サステナビリティ担当執行役員メッセージ

担当執行役メッセージ

「環境・エネルギー分野の貢献」、
「安心・安全な社会づくり」を融合テーマに、
グループ一体となってイノベーション創出に
取り組みます。

「環境・エネルギー分野の貢献」、「安心・安全な社会づくり」を融合テーマに、グループ一体となってイノベーション創出に取り組みます。

地球環境や社会との共生を社員とともに進めるため、バックキャストで見直したサステナビリティ推進計画

日清紡績株式会社は1907年に設立され、2009年、持株会社制に移行し社名を「日清紡ホールディングス株式会社」に変更しました。移行に際しCSRに関する専門組織を立ち上げ、2015年にはマテリアリティ(重要課題)を「環境・エネルギー分野の貢献」、「安心・安全な社会づくり」、「グローバル・コンプライアンス」の3つの軸に定めました。
3つのマテリアリティは、社会的規範やCSR評価機関の調査項目などを参考に社会課題を整理しつつ、当社グループの事業との関連性やリスクおよび事業機会を評価し、優先順位付けを行ない策定しました。例えば「環境分野」に対する貢献において、昨今の気候変動は水害を引き起こしますが、河川やダム管理に私たちグループの防災無線システムが役立ちます。また「安心・安全な社会をつくる」領域においては、大変革が進む自動車を含むモビリティ全般に対するブレーキや電子デバイスの提供により、未来に向けても貢献できると考えます。この考えに基づき、今まさに、「モビリティ」「インフラストラクチャー&セーフティー」「ライフ&ヘルスケア」に関わる3つの戦略的事業領域に横串をさし、従来は事業会社ごとに進めていた活動を「環境・エネルギー分野の貢献」、「安心・安全な社会づくり」という融合テーマの下で、ワンチームとなって進めています。
2022年度には、この動きをグループ全体で加速させ、社会とともに持続可能な成長を図る「サステナビリティ経営」に資するよう機構改革によりサステナビリティ推進室を新設しました。同時に、2030年からのバックキャストの視点で、2024年までの「第5期サステナビリティ推進計画」を期中で検証し、取り組み内容やKPIもすべて見直し推進しています。

燃料電池用カーボンセパレータの増産により、「持続可能な社会に貢献する製品」の拡販率60%達成を目指す

サステナビリティ推進計画の2022年度の進捗状況についてお話しします。
環境分野に関しては、6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、気候変動関連の事業機会の取り込みとリスクの低減を目指しています。2021年度にはリスク・機会のインパクトが大きいと想定される無線・通信事業におけるソリューション事業、ブレーキ事業、化学品事業を対象に、2022年度は無線・通信事業におけるマリン/ICT・メカトロニクス/モビリティ事業、マイクロデバイス事業、精密機器事業、繊維事業を対象に気候変動シナリオ分析を実施しました。2021年度・2022年度の活動完了により売上の9割をカバーしたことになります。現在、気候関連リスクを低減するため、2050年までのカーボンニュートラルを目指し、省エネルギー活動や購入電力のグリーン電力への切り替え、設備投資を伴うPFC(パーフルオロカーボン)※1 等ガス除害装置増設、太陽光発電増設などの対応を全グループで積極的に推進しています。具体例を挙げると、二酸化炭素排出量の大きい繊維事業では、インドネシアの生産工場の電力を地熱発電由来グリーン電力の購買に切り替えることにより、グループ全体で前年度比約23%の排出量削減につながりました。
また、「持続可能な社会に貢献する製品」の拡販も重点活動項目としており、2024年度には売上に占める割合を60%以上とすることを環境目標として目指しています。該当製品は日清紡ホールディングス(株)での登録制であり、2022年度は55%にまで達しました。内訳は、ブレーキ事業における銅・アンチモン規制※2 に対応した摩擦材等18%、マイクロデバイス事業の半導体製品(電化製品の省エネルギー化、チップサイズ小型化に貢献)が11%、無線・通信事業の防災・減災関連製品8%、その他18%となっています。2024年末に稼働する新工場(千葉市緑区)で、自動車向けを含む燃料電池用カーボンセパレータを増産することにより、拡販率60%の達成は確実と考えています。

