基本的な考え方
日清紡グループは、「行動指針」に環境負荷への認識と配慮を掲げ、資源循環の質の向上を視野に、節水・リサイクルなどの推進に取り組み、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。
【主な対策】
- ①ISO14001の活動を通じ、節水活動を推進
- ②製造拠点での節水タイプの設備導入、水使用量の削減、排水処理水の再利用などの活動拡大
- ③水事情の異なる海外事業所における、雨水の利用や水の循環保全(地下水への戻し)など、持続可能な取水への取り組み
- ④繊維事業における、取水した井戸水を浄化し、その一部を近隣住民に無料で送水する活動
- ⑤化学品事業における、水処理用微生物担体の提供による、国内外の排水処理分野への貢献
推進体制については、「環境マネジメント」の「推進体制」の記載をご参照ください。
日清紡グループの具体的な取り組み
第5期3カ年環境目標
日清紡グループでは、2024年度を達成年度とする「第5期3カ年環境目標(第5期サステナビリティ推進計画)」では、環境経営の推進を重点活動項目とし、「売上当たりの水使用量の削減」を推進するために、以下の目標・KPI※ を定めました。
※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
「売上当たりの水使用量の削減」 2014年度比 65%以上削減
PDCAを回しながら削減量を管理して計画的に対策を進めた結果、当社グループの2024年度の状況は、2014年度比78%削減となりました。連結子会社であったTMDグループの譲渡やマイクロデバイス事業および繊維事業での減産が主な要因です。
第6期3カ年環境目標
2027年度を達成年度とする「第6期3カ年環境目標(第6期サステナビリティ推進計画)」では、中期環境目標の達成に向けたマイルストーンとして、取り組みは第5期の取り組みを踏襲し、KPI値の引き上げをおこないました。
「売上当たりの水使用量の削減」 2014年度比 77%以上削減
「3カ年環境目標」の概要については「環境マネジメント」をご覧ください。
「サステナビリティ推進計画」の概要については「サステナビリティ推進計画とKPI」をご覧ください。
水使用量
日清紡グループの水使用量2024年度実績は、5,753 千m3と前年度比8%減少しました。売上当たりの水使用量は11.6 m3/百万円となり、前年度比1%減少しました。連結子会社であったTMDグループの譲渡により、当社グループの水使用量は大幅に減少しました。
水のリサイクル量2024年度実績は、848 千m3となり、前年度比1%増加しました。
水使用量と売上当たり水使用量

※1 当社は2023年11月30日に、連結子会社であったTMDグループを譲渡したことにより、連結の範囲から除外しています。このためTMDグループは2023年11月度までのデータを集計対象としています。
※2 当社は2023年12月27日に、国際電気グループを連結の範囲に含め、2024年度からデータ集計の対象としています。
※3 当社は2024年11月28日に、無線・通信事業における子会社としてARGONICS GmbHおよびARGONAV GmbHを連結の範囲に含めましたが、2024年度データ集計の対象外としています。
水リサイクル量の推移

※1 当社は2023年11月30日に、連結子会社であったTMDグループを譲渡したことにより、連結の範囲から除外しています。このためTMDグループは2023年11月度までのデータを集計対象としています。
※2 当社は2023年12月27日に、国際電気グループを連結の範囲に含め、2024年度からデータ集計の対象としています。
※3 当社は2024年11月28日に、無線・通信事業における子会社としてARGONICS GmbHおよびARGONAV GmbHを連結の範囲に含めましたが、2024年度データ集計の対象外としています。
事業別水使用量の推移

