ステークホルダーエンゲージメント・第三者意見

日清紡グループは、VALUEで定めるお客さま、株主、社員をはじめ当社グループを取り巻くステークホルダーの声に耳を傾け理解と信頼を得てこそ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の実現が可能になると考えます。さまざまな機会を捉えて、ステークホルダーとのコミュニケーションを深め、課題の解決に努めています。

ステークホルダーとのコミュニケーションに関する基本方針を「日清紡コーポレートガバナンス・ポリシー」Ⅲ-1-(1)に定めています。

ステークホルダーエンゲージメントの取り組み

ステークホルダーエンゲージメントの取り組み

第三者意見

ステークホルダーの期待とニーズに応え続けるために、社外有識者の方から、日清紡グループのサステナビリティの取り組みに対する評価や、当社グループへの期待・要請などについて、ご意見をいただきました。

下田屋 毅 サステイナビジョン代表取締役

日清紡グループのサステナビリティの取り組みに関して、日清紡グループサステナビリティサイトおよび関連報告書の記載事項をもとに、第三者としての意見を申し上げます。

なお、本意見は、2026年5月現在でご共有いただいた2026年版サステナビリティ関連開示資料をもとに作成しています。第6期サステナビリティ推進計画の実績値については速報値であること、また、社長メッセージ、担当役員メッセージおよび価値創造プロセスについては現在修正中または未確定であるため、本意見の対象には含めておりません。

日清紡グループは、2025年度より開始した「第6期サステナビリティ推進計画(2025年度~2027年度)」のもと、グループ理念である「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」の実践を通じて、環境・社会・ガバナンスの各領域における取り組みを着実に進められています。前期の取り組みを踏まえ、KPIの引き上げや社会分野における目標の拡充など、より実効性を意識した計画へと発展している点が確認できます。

環境面では、温室効果ガス排出量削減において、Scope1+2の排出量が2014年度比56%削減となり、既に2027年度目標に到達していることは高く評価されます。(株)国際電気 東京事業所における使用電力の再生可能エネルギー由来電力への100%切り替えや、複数拠点での再生可能エネルギー由来電力購入量の増加など、脱炭素化に向けた具体的な成果も見られます。また、再生可能エネルギー由来電力の使用割合は、2024年度の16%から2025年度は約19%へ上昇しており、昨年度に課題として見られた再生可能エネルギー活用の面でも改善が進んでいると考えられます。加えて、売上当たりの水使用量、エネルギー使用量、PRTR対象物質排出量など、複数の環境分野の目標・KPIにおいても2027年度目標水準への到達が報告されており、継続的な環境負荷低減の取り組みが着実に成果を上げています。

一方で、Scope3排出量については、2025年度実績が前年度比で増加しており、海外拠点における集計精度向上が主な要因とされています。算定精度の向上は重要な進展ですが、今後はバリューチェーン全体での実質的な削減策の強化と、その進捗の透明性ある開示が期待されます。また、「持続可能な社会に貢献する製品」やLCAの推進については改善傾向が見られるものの、目標達成に向けて、対象製品の定義や評価基準、事業別の貢献内容をより分かりやすく示すことが望まれます。

社会面では、人権デュー・ディリジェンスの取り組みが新たな段階に進んでいます。2025年度は、苦情処理メカニズムの整備・強化に焦点を当て、国内外グループ会社を対象に調査を実施し、現状の課題を可視化しています。特に、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」原則31が示す実効性のある苦情処理メカニズムの要件や、CHRB(Corporate Human Rights Benchmark)の評価基準を参照しながら調査を実施している点は、国際的な基準に沿って取り組みを高度化しようとする姿勢として評価できます。多言語対応、社外ステークホルダーへの周知、対応プロセスの公開、報復禁止規定の明文化など、改善すべき点を率直に整理していることは、今後の実効性向上に向けた重要な一歩と評価できます。

