人権デューデリジェンス

日清紡グループは、「事業を通じて社会に貢献すること」を使命とし、これまでも人権を尊重した事業運営を行ってきました。2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択され、近年ますます重要視されているなか、当社グループは改めて企業として人権を守る責任の重さを真摯に受け止め、グループの経営姿勢として人権尊重に対する想いを言葉で対外的に表明した「日清紡グループ人権方針」を2023年8月に策定しました。
当社グループは、自社の従業員はもちろんのこと、お客さまや取引先の人びと、地域社会の人びとなど、関係するすべての人の人権を尊重・保護し、促進する主体となり、人権デューデリジェンスを通じて人権を尊重した経営を行います。今を生きる自分も含めた人びと、そして特にこれからを生きる子どもたちがそれぞれ幸せで豊かな人生を送ることができる「ウェルビーイング」な社会を実現するために尽力します。

2023年の取組み

人権方針の策定

日清紡グループは8月に「日清紡グループ人権方針」を策定しました。本方針は当社グループの事業活動における人権尊重への取組みに関するすべての文書・規範の上位方針として位置付け、取締役会での承認のもと、日清紡ホールディング(株)の社長が署名しています。
グループ全社に本方針の周知と理解を促すため、社長自らが人権方針の重要性と人権尊重に対する想いを伝えるメッセージ動画を制作し配信しました。

アンケート調査の実施

人権デューデリジェンスの取組みを開始するにあたり、グループ内各社の人権にかかわる制度面における整備状況など基本的対応の実態を把握するため、9月に「人権デューデリジェンスアンケート Basic2023」を実施しました。

【アンケート概要】

調査目的
  • 1.日清紡グループ各社における人権デューデリジェンス実施の基盤となる「制度面」(制度整備・運用、人権課題に関する啓発・適切な取組みなどの基本的対応)について現況を把握し、是正の取組みにつなげる。
  • 2.各社の取組み・対応などの「実態面」について、人権リスクにつながる可能性のある事項を洗い出し、今後の取組みを検討する。
    • ●対象:子会社81社
    • ●実施期間:2023年9月22日~10月26日
    • ●調査手法:アンケート(解説付きブックレット)
    • ●各社人権・総務・人事・サステナビリティ・CSR担当者の自己評価形式
    • ●実回答:回答率100%
調査項目(アンケートブックレットの掲載順)
  • 1.人権尊重に対する基本姿勢
  • 2.賃金の不足・未払、生活賃金
  • 3.過剰・不当な労働時間
  • 4.社会保障を受ける権利
  • 5.強制的な労働
  • 6.居住移転の自由
    (転勤の強制、地域住民の強制移転など)
  • 7.外国人労働者の権利
  • 8.障がい者の権利
  • 9.児童労働
  • 10.賄賂・腐敗
  • 11.パワーハラスメント/いじめ
  • 12.セクシャルハラスメント
  • 13.マタニティハラスメント
  • 14.介護ハラスメント(ケアハラスメント)
  • 15.ジェンダーに関する人権問題
  • 16.性的マイノリティ(SOGI)に関する人権問題
  • 17.プライバシーの権利
  • 18.地域住民(先住民等を含む)の権利
  • 19.救済へアクセスする権利
  • 20.紛争鉱物
  • 21.国際的枠組みへの理解