※1 当社は2023年11月30日に、連結子会社であったTMDグループを譲渡したことにより、連結の範囲から除外しています。このためTMDグループは2023年11月度までのデータを集計対象としています。
※2 当社は2023年12月27日に、国際電気グループを連結の範囲に含め、2024年度からデータ集計の対象としています。
※3 当社は2024年11月28日に、無線・通信事業における子会社としてARGONICS GmbHおよびARGONAV GmbHを連結の範囲に含めましたが、2024年度データ集計の対象外としています。
水リスクの把握と監視
日清紡グループでは、世界資源研究所(WRI)が発表しているAQUEDUCT水リスク地図※ を活用して、当社グループの全事業所および主要なサプライチェーンの水リスク評価を実施しています。
AQUEDUCTによる評価により、当社グループ全事業所のうち6拠点(インドのNisshinbo Mechatronics India Private Limited、NISSHINBO COMPREHENSIVE PRECISION MACHINING (GURGAON) PRIVATE LIMITED、中国の賽龍 (煙台) 汽車部件有限公司、インドネシアのPT. Nikawa Textile Industry、PT. Nisshinbo Indonesia、PT. Naigai Shirts Indonesia)が「非常にリスクが高い」地域に該当しています。いずれの事業所も、現在の水使用量を考慮すると事業活動に大きな影響を及ぼす可能性は高くないと捉えています。
また、主要サプライチェーンでは11拠点(繊維事業のサプライヤーさまである在インドネシア企業、在カンボジア企業、在中国企業、およびブレーキ事業のサプライヤーさまである在中国企業など)が「非常にリスクが高い」地域に該当しています。当社グループでは、「非常にリスクが高い」と評価された事業所およびサプライチェーンについて、状況の監視を継続しています。
また、気候変動シナリオ分析においても2050年時点での洪水によるリスク評価を行っています。想定される洪水による物的損傷や休業損失の発生に対し、リスク低減の対応策を進めていきます。
さらには、TNFDにおける自然関連リスク分析においても、水リスクについて、日清紡グループの直接操業、バリューチェーン上流における企業活動が、特定された重要課題に関してセンシティブな場所に位置しているかを評価しました。
※ AQUEDUCT水リスク地図:12種類の水リスク指標を基に作成された地図で、水リスク指標には「物理的な水ストレス」、「水の質」、「水資源に関する法規制リスク」、「レピュテーションリスク(風評リスク)」などが含まれている

CDP水2024評価
日清紡グループは、CDPを通じて環境情報を開示しています。2024年は水質問書に回答し、「B」評価(マネジメントレベル)を取得しました。当社グループは今後も気候変動対策に積極的に取り組み、環境活動における透明性と情報公開の強化を進めていきます。
CDPは毎年、企業を評価するために公平な方法を用いて開示の包括性、環境リスクの認識と管理、目標の設定などに基づいて8段階(A、A-、B、B-、C、C-、D、D-)のスコアで評価しています。
CDPは2000年に英国で設立された国際的な環境非営利団体で、142兆米ドル超の資産を持つ700以上の金融機関と協働し、グローバル規模での環境情報開示システムを運営しています。具体的には、世界各国の投資家・企業・政府等からの要請を受けて、環境に関する質問書を各企業に送付するとともに情報開示プラットフォームを提供し、回答のスコアリングと分析を行っています。
2024年には世界の時価総額の66%以上を占める24,800社以上が、日本ではプライム上場企業の70%以上を含む2,100社以上が、CDPを通じてデータを開示しました。CDPスコアはネットゼロや持続可能でレジリエントな経済の実現のために、CDPウェブサイトやレポートを通じて投資や調達の意思決定に広く活用されています。

グループ会社における活動事例
地下水使用量削減
長野日本無線(株)では、2014年よりエアコン更新の際、水冷エアコンから空冷エアコンへ変更することで、地下水使用量削減活動を行っています。
同社の2022年度の地下水使用量は年間315 千m3でしたが、2023年度に18台の更新工事を実施したことにより、2023年度の地下水使用量は約204 千m3となり、2022年度比で約35%(111 千m3)の使用量削減をすることができました。
これに加え、2024年度は12台の水冷エアコンを空冷エアコンへ変更し、40 千m3/年の地下水使用量の削減をおこないました。2025年度は、同社が有する残りの水冷エアコン11台のうち、3台の更新を計画しています。

スクラバーにおける補給水の適正化
NJコンポーネント(株) 山陽事業所では、同事業所の水使用量のうち約7割を占めるフェライト製造工程に着目し、各設備の使用量調査を行いました。その結果、原料工程におけるスクラバー装置への水の供給量が非常に多いことが判明しました。
水の供給は、手動開閉バルブによる供給装置のため、開度によっては、水量が大幅に変化する仕様となっていました。実際にスクラバーの供給量を調査したところ、必要とする水量を超えて供給していることがわかりました。
改善点としては、水供給配管に流量計を追加することで、常に設定した流量で管理できるよう設備を改良しました。その結果、512 m3/月の水使用量削減を行うことができました。2025年度には、6,144 m3の水使用量削減効果を見込んでいます。

