労働災害防止の推進

基本的な考え方

日清紡グループは、行動指針に「安全が全ての基本」を掲げ、事業活動の全てにおいて安全を最優先にし、クオリティの高い製品を送り出すことを明記しています。

推進体制

日清紡グループは、労働災害の防止をグループ全体で推進するためにグループ安全衛生連絡会議を設置し、日清紡ホールディングス(株)の取締役経営戦略センター長をグループ統括者とする体制のもと、経営戦略センター サステナビリティ推進室 安全衛生管理グループが事務局となり活動に取り組んでいます。サステナビリティ推進計画に基づき労働安全衛生活動を推進するために、目標・KPI を管理し対策を講じています。

また、日清紡ホールディングス(株)の経営戦略会議で、グループの目標達成状況、労働災害発生状況や安全衛生監査結果などのマネジメントレビューを実施し、翌年度の目標、重点方針について最高責任者である取締役社長の指示を受ける仕組みになっています。マネジメントレビューは取締役会にも報告されます。

※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標

日清紡グループの具体的な取り組み

「第5期サステナビリティ推進計画」では、労働安全衛生活動の推進を重点活動項目とし、労働災害防止の推進に取り組んでいます。重大災害発生件数 0件をKPIとしてPDCAを回しながら目標達成に向け活動を進めています。

2024年度は2023年度に引き続き「安全衛生活動の強化」を重点方針として重大災害の防止、化学物質管理の強化、行動災害の予防対策の推進に取り組んでいます。

2023年度の主な具体的取り組み事項は以下のとおりです。

  • ①重大災害防止
    新規機械設備や新規化学物質導入時、および大幅な作業内容変更時はリスクアセスメントを活用し、重大リスクへの低減措置を推進する。
  • ②予防安全活動の強化
    事業拠点ごとの自律的な化学物質管理に向けた体制の再構築を図る。
  • ③危険感受性の向上
    危険予知トレーニングやヒヤリハット報告活動などによるコミュニケーション向上により、従業員一人ひとりの危険感受性向上を図る。

労働災害の発生状況

2023年度に重大災害(死亡または障害等級第1級から第7級に該当する災害)の発生はありませんでした。

労働災害の発生頻度を表す休業度数率 は、国内グループ全体で2022年度比悪化しましたが、国内製造業と比較しても良好な水準を保っています。

労働災害が発生した際には、安全衛生担当者や発生部署の管理監督者が被災者を含む関係作業者にヒヤリングを行い、真因を追及し、再発防止策を講じています。また、発生した労働災害の内容や対策を報告書にまとめ、類似災害防止に資するため日清紡グループ各社に展開しています。

※ 休業度数率:100万延べ労働時間あたりの労働災害による死傷者数で休業災害発生の頻度を表す指標。

休業度数率推移

休業度数率推移

安全衛生活動・5S活動

日清紡グループの各事業所では雇入れ時や作業内容変更時の教育に加え安全衛生業務従事者の能力向上教育の実施、危険予知トレーニング、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)活動、危険体感教育などの小集団活動を通して従業員一人ひとりの安全意識向上に努めています。また、年間計画を策定し、計画的に設備、作業、化学物質に対するリスクアセスメントを行い、優先順位を決めて予防安全対策を実施しています。

安全衛生活動・5S活動

安全衛生教育・訓練

2023年度の日清紡グループの重点方針である「安全衛生活動の強化」に従い、複合事業拠点での安全衛生マネジメントの実施状況、安全衛生活動について学びの機会を設け、各事業拠点の安全衛生担当者77名が参加しました。

この勉強会の会場である長野事業所には、日本無線(株)、長野日本無線(株)、長野日本無線マニュファクチャリング(株)、JRCロジスティクス(株)、JRCモビリティ(株)の5社が入っており、共同で行われている安全衛生活動やルールの共通化への課題などについて意見交換しました。

安全衛生教育・訓練
安全衛生教育・訓練

安全衛生監査

日清紡グループでは日清紡ホールディングス(株) 安全衛生管理グループ、労働組合、事業会社代表の安全衛生管理責任者、他事業所の安全衛生管理者などで監査チームを編成し、各事業での安全衛生管理状況を定期的に監査しています。2023年度は製造拠点を中心に国内46事業拠点、海外4事業拠点の安全衛生監査を実施しました。

