基本的な考え方
日清紡グループは、行動指針に「コンプライアンスの徹底」、「公正かつ透明な取引」を掲げ、社会的ルール・企業倫理など広い範囲において常に公正で誠実に行動すること、および、健全な取引関係を通じた対等なパートナーとしてサプライヤーさまを尊重することを定めており、サプライチェーン全体でサステナブルな取引を目指しています。
当社グループのサプライチェーン全体でサステナビリティに取り組むため、その基本となる考えを法令遵守、公正取引、情報セキュリティ、環境保全、人権、安全衛生、品質・安全などの側面からまとめた「日清紡グループ サステナブル調達基本方針」を2015年に制定しました。近年の社会的要請に応じた見直しを行い、2024年に基本方針を改定し、同時に「日清紡グループ サステナブル調達ガイドライン」を制定しました。
当社グループの基本方針とガイドラインをサプライヤーさまにご理解いただきながら、サステナブル調達の取り組みを推進しています。
日清紡グループサステナブル調達基本方針
- ①法令・社会規範を順守していること
- ②人権が尊重された安全で快適な職場環境を確保すること
- ③安全衛生活動に取り組んでいること
- ④環境保護に配慮していること
- ⑤健全且つ公正な取引を行っていること
- ⑥責任ある原材料調達を行うこと
- ⑦製品・サービスの品質や安全性の確保に努めていること
- ⑧情報の管理を適切に行っていること
- ⑨事業継続計画を準備していること
推進体制
日清紡ホールディングス(株)は、2025年4月に、スピード感をもって変革をリードし統括する体制の構築を目的として、各機能別組織に担当執行役員を置く組織再編を行いました。日清紡グループの調達については、日清紡ホールディングス(株)のリスクマネジメント室長を責任者とするガバナンス体制としています。また、サステナブル調達を推進するために、調達担当者会議を設置し、活動に取り組んでいます。
当社グループの最高責任者である当社社長は、毎年経営戦略会議※ においてマネジメントレビューを実施し、リスクマネジメント室担当執行役員による当社グループの取り組みと進捗などの状況報告を受けて、経営上必要な実施事項を指示しています。特記事項などについては適時取締役会に報告されています。
※ 経営戦略会議:取締役および監査役・執行役員により構成される業務執行会議
当社のサステナビリティを推進する組織体制の概要については、「サステナビリティ推進体制」をご覧ください。
日清紡グループの具体的な取り組み
第5期サステナビリティ推進計画(達成年度2024年度)
2024年度を達成年度とする「第5期サステナビリティ推進計画」では、サステナブル調達の推進を重点活動項目とし、「調達先と連携したサステナブル調達の改善実施」、「グローバル対応の実施」「社内啓発活動の拡充」を達成するために、以下3項目を目標・KPI※ に定めて活動しました。
※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
- ①主要調達先(取引金額80%以上)へのサステナブル調達アンケート結果に伴う改善状況の評価 100%
- ②海外取引先、重要海外拠点におけるサプライチェーンへの展開方法検討と実施
- ③購買担当者研修(年度別テーマ)の実施率 100%
2024年度は調達担当者会議を7月と12月に実施し、上記②で挙げた海外拠点におけるサプライチェーンへの展開について、国内外の調達部門を持つ生産工場を対象拠点としました。また、①のサステナブル調達アンケート内容について国内、海外ともに「日清紡グループ サステナブル調達ガイドライン」に基づき見直しを行いました。
第6期サステナビリティ推進計画(達成年度2027年度)
2027年度を達成年度とする「第6期サステナビリティ推進計画」では、サステナブル調達の推進を重点活動項目とすることを継続し、「調達先と連携したサステナブル調達の改善実施」を達成するために、以下を目標に掲げて取り組みを進めています。
主要調達先(取引金額80%以上)への調達ガイドラインに基づくアンケート結果のフィードバック実施 100%
調達担当者会議にて協議を行い、第6期もサプライヤーへのアンケートを中心に活動していく事としました。また、2025年度から新たに(株)国際電気が調達担当者会議に参加することとなりました。
サステナビリティ推進計画の概要については「サステナビリティ推進計画とKPI」をご覧ください。
サステナブル調達アンケートの実施と改善活動
サステナブル調達に関する取り組み状況を確認するため、日清紡グループ国内各社にて、国内の主要サプライヤーさまへのアンケート調査の実施と結果のフィードバックを2017年から継続して実施しています。アンケート結果はサプライヤーさまにフィードバックし、サステナブル調達に向けた改善活動にご活用いただいています。この活動により、サプライヤーさまへ「日清紡グループ サステナブル調達基本方針」が浸透しています。
