基本的な考え方
日清紡グループは多様な事業を展開しており、各社各様の人事戦略を実行していますが、グループ共通の目指す姿として、長期人事戦略「Long-Term Vision」を策定しました。日清紡グループ従業員が2030年に目指す姿として、「全ての従業員が変化を楽しみ、高い目標に果敢に挑む」を掲げています。そのマインドと行動が“「挑戦と変革」の実践による継続的な価値”を生み、事業戦略の実現と利益創出、更には事業活動を通じた社会貢献(地球と人びとの未来を創る)につながると考えています。私たちはこれらを実現するため、5つのカテゴリーで取り組みを進めています。
(1) エンパワーメント:
各社各様の人事戦略・人財ポートフォリオを策定し、また、ワークエンゲージメントの向上を図りながら組織から必要とされる人財を育成します。従業員に求めるマインド・行動としては自律成長をキーワードとしています。
(2) インクルージョン:
価値創造のため多様な価値観の融合を図り、また、理念・方針共感度を向上させ組織エンゲージメントを高めることで、多様な人財の活躍を促進する組織・文化をつくります。
(3) サポート:
効果的なタレントマッチングや多様なワークスタイルへの対応等の取り組みを通じ、多様な人財の活躍を支えます。
(4) システム(人事制度):
変化を楽しみ、高い目標に果敢に挑む行動を促すメリハリのある人事制度を整備します。
(5) HRファンクション&データ(人事体制・人事データ):
HRBP機能の強化ならびに人事データの戦略的活用を進めます。
事業の盛衰は人財によって決まります。グループの持続的な成長に向け人財価値を最大化するための施策に果敢に取り組んでいきます。
推進体制
日清紡ホールディングス(株)は、2025年4月に、スピード感をもって変革をリードし統括する体制の構築を目的として、各機能別組織に担当執行役員を置く組織再編を行いました。人財・D&I推進室を設置し、配下に3つのグループ(人財開発グループ、D&I推進グループ、人事総務グループ)を配置しました。毎月の人事責任者会議(HRO会議)に加え、年2回、全国内グループ会社の人事担当者の集う会議(グループ人事方針会議、グループ人事戦略会議)を開催し、横断的に人事関連の方針・課題について討議しています。
当社グループの最高責任者である当社社長は、毎年経営戦略会議※ においてマネジメントレビューを実施し、人財・D&I推進室担当執行役員による当社グループの取り組みと進捗などの状況報告を受けて、経営上必要な実施事項を指示しています。特記事項などについては適時取締役会に報告されています。
※ 経営戦略会議:取締役および監査役・執行役員により構成される業務執行会議
当社のサステナビリティを推進する組織体制の概要については、「サステナビリティ推進体制」をご覧ください。
日清紡グループの具体的な取り組み
第5期サステナビリティ推進計画(達成年度2024年度)
2024年度を達成年度とする「第5期サステナビリティ推進計画」では、人財獲得・育成を重点活動項目とし、「事業推進に必要な経営幹部候補の育成」と「人員年齢構成是正のためのキャリア採用強化」を推進するために、以下2項目を目標・KPI※ に定めて活動しました。
※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
- ①経営幹部ポスト(執行役員以上)に占める後継者プログラム受講者率を上げる
- ②人員年齢構成是正のためのキャリア採用強化
PDCAを回しながら人財の採用・定着や、人財の育成などの活動を進めた結果、全中核会社の2024年12月末の状況は、①後継者プログラム受講者率52.0%、②キャリア採用者比率44.3%でした。
第6期サステナビリティ推進計画(達成年度2027年度)
2027年度を達成年度とする「第6期サステナビリティ推進計画」では、人財獲得・育成を重点活動項目とし、事業推進に必要な経営幹部候補の育成に取り組むため、以下の目標を掲げています。
各事業会社取締役相当ポジションごとの後継者候補準備率100%
サステナビリティ推進計画の概要については「サステナビリティ推進計画とKPI」をご覧ください。
人財の採用、定着、活躍支援
より多様なバックグランドを持つ人財集団の形成のため、また人員年齢構成是正のため、新卒に加えてキャリア採用を強化しています。多様性の確保のため特に女性、外国人については積極的に求人しています。また、優秀な人財の獲得および活躍促進のため以下の取り組みを行っています。
- ①採用競争力のある給与水準の維持
- ②職務内容を明確にする役割等級制度
- ③勤務年数にかかわらず早期昇格を可能とする人事制度
- ④さまざまな働き方や職業観に対応する複線型人事制度
- ⑤テレワーク制度やサテライトオフィスなど働く環境の整備
- ⑥キャリア採用者受入れ教育の充実とフォロー
- ⑦社員の知人などを紹介する社員紹介制度(リファラル制度)
- ⑧自己都合退職者に対しての再入社制度(リジョイン制度)
- ⑨勤続5年ごとに休暇と手当を支給する制度(ディスカバリー休暇制度)
今後は、高度専門職や職種限定職向けの処遇の検討、勤務場所・時間の自由度を高める施策などを企画していきます。
