2021年に導入したラーニングマネジメントシステムでは、標準コンテンツとしてデジタル関連の講座を準備し、自由に学習できるようにしています。2023年には、デジタル関連のeラーニング講座を従来の5講座から21講座に拡充しました。

また、2020年より新入社員研修に「デジタル基礎研修」を導入し、最新のトレンドを理解するためのデジタル関連の基礎知識を学習しています。2023年には同内容をブラッシュアップし、「デジタルリテラシー研修」として体系化しました。社内のデジタル関連の好事例を共有し、職場を超えてデジタル技術を用いた業務改善案・新しいデジタルビジネスのアイデアなどを議論する場を設けています。

また、各職場の問題解決にデジタル技術を活用できる人財の育成を目的として、「デジタル・テクノロジー時代の課題解決法研修」を2023年より実施し、さまざまな課題解決アプローチ法・およびテクノロジー活用に必要な思考法を学んでいます。

今後もデジタル技術の活用を身近なものと捉えて実践してもらえるよう、さまざまな企画を進めていきます。

キャリアサポート

社員一人ひとりの挑戦と成長を後押しするため、各個人に着目した施策を実施しています。一人ひとりが自らのキャリアを定期的に振り返り、目指すキャリアを見つめ直す機会として各世代に対してキャリア研修を実施しています。

新たなキャリアへの挑戦の機会としては、日清紡グループ社員全員が自身の目指すポジションへの異動にチャレンジすることができるニューチャレンジシステムや自己申告制度があり、さらに社員の成長を支援する仕組みとして、メンター制度やキャリア面談を実施しています。

自律的な学びをサポートするため、多様な学習コンテンツをいつでもどこでも受講することができるラーニングマネジメントシステムのメニューの拡充も進めています。

経営幹部後継者育成

経営幹部の後継者育成は、グループ共通のジョブグレードに基づいて各社の主要ポジションにおける後継者候補のリストを毎年作成するとともに、後継者候補者向けのプログラムを実施しています。具体的には、部長層以上には、経営層にふさわしいマインドを習得する経営マインド研鑽研修、経営知識・マインド・役割行動を習得する選抜型外部研修、事業創出力・突破力を習得する実践型ワークショップなど、グループ内異業種交流研修を実施しています。さらに、2020年度より技術知識と経営能力を兼ね備えた経営人財を育成するために技術経営大学院(MOT)にも複数名派遣しています。

現時点で、本プログラム受講者のうち50%以上が執行役員以上のポストに就任しています。

経営幹部後継者育成プログラム 累積受講者数(2015年~2024年)

経営幹部後継者育成プログラム

人財のグローバル化

「人財のグローバル化」を進めるため、海外赴任者対象の異文化理解の研修、海外派遣者対象の語学学校での研修、グループ会社共催で英語・ビジネス日本語の研修などを実施してきました。加えて、35歳未満の社員が対象の海外経験促進策や、TOEIC・CASEC検定試験受験料・交通費補助制度、オンライン英会話受講費用半額補助制度、語学系通信教育・eラーニング受講費用補助制度などを運用しグローバルに通用する人財の育成を進めています。

グループ会社における活動事例

多様な人財採用と育成プログラム

「JRC日本無線グループは、英知と創造力により優れた価値を提供し、人と社会と世界の未来づくりに貢献する」という経営理念を実現するため、採用と教育に力を入れています。新卒採用とキャリア採用による、多様な人財の採用を強化し、入社後は人財力向上教育とプロフェッショナル教育に分けて体系立てた教育を実施しています。従業員の能力を最大限に発揮できる教育環境を整え、一人ひとりがプロフェッショナルを目指し、自律的に考え、行動する社員を育成することに取り組んでいます。