人的資本の領域では、女性管理職比率、キャリア入社管理職比率、後継者候補準備率などの定量的な進捗が示され、多様な人財の活躍推進に向けた取り組みが進展しています。また、男性社員の育児休業取得率100%、定期健康診断後の精密検査受診率の向上、ハイリスク者への保健指導の実施など、働き方改革や健康経営に関する取り組みも具体的な成果を伴って進められています。一方で、社員エンゲージメントについては、国内外81社、19,830名が参加し、回答率約92.3%という高い参加状況となったことは評価できますが、企業理念・VALUE・行動指針の実践に関する肯定率が低下している点は注視が必要です。調査方法の変更による影響にも留意しつつ、事業再構築が進む中で、社員一人ひとりが企業理念を日常業務と結びつけ、自分ごととして実践できるよう、対話型の浸透活動や現場起点の改善活動を継続することが重要です。

サプライチェーンについては、サステナブル調達基本方針およびサステナブル調達ガイドラインに基づき、国内外のサプライヤーを対象に統一基準でアンケートを実施し、全体で95%という高い回答率を得たことは大きな前進です。これは、サステナブル調達の取り組みを国内にとどめず、海外拠点やグローバルなサプライチェーンへ広げていく上で重要な基盤になると考えます。今後は、アンケートの実施に加え、リスクの高い分野・地域・原材料に焦点を当てた深掘り評価、改善要請、是正支援、進捗確認の仕組みを強化することで、サプライチェーン全体へのサステナビリティの波及がさらに実効性を持つものになると考えます。

ガバナンス面では、コンプライアンス教育や企業倫理通報制度の運用、リスクマネジメント、情報セキュリティ、災害リスク対応、内部統制などについて、組織再編を踏まえた推進体制の更新が行われており、サステナビリティ課題を経営管理に組み込む姿勢が示されています。今後は、経営会議・取締役会への報告内容と、サステナビリティ推進計画における目標・KPIとの連動をより明確にすることで、監督機能と実行機能のつながりをさらに分かりやすく示すことが期待されます。

全体として、日清紡グループは2025年度において、第6期サステナビリティ推進計画の初年度として、環境負荷低減、人権尊重、人的資本、サプライチェーン、コンプライアンスの各領域で着実な進展を示しています。今後は、既に目標を達成した項目についてさらなる高みを目指すとともに、Scope3削減、サステナブルプロダクトの拡大、LCAの高度化、人権救済メカニズムの実効性向上、社員エンゲージメントの改善、サプライチェーン上のリスク対応について、より具体的な施策と成果の開示が進むことを期待いたします。これらの取り組みを通じて、日清紡グループが、事業を通じて地球と人びとの未来を創る企業グループとして、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをさらに進化させていくことを期待いたします。

下田屋 毅

サステイナビジョン 代表取締役 
下田屋 毅

1991年、川崎重工業株式会社に入社。環境関連機械を扱う事業部の工場管理部にて、人事・総務・採用・教育・給与・労使交渉・労働安全衛生等を担当。環境ビジネス(新エネルギー・R.P.F.製造)に関する新規事業会社の立ち上げに携わった後、2007年に渡英。英国イースト・アングリア大学にて環境科学修士、英国ランカスター大学にてMBAを修了。2010年、日本と欧州とのサステナビリティの架け橋となるべく、英国にSustainavision Ltd.を設立。

ロンドンを拠点に、日本企業に対してサステナビリティ経営、ESG、ビジネスと人権、サプライチェーンマネジメント等に関するコンサルティング、研修・セミナー、関連リサーチを実施している。また、英国CMI認定サステナビリティ(CSR/ESG)プラクティショナー資格講習を2012年から定期開催し、サステナビリティを企業経営に統合するための実践的な学びの場を提供することで、日本におけるサステナビリティ人財の育成に取り組んできた。現在は、業界ごとのサステナビリティ推進状況の違いを踏まえ、特に取り組みの加速が求められる業界への支援にも注力している。さらに、欧州を拠点とする企業との人権デュー・ディリジェンスに関するプロジェクトや、サプライチェーンマネジメント・プラットフォームの活動支援にも携わっている。

一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン創始者
一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事Global Sustainable Tourism Council(GSTC)Food & Beverage Advisory Board Member
農林水産省フードテック官民協議会 サステナブルレストラン推進ワーキングチーム座長

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