冷却水循環化による水資源有効活用
日清紡マイクロデバイス(株) 川越事業所では、従来217棟生産装置向けの間接冷却水を井水(地下水)から供給し、使用後は事業所外へ排水していました。
生産装置で温められた水を冷却させ、再度生産装置へ供給する仕組みは費用も掛かります。そのため、コスト面を考慮し井水を使用していましたが、環境保全(水使用量の削減)の観点から、排水を受水槽へ戻し再利用する方法へと変更しました。
これにより、年間約40 千m3/年の排水量抑止および、揚水量の削減となりました。加えて揚水量を削減することで、揚水ポンプの電力使用量についても、約6,500 kWhの削減につながりました。

外調機プレコイルの温水制御変更による節水
日清紡マイクロデバイス(株) やしろ事業所では、クリーンルーム外調機のプレヒーティングコイル制御変更を行い、536 m3/年の水使用量削減を実現しました。
外調機の前段に設置されているプレコイルは、外調機の凍結防止のために、外気温が低下すると温水を流して温めます。従来は外気温が低下した場合、外気温が上がるまで温水を流し続けましたが、プレコイル後段の温度をモニタリングし、その温度に応じ流す温水量を制御することで、余分な温水を削減することができました。また、温水量を削減できたことにより、温水を作る都市ガス33 千m3/年の使用量を削減しました。


送水ポンプ設定見直しによる省エネ・節水
日清紡メカトロニクス(株) 美合工機事業所では、岡崎市から供給された上水を専用貯水槽に貯水し、送水ポンプにて各建屋などへ送水しています。
今回、水使用量削減と省エネを目的として、建屋への送水ポンプ2カ所の設定を2024年に見直しました。揚程(圧力)設定を63 mから53 mに変更することで、水使用量を計1,042 m3削減したことに加えて、計1,859 kWh/年の電力使用量を削減することができました。
今回の見直し施策は、グループ各拠点へも水平展開を行い、節水による「売上当たりの水使用量の削減」、省エネによる「温室効果ガスの排出量削減」につなげていくことで、日清紡グループのサステナビリティ推進計画の目標達成を目指していきます。

水使用量削減への取り組み
日清紡テキスタイル(株) 藤枝事業所では、不織布の製造や、工場内の空調のために、大量の冷却水を使用しています。従来は、不織布生産ラインへ確実に給水するために、ライン停止中も過剰に給水を行っていました。
水使用量削減の取り組みとして、2023年5月に、給水用プールに水位監視センサーを設置し、給水用自動弁により、プールの水位を自動制御できるように設備改造を行いました。これにより、ライン停止中の過剰給水が抑制され、結果として、2024年度の同事業所水使用量は、2,034 千m3と、2023年度対比で、11%(258 千m3)の削減を果たすことが出来ました。今後も、カイゼン活動などを通じて、水資源の有効活用を果たしていきます。

設定・制御方法の変更や再利用による節水対策
日清紡テキスタイル(株) 徳島事業所では、2つの製造課において、節水対策を行っています。
1つ目はモビロン生産課で、製品の品質を保つために製造室を通年一定温度に制御しています。この温度制御を行っている設備では、夏季の高温環境下でも高い効率で機械を運用できるように、室外機の熱交換部(アルミフィン)に冷却放水を行っています。これに対して、放水条件の温度設定を調節することで、水使用量を削減しました。
2つ目はエラストマー生産課で、保有する設備のうち圧縮機、冷却器、粉砕機、押出成形機において冷却制御のために水を使用しています。これは常時給水状態となっていましたが、給水配管に自動弁を追加して、稼働時や冷却時など必要な時に限り給水するように変更しました。さらに一部の設備では、一度限りで排水していた冷却水を、別の設備の冷却水に再利用するようにしました。
今回の対策により、2024年度は年間70 千m3の水使用量を削減することができました。これからも限りある水資源を有効活用できるように取り組みを続けていきます。
