日清紡グループは、「事業を通じて社会に貢献すること」を使命とし、これまでも人権を尊重した事業運営を行ってきました。2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択され、近年ますます人権の尊重が重要視されているなか、当社グループは改めて企業として人権を守る責任の重さを真摯に受け止め、グループの経営姿勢として人権尊重に対する想いを言葉で対外的に表明した「日清紡グループ人権方針」を2023年8月に策定しました。
本方針は、当社グループの事業活動における人権尊重への取組みに関するすべての文書・規範の上位方針として位置付けられています。
当社グループは、自社の従業員はもちろんのこと、お客さまや取引先の人びと、地域社会の人びとなど、関係するすべての人の人権を尊重・保護し、促進する主体となり、人権デューデリジェンスを通じて人権を尊重した経営を行います。今を生きる人びと、そして特にこれからを生きる子どもたちがそれぞれ幸せで豊かな人生を送ることができる「ウェルビーイング」な社会を実現するために尽力します。
※ 2025年3月28日付の代表取締役社長の交代にともない、日清紡グループ人権方針の署名も現社長名に変更しております。
2024年の取組み
人権方針の周知・理解の徹底
人権を尊重した事業活動の推進をめざし、その基盤となるグループ人権方針の周知と理解を徹底するため、社長自らが人権方針の重要性と人権尊重に対する想いを伝えるメッセージ動画をグループ全社に配信しています。新規入社者に対しても、入社時に本方針について周知するルールとし、実施の確認を毎年行っています。
今後は各社ホームページへのグループ人権方針の掲載などによる社外周知を進めるとともに、本方針の内容をふまえた各社の規則・規定の整備を推進していく予定です。
救済システムの整備
グループ全社におけるシステムの整備状況調査結果
【調査対象】国内外グループ会社78社
◆窓口設置状況

従業員を対象とする社内対応窓口

従業員を含むステークホルダーを対象とする社外対応窓口(※)

※自社窓口以外に日清紡ホールディングス(株)が運営する「企業倫理通報制度」を利用している会社を含みます。
◆相談受付・対応フローのマニュアルなどの整備状況


◆窓口の周知状況

従業員への窓口周知状況

社外への窓口周知状況

グループ内ほぼ全社で社内・社外対応窓口が設置されていることを確認しましたが、相談受付・対応フローのマニュアルなどの整備が不十分な会社に対しては、早急に整備のフォローを行います。
また、従業員への社内対応窓口の周知は実施されているものの、社外の方に対する窓口の周知が全体的に不十分であることから、各社ホームページへの掲載やサプライヤーへの文書展開などの対応を進めていきます。
サステナブル調達ガイドラインの制定
日清紡グループは、社会的ルール・企業倫理など広い範囲において常に公正で誠実に行動し、健全な取引関係を通じた対等なパートナーとしてサプライヤーのみなさまを尊重することをめざした「日清紡グループ サステナブル調達基本方針(2015年制定)」を、2024年度にグループ人権方針に則った内容で改定しました。あわせて「日清紡グループサステナブル調達ガイドライン」も制定しました。
ガイドラインの制定にあたっては、RBA行動規範、JEITAの「責任ある企業行動ガイドライン」を参考としました。
本方針ならびにガイドラインは、日清紡グループ国内各社を通じて周知され、サステナブル調達に関する取り組み状況を確認するためのアンケート調査の実施と結果のフィードバックも実施されています。
当社グループの基本方針とガイドラインをサプライヤーのみなさまにご理解いただきながら、今後も人権に配慮したサステナブル調達の取り組みを推進していきます。
責任ある鉱物調達体制の整備
社会の人権への意識の高まりから、児童労働や強制労働など重大な人権侵害につながる恐れのある紛争鉱物とされる3TG(錫、タンタル、タングステン、金)以外でも、規制の対象となる鉱物や地域が拡大することが予想されています。このため日清紡グループでは、「責任ある鉱物調達」を人権デューデリジェンスの重要課題とし、2024年度から取組みを開始しました。まずは鉱物調達に関わる情報の全社共有、鉱物調達担当者へのヒアリングを通じて、グループ内の鉱物調達体制の整備を進めています。
教育体制の整備と着実な実行
日清紡グループでは、実効的な人権デューデリジェンスの取組みを進めるためには「人権を尊重する企業の責任(「ビジネスと人権」)」についての本質的な理解が必要と考えています。2024年度は以下2つの研修を中心に、グループ内の教育を行いました。
【グループ人権研修】
毎年実施している「グループ人権研修」として、2024年度は「ビジネスと人権」の基礎を学ぶ「ビジネスと人権<基礎編>」をグループ全社に展開しました。なお本研修は、今後も新規入社者への教育として継続して実施します。
【人権トップ層研修】
毎年実施している経営層対象の研修として、SDGパートナーズ有限会社CEOの田瀬和夫氏による講演会を実施しました。「ビジネスと人権から考える、企業にとっての『勝ち筋』とは」と題し、近年企業経営にとって非常に重要なテーマである「ビジネスと人権」を企業の「勝ち筋」につなげるための考え方について、人権にまつわる国際的な動向、他社事例などもふまえて講演いただきました。
経営層だけでなく、各社の管理職層も含めて約400人が受講しました。
今後も人権を尊重した経営を推進するため、経営層の理解深耕につながるテーマで研修を実施します。
今後の計画
2025年以降は、以下を中心に人権デューデリジェンスの取組みをさらに進めていきます。
- 1.人権リスクの抽出と対応
- 2.救済システムのさらなる整備と強化
- 3.人権に関するガイドラインの制定
- 4.責任ある鉱物調達
- 5.人権尊重の理解促進教育の着実な実行