2024年度のアンケート対象範囲は、各中核会社の取引金額ベースで80%をカバーするサプライヤーさまとしました。これまでに複数回アンケートとフィードバックを実施したサプライヤーさまの多くで、評価ポイントが上昇する結果となりました。新しいアンケート内容で実施したグループ会社では単純比較はできませんが、設問数が増加したこともあり、ポイントは同等から低下傾向でした。今後もサプライヤーさまにアンケート結果をお伝えして改善にご活用いただき、サステナブル調達を推進していきます。
2025年度は、「日清紡グループ サステナブル調達ガイドライン」に準拠した新しいアンケート内容で、海外事業所とそのサプライヤーさまも含め活動を実施していく予定です。
購買担当者研修の実施
2024年度は、国内の日清紡グループ会社の購買担当者を対象として、7月に「責任ある鉱物調達」の社内研修を行いました。「責任ある鉱物調達」の対象とされる鉱物は多く、サプライチェーンにおける調査方法は十分検討する必要がありますが、各社購買担当者が理解を深めステップを踏みながら、調査を実施していく予定です。
パートナーシップ構築宣言・下請法遵守
「パートナーシップ構築宣言」の仕組みは、関係閣僚(内閣府、経産省、厚労省、農水省、国交省および内閣官房副長官)と経団連会長、日商会頭、連合会長をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」において、2020年5月に創設されました。この「パートナーシップ構築宣言」は、サプライチェーンのサプライヤーさまとの連携・共存共栄の取り組みや、親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)の遵守:「取引条件のしわ寄せ」防止を宣言するものです。
2024年末現在、日清紡ホールディングス(株)と日清紡マイクロデバイス(株)が「パートナーシップ構築宣言」を行っています。
「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト
https://www.biz-partnership.jp/index.html

グループ会社における活動事例
サステナブル調達とグリーン調達の取り組み
日本無線(株)では、サプライチェーン上の社会的責任を果たしつつ持続可能な調達をサプライヤーとともに目指し、社内外への理解と周知を行っています。
具体的には、同社のグリーン調達ガイドライン(第9版)を2020年2月に改訂し、製品に使用する部品、部材、ユニットを購入する際は「環境配慮、製品設計要領」に従った上で鉛フリー、RoHS指令※ 対応を優先するなど、環境保全の推進に取り組みました。
「日本無線グループサステナブル調達基本方針」についても「日清紡グループサステナブル調達基本方針」に基づいた策定を行い、あわせて同社ホームページに掲載しています。
また、日本無線グループの4社(日本無線(株)・長野日本無線(株)・上田日本無線(株)・ジェイ・アール・シー特機(株))で、取引額上位80%以上のサプライヤーへサステナブル調達アンケートを行い、前回結果からの改善状況を評価しました。
※ RoHS指令:電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する欧州連合(EU)の法規制
下請事業者保護に関する研修
JRCシステムサービス(株)は建設業を営んでおり、事業を行うにあたって下請事業者との適切な取引関係を維持促進する事が求められています。下請法(下請代金支払遅延等防止法)や建設業法を遵守し、下請事業者が不利益を被らないようにするために、基本的事項である親事業者(元請会社)の義務と禁止事項などについて、毎年、研修を実施しています。
下請法に関しては、主として法の目的と親事業者の義務である支払遅延・下請代金の減額禁止、不当な返品・買いたたきの禁止などについて講義するほか、過去における公正取引委員会の勧告事例などを解説して担当者の理解を深め、遵守に努めています。
建設業法に関しては、見積から契約締結、支払いまでの一連のプロセスを理解すること、特に書面での契約締結、支払期限の厳守などに重点をおき、下請事業者を保護するための研修を実施しています。
2024年度は、89名が全国の拠点からオンライン研修に参加しました。また、業務都合により参加できなかった担当者は、全国の従業員が閲覧できる社内サーバーに掲載している研修テキストを使用して、下請事業者保護について自習しています。
下請法教育の実施