また、若年者の離職防止対策については、オンボーディングの考え方で、内定段階からラーニングマネジメントシステムの開放を行ったり、人事担当者との面談などを設けているほか、入社後については1年目の社員を対象にメンター制度を設けたり、適宜人事担当者によるフォロー面談、アンケートを実施し早期に変化点を察知し適宜対応するなど、会社生活にスムーズに馴染めるようサポートしています。そのほか、入社初年度、入社2年目、3年目にはフォローアップ集合研修を実施し、新入社員研修のフォローアップやキャリア研修を行い、定着を図っています。
社員の離職を防止するための施策として以下を行っています。
キャリアサポート
自律成長する人財を増やし、従業員一人ひとりの強みや専門性を最大限に発揮できる仕組みを整え、組織と個人とが相互に高め合うことで人財価値を最大化させるために、以下を行っています。
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①上司によるキャリア形成サポート
上司による人事評価面談に加えてキャリアシートによる定期的な面談を実施し、キャリア形成のサポートを行っています。 -
②効果的なタレントマッチング
多様な価値観・職業観を持つ、より多くの社員が能力開発や新しい事業に自ら挑戦する機会を増やし、また入社・配属後のミスマッチを解消するため社内公募制度(ニューチャレンジシステム)をグループ横断で運用しています。 -
③自己理解&マインド醸成
環境変化がキャリアに及ぼす影響を知り、将来の新たな働き方や学び直しを考えることを目的とした研修の実施、ならびにラーニングマネジメントシステムをはじめとした従業員のスキルアップを支援するシステムや自己啓発支援制度を用意しています。
人財の育成
日清紡グループ対象者別研修受講モデル

デジタル人財育成
2021年に導入したラーニングマネジメントシステムでは、標準コンテンツとしてデジタル関連の講座を準備し、自由に学習できるようにしています。2023年には、デジタル関連のeラーニング講座を従来の5講座から21講座に拡充しました。
また、2020年より新入社員研修に「デジタル基礎研修」を導入し、最新のトレンドを理解するためのデジタル関連の基礎知識を学習しています。2023年には同内容をブラッシュアップし、「デジタルリテラシー研修」として体系化しました。社内のデジタル関連の好事例を共有し、職場を超えてデジタル技術を用いた業務改善案・新しいデジタルビジネスのアイデアなどを議論する場を設けています。
さらに、各職場の問題解決にデジタル技術を活用できる人財の育成を目的とした研修を2023年より始めており、2024年度は「カイゼンのためのデジタル技術活用研修」を実施しました。
これらにより、様々な課題解決アプローチ法、およびテクノロジー活用に必要な思考法を学んでいます。
事業推進に必要な経営幹部候補の育成
選抜型リーダーシップ開発プログラムの実施
目指す人物像を、顧客価値創造をリードする「共創型リーダー」に設定し、選抜型リーダーシップ開発プログラムを実施しています。
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①アドバンス(執行役員級)、エグゼクティブ(部長級)プログラム
アドバンス(執行役員級)では、経営知識・マインド・役割行動を習得する選抜経営学講座・実践実学講座等を実施しています。
エグゼクティブ(部長級)では、経営学講座・実践実学講座に加え、技術知識と経営能力を兼ね備えた経営人財を育成するために技術経営大学院(MOT)や事業創出力・突破力を習得する実践型ワークショップを実施しています。
これらは、グループ共通のグローバルジョブグレードによる主要ポストの後継者候補リストを毎年作成するとともに、グレード及び後継者候補リストとプログラム受講を関連づけて実施しています。 -
②ミドル(課長級)、ベーシック(次世代リーダー層)プログラム
これらの下の層では各社推薦でミドル、ベーシックのプログラムも実施しています。ミドル(課長級)では、マネジメントプログラム、財務リーダーシッププログラム、マーケティングを社外派遣で実施、社内では事業力強化ワークショップを実施しています。そしてベーシック(次世代リーダー層)では、リーダーシッププログラムを実施しています。
人財のグローバル化
「人財のグローバル化」を進めるため、海外赴任者対象の異文化理解の研修、海外派遣者対象の語学学校での研修、グループ会社共催で英語・ビジネス日本語の研修などを実施してきました。加えて、35歳未満の社員が対象の海外経験促進策や、TOEIC・CASEC検定試験受験料・交通費補助制度、オンライン英会話受講費用半額補助制度、語学系通信教育・eラーニング受講費用補助制度などを運用しグローバルに通用する人財の育成を進めています。
グループ会社における活動事例
社員の知見を広げる取り組み〜大学主催のDX・GX講座に参加〜
(株)五洋電子では、国立大学法人秋田大学リカレント教育センターがリカレント教育※ 事業として主催・開講した大学講座に参加しました。
2024年10月~11月に開講された講座に、同社からはDX ・GX関連部門から計15名が参加しました。講座では、DX(デジタル・トランスフォーメーション。デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革。)とGX(グリーン・トランスフォーメーション。化石燃料に代わるクリーンなエネルギーを活用していくための変革。)をテーマに、各分野における最新トピックや、地方における課題の解決に向けてDX・GXをどのように利活用していくかを学びました。参加者からは「最新技術の特性や課題、環境負荷低減のために求められていることを知ることができた」「最新技術の利活用に当たって必要なリテラシーを学ぶことができた」などの感想が寄せられ、今後のDX・GX推進に向け、新たな知見を得ることができました。今後も積極的に大学や自治体と協働し、継続的な教育機会の提供を行うとともに、地域活性化に向けた取り組みに参加していきます。