これらの監査結果は、年度末に総括監査報告としてまとめ、災害リスクの分析結果や優良な活動事例をグループ内に展開し、翌年度の労働安全衛生活動に活かしています。

化学物質管理に関する取り組み

2023年から労働安全衛生法関係政省令の改正により、化学物質に関して「自律的な管理」が求められるようになりました。化学物質は多くの事業所で使用しているため、抜け漏れなく「自律的な管理」への対応ができるように、国内グループ会社の有識者と検討部会を開催し、「事業場における化学物質管理に関するガイドライン」を作成し全事業所に展開しました。2024年も検討部会を継続し、ガイドラインに準じた管理への対応状況や課題について担当部署と情報交換を行っていきます。

海外事業所の活動

海外グループ会社でも「安全が全ての基本」との行動指針に基づき、管轄する中核会社と連携をとりながら各事業所で実施している危険予知トレーニングや危険体感教育などの活動を通して、従業員一人ひとりの安全意識の向上に努めています。また、グループ内の事業所で発生した労働災害の再発防止の取り組みを展開し、類似災害の防止に努めているほか、取り扱う化学物質についても、その危険性の周知と保護具使用の徹底を継続し、健康障害の防止に努めています。

グループ会社における活動事例

危険感受性を高める「一言KY発表」

ジェイ・アール・シー特機(株)では、各部門の朝礼時、危険感受性を高めるための活動として、危険予知(KY)に関する一言発表を行っています。

発表者各自が、通勤時や作業時に感じた危険について発表し、その内容をリスト化し、さらに部門長のコメントも添えて全社へ展開しています。

多くの事故・災害はヒューマンエラーに起因します。このヒューマンエラー事故をなくすため、機械設備など「物」の対策と、安全衛生に関する知識・技能教育などの「管理」の対策が必要です。一人ひとりが危険に対する感受性を鋭くし、行動の要所要所で集中力を高めるための活動として、危険予知(KY)活動を行っています。

一言発表の内容は、降雨・降雪時のスリップによる転倒や、自転車は左側通行といった通勤時のものや、台車に荷物を積んで移動する際の落下防止といった作業時のものなどが展開されています。
2023年度の発表件数は740件でした。

防災安全衛生活動

日清紡マイクロデバイス福岡(株)では、災害“ゼロ”を目標に掲げ、自利利他の精神で防災安全衛生活動を行っています。

  • ①高年齢労働者に配慮した職場改善
    段差標準化チームを結成し、社内に存在する全ての段差を測定しました。JIS規格を参考に段差を5.0mm以上と定義し、注意喚起の表示方法を標準化する規程を制定するとともに、運用を開始しました。また、つまずき防止設計のクリーンシューズを導入し、高年齢者から順次配付しました。
  • ②自転車通勤による通勤途上災害防止対策
    選出された自転車通勤者による“安全護り隊”を結成し、通勤用自転車の点検補助や修理の相談など、フォロー体制を強化しました。自転車通勤者向けの教育を年1回、自転車自主点検を年2回行うこととしました。
  • ③重量物運搬による業務上災害防止対策
    重量物を手で運搬しないように、専用台車および保管棚を内製しました。また、重量物取扱いを標準化する規程を制定し、運用を開始しました。
安全護り隊
安全護り隊
内製台車および保管棚
内製台車および保管棚

セーフティベーシックアセッサ資格取得の推進

日清紡マイクロデバイスAT(株)では、2021年より、職場の災害リスク低減活動として、製造部門のメンテナンス業務をされている方を主な対象に、セーフティベーシックアセッサ 資格取得に取り組んでいます。この資格取得を通して、安全に対する意識の向上、安心感の醸成、そして、ウェルビーイングの向上が期待され、安全に対する製造現場全体のレベルアップを図ることができます。

2023年は新たに20名取得し、全体では対象85名に対し32名の取得で、取得率は38%になりました。これからもメンテナー全員の取得により安全運用を図ります。

※ 日本認証(株)が定める、機械安全の普遍的・基礎知識を認証する安全資格で、機械ユーザーの職長、作業主任者、各種安全担当者の機械安全教育に有効であることが厚生労働省の通達にも明記されている

セーフティ受講風景
セーフティ受講風景

全国安全衛生優良事業所賞の受賞

タイのNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.では、社内に安全職場環境を提供し、安全衛生活動を通じて従業員の安全意識を向上させる目的として、2004年に第1回のランプーン県の安全衛生優良事業所賞を受賞しました。それ以来、5年間連続でランプーン県安全衛生優良事業所賞を取得し、6年目となる2009年に初めて全国レベル安全衛生優良事業所賞を獲得しました。