また、社員の育成には、やる気の向上や能力向上のために、キャリア形成を促すことも重要と考えています。そのため、公募制度を導入し、異動に対して主体的な機会を提供しています。2023年度には、37件の募集があり、11名の異動者がありました。公募制度は、人財育成のみならず、社内を活性化させ、社内の風土や体質の変革にもつながることも期待されます。

教育体系図

教育体系図

若手社員への面談

上田日本無線(株)では2023年度、新卒入社7年目、およびキャリア入社2年目の社員を対象に人事面談を実施しました。

<面談内容>

  • ①体調の確認
  • ②現在の仕事内容
  • ③会社への要望
  • ④今後のキャリア形成

この面談は、同社における30歳手前での離職率が高いことへの対策として、人事グループにて実施しています。これまで2022年、2023年で社員20名の面談を実施しました。面談結果を経営陣と所属長にフィードバックし、職場での対策が必要な場合は対処しました。その結果、30歳手前の離職率を低減することができました。

また、同社では「中堅層が少ないため、所属長と若手社員との年齢差が大きくコミュニケーションが上手く取れない」という相談を受け、各所属長向けに外部講師を招きコミュニケーション研修を実施しました。さらにサーベイ結果の対応として、チーム長とチーム員間で個別面談を行い、役割認識の統合を図るなど、改善に努めています。

「日清紡マイクロデバイス人事戦略」を策定

日清紡マイクロデバイス(株)では、将来の同社のあるべき姿の実現に向けて、「人事戦略」を策定しました。

策定にあたり、人的資本経営や少子高齢化などの取り巻く環境変化、ならびに同社の人員構成や従業員サーベイ結果などを分析した上で、企業理念や「日清紡グループ人事ポリシー」・「日清紡グループ人事戦略基本方針」を踏まえ、経営戦略と連携した「日清紡マイクロデバイス人事ビジョン」・「日清紡マイクロデバイスが求める人財像」を決定しました。また、この「日清紡マイクロデバイス人事ビジョン」・「日清紡マイクロデバイスが求める人財像」の実現に向けて、「採用戦略」・「人財育成戦略」・「エンゲージメント向上戦略」の3つの戦略を立案し、それぞれにおいて、方針や重点施策を設定した上で、優先順位を付けて取り組みを開始しています。

同社は、この人事戦略の実現を通じて、将来の同社のあるべき姿の実現に取り組んでいます。

ブレーキ事業グループ人財育成基本理念を策定

日清紡ブレーキ(株)は2023年6月にブレーキ事業グループの人財育成基本理念を策定しました。「ブレーキ事業グループがめざす姿」を明確にし、社員一人ひとりが職務を遂行し、社会的責任を果たしていく上で大きな支えとなるものとして位置付けをしました。

ブレーキ事業グループでは、めざす姿として「製品が社会の安全安心を担うことを理解し、自身の業務を通じてその実現をめざす」、「変化を恐れず、カイゼンを実行し、自己成長と技術向上を通じて社会に貢献する」、「多様性を認め・受け入れ・活かして協働し成果を生む」の3つを掲げています。

人財育成基本理念を策定した目的は「人財育成において、会社と従業員の皆さまの目線を合わせる」ことと、「従業員に対して、日清紡ブレーキの人財育成に対する考え方、方針を明確にし、より自分事として捉えるようにする」ことの2つです。策定にあたり、これまで同社が取り組んできた人財育成に対する考え方を、時代に合わせて再定義しました。

「ブレーキ事業グループがめざす姿」を達成するため、2024年度から人財育成基本理念を念頭に人事施策を立案、実行をしています。今後は海外各拠点と連携を進めて、ブレーキ事業グループの価値向上を進めていきます。

ブレーキ事業グループ 人財育成基本理念体系

人財育成基本理念体系図

人財育成体制の強化

アメリカのNisshinbo Automotive Manufacturing Inc.では、人財育成の強化に取り組んでいます。所属する職場でのスキル向上や、キャリアトラック内での昇進を目指すスキルアップなど、社内で専門的なキャリアを積むことのできるスキルアッププランに重点を置いています。例えば、エンジニアからシニア・エンジニアへのキャリアアップなどが、キャリアトラック内での昇進にあたります。この取り組みにより、優秀な人財の登用や社員の定着率向上、社員エンゲージメントの向上につながると期待しています。