【制度面のサマリー】

  • 1.約70%のグループ会社が「日清紡グループ行動指針」「日清紡グループ人権方針」の導入・遵守、もしくは独自に人権関連の方針・ガイドラインを整備していることを確認しました。
  • 2.未整備である約30%の会社については、グループの方針が行き届いていないことが考えられるため、グループの「行動指針」および「人権方針」の周知を改めて行うなど、導入・遵守を促進する取組みの必要性を認識しました。
  • 3.救済窓口に関しては90%の会社で窓口が設置されているものの、社外のステークホルダーが利用できる窓口は30%未満でした。当社グループで設置している企業倫理通報窓口の利用を周知するとともに、企業倫理通報制度自体の強化を図る必要があることを把握しました。
    グループ会社の救済窓口整備状況
    グループ会社の救済窓口整備状況
  • 4.全社において、強制労働および児童労働となる事例は確認されませんでした。ただし強制労働・児童労働に関する制度の整備に関して不足のある会社もあるため、早急に制度整備100%となるよう対応を実施します。また、サプライチェーンに対する調査についてはまだ未実施の会社が多く、まずは強制労働・児童労働を防止するための指針をサプライヤーに周知する取組みを進めていきます。
  • 5.従業員の人権侵害につながる重大な人権リスクとなるハラスメントについて、パワーハラスメント・いじめ、セクシュアルハラスメントに関しては、約80%の会社でガイドラインや規定が整備されており、研修も実施されています。ただし取組みの実態には国・地域差が見られました。
    ハラスメント・いじめ、セクシュアルハラスメント防止のためのグループ各社における取組み状況
    ハラスメント・いじめ、セクシュアルハラスメント防止のためのグループ各社における取組み状況
  • 6.マタニティハラスメント、介護ハラスメント(ケアハラスメント)については国内各社も含め取組みがまだ不十分であるため、今後啓発活動を通じ理解深耕を促進する必要があります。
    マタニティハラスメント、介護ハラスメント防止のためのグループ各社における取組み状況
    マタニティハラスメント、介護ハラスメント防止のためのグループ各社における取組み状況

その他の結果

以下の項目で会社により制度・規則の整備が十分に行われていない、あるいは取組み状況に不足が見られました。確実な制度整備を進めるとともに、説明会や啓発活動を通じた理解深耕を図ります。
紛争鉱物、地域住民、ジェンダー、性的マイノリティ(SOGI)、障がい者、人権尊重・差別

【実態面のサマリー】

制度や規則が存在していても、運用や取組み状況に懸念がある項目、また各社責任者(アンケート回答者)でも把握できていない・認識が不足しているケースが見受けられました。

運用・取組み状況に懸念がある項目

児童労働、強制的な労働(サプライチェーン)、強制的な労働(社内)、紛争鉱物、過剰・不当な労働時間、賃金の不足・未払い、ジェンダー、外国人労働者の権利、障がい者の権利、性的マイノリティ(SOGI)、パワハラ・いじめ、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、介護ハラスメント、居住移転(社内)
グループ全体で改めての制度設計・整備と、啓発・教育活動をはじめとする着実な取組みを進めた上で、さらなる調査・ヒアリングを行いながら是正の取組みを検討していきます。

外部講師による研修会

日清紡グループでは、実効的な人権デューデリジェンスの取組みを進めるためには「人権を尊重する企業の責任(「ビジネスと人権」)」についての本質的な理解が必要と考え、外部講師による研修会を開催しました。講師は、SDGパートナーズ有限会社CEO 田瀬和夫様にお願いし、経営層向けのトップ層研修および各社担当者向けに人権尊重に関わるテーマで複数回にわたり研修を実施しました。田瀬様には、人権デューデリジェンスがウェルビーイング社会の実現につながる意義深い活動であることについてお話しいただき、受講者の理解が促進されました。

【研修会の主なテーマ】

  • ●ビジネスと人権/人権デューデリジェンス
  • ●サステナビリティ
  • ●ダイバーシティ&インクルージョン
  • ●人的資本

今後の計画

日清紡グループはアンケートの結果をふまえ、2024年度は以下の項目を中心に人権DDの取組みを進めています。

  • 1.人権関連制度の整備(グループ全社)
    • ●グループ人権方針の導入または独自方針の整備
  • 2.救済窓口の整備
    • ●救済窓口の設置(グループ全社)
    • ●企業倫理通報制度の強化
  • 3.サプライチェーンマネジメント
    • ●調達ガイドラインの改訂→サプライチェーンへの周知・アンケートの実施
    • ●責任ある鉱物調達体制の整備
  • 4.教育体制の整備と着実な実行(海外含む)
    • ●人権に関する研修の実施
  • 5.各社追加調査(ヒアリング)→是正計画の検討、適切な対応