2023年度、同社はタイ国労働省労働保護福祉局が主催した安全衛生優良事業所コンテストに参加しました。その結果、2022年度実施した安全・衛生・福利厚生のさまざまな推進活動の成果について、連続20年目の全国安全衛生優良事業所賞プラチナレベルを受賞しました。同社からは事務部長ノンヌット氏と安全衛生促進課主任のチャリンラット氏が代表者として、2023年9月18日にバンコクの労働省において開催された授賞式に参加しました。

全国安全衛生優良事業所賞プラチナレベル
全国安全衛生優良事業所賞プラチナレベル
授賞式
授賞式

安全衛生教育を充実させる取り組み

日清紡ブレーキ(株) 館林事業所では、安全衛生教育の充実に取り組んでいます。この中で「職長教育」は、安衛法に基づき、従来から指定法人が実施する外部講習の修了を必須としていました。

事業所の社内安全衛生教育と整合し、作業内容に即した柔軟で効果的な社内教育を実現するため、安全衛生スタッフが職長教育実施の講師要件である「労働省方式現場監督者安全衛生教育トレーナー(RST)」を取得しました。職長教育の指定カリキュラムに沿った上で事業所の作業内容に合わせた教育テコンテンツを作成し、職長が選任されるタイミングに合わせた柔軟な日程でタイムリーな職長教育の実績を積み重ねています。また、社内の労災模擬体験教育においても、RSTを持つ講師を中心に各安全衛生教育との整合を図り、定期的に実施しています。

安全衛生教育の講師のスキルアップを図りつつ、社内安全衛生教育の充実に取り組んでいます。これら日々の努力が各職場の安全衛生意識の維持向上につながることを期待しています。

労災模擬体験教育
労災模擬体験教育

安全活動の推進

アメリカのNisshinbo Automotive Manufacturing Inc. (以下、NAMI)では、すべての事故やインシデントを安全チームと経営陣が徹底的に調査し、原因を解明し、同様の事故が起こらないようにするための是正措置を実施しています。

<主な安全活動>

  • ①毎日の安全メッセージの展開
  • ②同様の事故やインシデントの再発を防止するための注意喚起資料の作成と掲示
  • ③毎月の安全トピックの掲示
  • ④NAMIの安全管理方針を徹底するため、PPE巡視(現場での個人保護具の確認)の実施

「5Sコンテストの開催」

日清紡メカトロニクス(株)では、2022年度は5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)コンテスト優良事業所見学会を通じ、各拠点において5S活動のさらなる推進が見られました。2023年度には、国内、海外の全拠点を対象とし5Sコンテスト開催しました。

各拠点(国内 9拠点、海外 6拠点)の選抜チームにより、11月に一次審査を行いました。その結果、国内4チーム、海外3チームが、1月16日に美合工機事業所にて行われた最終審査に参加しました。最終審査に参加されたチームは、「全員参加」のキーワードのもと活動が工夫されており、なかでも深掘りが高かったチームでした。参加されたチームリーダーより、「さらなる改善に取り組んで行きます。」と力強いコメントをいただきました。

2024年度は、「安全+5S」の「グローバルコンテスト」の開催を予定しています。これからも、さまざまな視点から、安全、5S、品質の向上につながる活動を推進していきます。

5Sコンテスト
5Sコンテスト

自発的な安全活動の促進

日清紡精密機器 (上海) 有限公司では、トップ層による安全巡視(月1回)を実施し、各職場の自発的な5Sなどの安全衛生活動事例の報告を受ける機会を設けています。

社内の危険箇所を発見した際に、誰でもスマートフォンで簡単に報告できるような仕組みをつくり、危険箇所の改善を早くできるようにしました。2023年2月より実施し、報告件数は年間159件となりました。

モチベーションの活性化

インドネシアのPT. Standard Indonesia Industryは毎月全体集会を開催し、5S活動優秀チームと改善提案優秀者を全従業員の前で表彰しています。

毎週5S巡視を行い、整理整頓などの5Sの評価表に基づき各エリアの評価をし、その評価に基づき優秀チームが選ばれます。また、改善提案については、提出案の中から貢献度の高いものが選ばれます。表彰式では5Sで苦労した点や改善提案のきっかけが全員の前で説明されました。表彰された従業員のモチベーション向上につながるのはもちろんのこと、表彰式に参加した従業員たちも次回以降での表彰を目指したモチベーションを上げることにつながると考えています。また、表彰式の様子は会社のSNSに掲載され、SNSを見た家族や友人、職場仲間からも、多くの反響がありました。

5S活動表彰式
5S活動表彰式