ジェイ・アール・シー特機(株)では、下請法違反による企業のイメージダウンやコンプライアンスリスクを回避するため、最新の公正取引委員会発行の冊子を使用し、「下請法の適用対象」「親事業者の義務」「親事業者の禁止行為」「事件処理手続き」「優越・物特の概要」「下請法条文」について、外部への発注担当を行う社員全員に対して教育を実施しました。
下請法の基本を体系的に学び、業務上留意すべきポイントを整理しました。受講後は、質疑応答により教育の有効性を評価しました。
今後も継続的な教育を行うにあたって、計画的に教育を実施し、コンプライアンスリスク低減に努めます。
下請事業者保護の取り組み
(株)HYSエンジニアリングサービスは、サステナブル調達の取り組みの一環として「日清紡グループ サステナブル調達基本方針」に基づき、サプライチェーン全体でのサステナブル調達を推進しています。2025年度からは主要取引先(約80社)へ「サステナブル調達に関するアンケート」を実施し、方針の共有と浸透を推進します。
下請事業者の適正化に向けた取り組みの一環として、原材料や人件費などの物価上昇を鑑み、調達品取引価格の見直しを実施しています。主に鉛蓄電池や作業単金などについて、下請事業者との取引価格を適宜見直しました。
また、経済産業省産業部適正取引推進課のアドバイスに基づき「手配を行う際は作業場所等を明確に明記すること」などを実行し、下請事業者に対してわかりやすい注文書の発行を行っています。
この取り組みについて、2024年2月に開催した同社の手配部門が参加する定例部課長会議において、「下請法適正化」に関する教育を実施し、周知徹底を行いました。
下請法教育の実施による公正かつ透明な取引の実現
日清紡マイクロデバイスグループ(国内生産拠点)では、購買担当者を含む購買取引にかかわる全従業員に対して、下請法理解と遵守徹底のため、1回/年、定期下請法教育を行い、公正かつ透明な取引を実現しています。2024年は7月に下請法教育を実施し、日清紡マイクロデバイス(株)から822名、日清紡マイクロデバイスAT(株)から157名、日清紡マイクロデバイス福岡(株)から12名、計991名の社員が受講しました。教育では、公正取引委員会提供の下請法基礎講習会動画を視聴したほか、確認問題を実施しました。
また日清紡マイクロデバイス(株)では、2024年3月に「パートナーシップ構築宣言」を行い、サプライチェーンの取引先の皆様や価値創造を図る事業者の皆様との連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップの構築を目指しています。
同社のパートナーシップ構築宣言は、「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトに掲載しています。
https://www.biz-partnership.jp/declaration/55983-05-20-tokyo.pdf
サステナブル調達ガイドラインと不正防止の取り組み
アメリカのNisshinbo Automotive Manufacturing Inc.では、日清紡ブレーキ サステナブル調達ガイドラインに従って、サステナブル調達の推進に取り組んでいます。
また、「商取引における、または商取引に影響を与える不正または欺瞞的な行為または慣行」を禁止する連邦取引委員会法(FTC法)(15 USC 45)第5条を順守しています。2024年12月には、ジョージア州およびミシガン州の事業所にて不正防止トレーニングを実施し、従業員286人が参加しました。
同社の企業理念は、北米でおこなう事業活動のサプライチェーンにおけるパートナーシップの基礎となっています。2024年9月には企業理念研修を実施し、320名の従業員が参加しました。研修では、同社企業理念の再確認はもとより、「地球環境・社会、お客さま、株主・投資家、従業員に対して同社が大切にしたい価値観」を周知しました。
サプライヤーさまとの協議
日清紡ケミカル(株)では「お客さまへ高品質な製品の安定供給」を最優先事項として、サプライヤーさまと協議を進めています。
例えば、サプライヤーさまの事業環境変化による生産拠点や素原料の変更申し入れがあった際には、同社製品の品質への影響を十分に調査することはもとより、お客さまへの納期厳守や安定供給を最優先に考慮し、協議を進めています。協議の中で折り合いがつかない場面が生じることもありますが、双方が共存共栄を図れる着地点を見出すことが出来るまで、粘り強く協議を継続しています。
「責任あるサプライチェーンの推進」の取り組みとして、「紛争鉱物」や「輸入規制」、「規制対象物質」などの不使用についてサプライヤーさまに調査を依頼して状況を確認しているほか、必要に応じて「不使用証明書」を発行して頂いています。一部のお客さまからは、不使用宣誓書の提出を要請される場合もあり、真摯に対応しています。
引き続き、サプライヤーさまとの良好な関係を築き、サプライチェーン管理をより確実なものと出来るよう進めていきます。