イノベーションの加速化を目指し、多様な人がまじり合える制度を整備し企業風土を変革

こうしたイノベーションを切り拓くのは人財です。今グループ内には、歴史も背景も文化も異なり、各事業領域で実力のある多様な会社が集っています。国内外で2万人以上もいる、さまざまなバックグラウンドを持った社員一人ひとりが同じ方向を向いて日清紡グループで存分に力を発揮できるよう、2020年に「グループ人事戦略」を策定しました。将来の事業発展を見据え、新卒に限らず広く多様な人財を集め、適材適所に配置して育成しています。また熱意と創造性を引き出すためのエンゲージメントを重視しながら、健康経営にも配慮し、能力のある人が適正に処遇される環境を整備していきます。具体的には、連結子会社を含む当社グループ100社のうち人数規模の大きい国内18社について、各社の企業文化を尊重しつつ、日本的ジョブ型である役割等級制度に移行させました。これには国内従業員の約70%が該当します(2022年度末現在)。タレントマネジメントの仕組みも統一し、人財活用に向けてレベルアップを図っています。さらにラーニングマネジメントシステムを導入し、2022年度末には国内従業員の92%が受講できるようになりました。人事関連の諸制度・施策を同一にすることで、グループ会社間の異動が非常に進めやすくなりましたので、今後、多様な人達が融合テーマのもとでクロスボーダー化を進めれば、イノベーションが次々と起こる風土へと一層前進すると確信しています。
また、イノベーションには多様な背景を持った人や女性の参画が不可欠です。当社グループは、2030年には同時点の従業員比率と同等の女性管理職比率を目指しており、2030年に日清紡ホールディングス(株)において23.5%を目標にしています。しかし、現状では8.5%にとどまっています。事務系採用では半数以上を女性にしており大変優秀な方が入社されるものの、今のところ管理職比率が低い状況です。女性が持てる力を発揮できない理由や障害をさらに明確にし、女性も男性も活躍できる職場環境の整備を第一歩にして進めています。
加えて、サプライチェーンを含めたすべての段階における人権デューデリジェンスの徹底はサステナビリティ経営を進めるうえで非常に重要な前提であると認識し、2023年中に人権デューデリジェンスの体制を確立・整備します。当社グループは以前から「企業倫理通報制度」の整備やさまざまな人権やコンプライアンスに関連した研修も進めてきていますが、グローバルレベルを目指したさらなるブラッシュアップに取り組みます。

ステークホルダーの期待に応える「環境・エネルギーカンパニー」グループとしてサステナビリティ経営を続ける

最後に、従業員とのエンゲージメントの状況を測る「グローバルサーベイ」についてお話しします。直近では2022年に実施し、国内外合計で1.6万人が回答、対象となった会社では平均で96%という高回答率でした。全体には健康的な状態にあるという結果であり、幅広い階層からの約4,500件にのぼる自由記述回答の全てをトップマネジメント層が目を通しています。「先進的な活動に取り組み、誇りを持って業務を推進」「『環境・エネルギーカンパニー』グループとしての活動に期待」といった前向きな意見があり、勇気づけられています。

当社グループは常に事業ポートフォリオの変革を進め発展を遂げてきましたが、これからも社員をはじめとするステークホルダーの皆さまの期待に応える「環境・エネルギーカンパニー」グループとして、地球環境の保護に資する企業活動を進め、無駄のない社会を実現するためのソリューションの提供を揺るぎなく進めていきます。
これからも一層のご支援・ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

日清紡ホールディングス株式会社
常務執行役員
(経営戦略センター サステナビリティ推進室管掌)

杉山 誠

※1 PFC(パーフルオロカーボン)︓半導体製造工程におけるドライエッチング等で使用されるフッ素系温室効果ガス

※2 銅・アンチモン規制︓環境中へ放出されると有害性が高いとされる銅・アンチモンの使用などを制限する国内外法規制