同社では年に一度、社員自らが自身の目標やスキルアップ計画を作成する「パフォーマンスレビュー」を実施しています。また管理部門では、四半期ごとの進捗評価の指標を含む長期目標と短期目標を策定しています。

キャリアアップを目指す具体的な施策として毎月eラーニングを実施し、人財育成および安全に関する知識・スキルの向上を図っています。eラーニングは場所やデバイスに制約されることなくアクセスでき、自分のペースで受講を進めることができます。また対話性やゲーム性を取り入れることにより、学習意欲を高めることができます。次のキャリアステージに進む学習を通して、専門的なスキルアップを目指しています。

また、労務管理研修の一環として全部門の幹部社員を対象に、書類作成スキルやコミュニケーションスキル、論理的思考(ロジカルシンキング)など、チームリーダーに求められる「ソフトスキル」を身につける研修を実施しました。

若手人財の離職防止対策

南部化成(株)では、若手人財の離職防止対策として、以下の取り組みを行っています。

➀若手集合研修
入社2~3年目の新卒入社者および若手キャリア入社者を対象とした若手社員集合研修を実施しており、今年で3年目となります。
研修では、グループワークや経営層・先輩社員との対話などを行っています。グループワークでは、所属を超えた横のつながりや、コミュニケーションスキルの向上ができ、参加者からも「今後に活かせる経験となった」といった感想が寄せられています。また、モチベーションアップを目的に、経営層と昼食をともにし、直接対話することで経営層からの期待を感じてもらう機会を設けています。

➁メンター制度
新入社員を対象に、比較的年齢が近い社員をメンターとして個別に配置し、入社後1年間、毎月1回1時間を目安にメンタリングを実施する制度を運用しています。メンタリングは、普段の業務から少し離れられるように2人だけの場所を準備して、会話を楽しめるような内容を推奨しています。

若手社員集合研修
若手社員集合研修

若年者の短期間他部署業務研修

日清紡ケミカル(株)では、組織風土改革を推進しており、人財育成活動の一施策として、若年者向けに短期間の他部署業務研修(C研修)を実施しています。

希望者がC研修に応募することで、実際に他部署の業務を体験することができ、自部署と異なる知識や多様な視点を得ることで、参加者の成長を図っています。また、これまで交流のなかった社員とコミュニケーションが増えることで人脈形成の成果も出ています。
受け入れ側の部署としても、それまで気がつかなかった視点、例えば日常業務を明確化する必要性に気づくなど、意識変革にもつながっており、良い刺激となっています。

研修後は報告会の開催や関係者からのフィードバックを行っており、参加者や受け入れ側の部署からも、有意義な研修であると高い評価を得ています。今後も継続して体験者を増やすことで、社内全体の風土改革を図ります。

C研修参加者
C研修参加者

大学卒業資格取得支援

ブラジルのNisshinbo Do Brasil Industria Textil LTDA.では大学卒業資格の取得ができるEAD(educação à distância)の学費支援を行っています。

EADは主にeラーニングを利用した学習機関であり、所定のカリキュラムを受講した後、試験に合格することで大学卒業の資格を取得することができます。現在4名の従業員が自身の業務に合わせた学科、それぞれ経理、看護、環境、人事について受講しています。学科により受講期間は異なりますが、受講者は4~5年間、平日の夜間や休日にカリキュラムを進め、資格の取得を目指しています。資格を取得することにより、ブラジル日清紡に新たな意見や考え方を広めるだけでなく、将来は中核を担う人材になってもらえることを期待し支援を行っています。

EAD受講者
EAD受講者