※ リカレント教育:社会人が学び直しにより仕事で求められる能力を磨き続けていくこと
デジタル化の推進活動
日清紡メカトロニクス(株)では、デジタル化推進活動の一環として、品質保証部デジタル推進課が中心となり、4カ月に一度、活動事例発表会を開催しています。
発表会には日清紡グループ各社も参加しており、現在は6社以上、70名以上が参加する規模となっています。デジタル化により自動化された実例などを紹介し、情報を共有することで、各社のデジタル化推進を促す機会となっています。
また、デジタル人材の育成にも注力し、外部機関による6カ月間の「デジタル人材育成プログラム」に、計8名/年を派遣しています。本プログラムを通じて、日常業務のデジタル化を進めるとともに、デジタル人材の育成に取り組んでいます。
本プログラムへの参加に際しては、本人の意欲や自主性を重んじ人選しており、受講後の職場におけるDXの推進役となることを期待しています。
自律的なキャリア形成に向けたサポート
日清紡マイクロデバイス(株)では、一人ひとりの従業員が自らのキャリアを定期的に振り返り、働きがいにつなげるために、30代、50代の社員を日清紡ホールディングス(株)主催のキャリア研修に派遣しています。また20代の社員に対して、新入社員研修並びに大卒入社3年目研修においてキャリア研修を実施しています。
さらに、新入社員の自律(早期育成・戦力化)の仕組みとして「ペアリーダー制」があります。1年間、身近な先輩となる「ペアリーダー」を任命し、OJTを通じて1対1で新入社員の育成を図ります。新入社員は目標を設定し、ペアリーダーの支援を受けて相談しながら仕事を進め、振り返りを通じて自らの成長を図っています。
その他、自己啓発援助制度(上限20万円/年、半額会社負担)があります。リスキリングに対応し、自ら成長したいという意欲を持つ従業員を会社として積極的に支援するため、2023年に援助金額の上限を引き上げました。自らのスキルを伸ばすため、資格取得や大学院への通学、各種研修受講に活用されています。

人財育成と安全対策教育
アメリカのNisshinbo Automotive Manufacturing Inc. では、人財育成と安全対策の一環として、毎月eラーニングを実施しています。
また人事部では、労務管理研修と、チームを率いるために必要な必須スキルを習得するための研修を、全部署の全リーダー層社員に実施しました。論理的思考力やコミュニケーションスキルなど、論理と能力を向上させることを目的とした重点分野の研修を行いました。
さらに日常の仕事を円滑に進めていくために、アンガーマネジメントや、社員同士の信頼の築き方、社員への適切な対応方法などについても研修を実施しました。
安全については、機械や原材料の危険性、作業方法、健康リスクに関する教育、ヒヤリハット提出の奨励、危険予知(KYT)教育、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)などを通じて、従業員の安全意識を高める取り組みをしています。
若手人財の離職防止対策
南部化成(株)では、若手人財の離職防止対策として、2022年より若手社員集合研修を行っています。コミュニケーションスキルについて学び、若手社員の仕事上の価値観を経営層に共有しています。
研修の参加者からは「コミュニケーション取り方について参考になった」、「自身の価値観が明確になった」「同世代や経営層と話す貴重な経験になった」といった感想が寄せられています。
2024年からは上記研修に加え、人事労務課社員による定期人事面談を行っています。対象者は、新卒2年目および5年目の社員、採用時25歳以下のキャリア採用社員です。
現在の業務内容・キャリアシートの内容・体調の変化・困りごと・会社に対する要望などをヒアリングして、若手社員の悩みを早期に把握し、配属部署にフィードバックしています。本人からの異動希望については、可能な限り希望に沿うようにするために、人事異動の参考にしています。
在中国日清紡グループ集合研修の実施
日清紡企業管理(上海)有限公司は、在中国日清紡グループ各社の人財の育成の為に、集合研修ならびにeラーニングを毎年企画実施しています。
2024年度の集合研修は、上期に5件開催しました。管理職層向けに、業務遂行能力と戦略的能力向上を目的とした「マネジメント実践力強化研修」と「企業コストノウハウ研修」を実施しました。
また管理職層以下を対象として、「ロジックシンキング」や「プレゼンテーション力」といった分野の研修を実施しました。さらには、グループの一体感醸成のため、企業理念の解説や当社グループの歴史や商品、今後の目指す姿についても紹介しています。
一方eラーニングは、初歩的なExcelやWordのスキル向上から、「データ分析スキル」や「EHS(環境、健康、安全)」といったさまざまな分野を網羅しました。2023年度から開始した「英語力強化」を目的とした複数のコースも継続しました。
2025年度以降も、研修効果のみならず、グループの取り組むべき課題や方向性も紹介できるように活動していきます。
