基本的な考え方
日清紡グループのリスクマネジメントに関する基本的な考え方は、「リスクマネジメント規定」の中で行動指針として明記しています。
リスクマネジメントに関する行動指針
当社グループは、事業の円滑な運営に重大な影響を及ぼす経営リスクに的確に対処することを通じて、社会的責任を果たし信頼を確保して永続的発展を目指す。役員・従業員は、リスクマネジメントの重要性を認識して、次の項目を遵守しつつ、リスクマネジメント目標を設定し、その実施・改善に努める。
- ①法令・規定類を遵守し、社会通念に則した事業活動を行う。
- ②当社グループの役員・従業員・関係者の健康・生命を守り、安全を確保する。
- ③当社グループの関係者・株主・顧客の、当社グループに係わりのある活動・財産を保護する。
- ④公正妥当な社会的要請に的確に応えることを通じて、社会的評価を高める。
上記リスクマネジメント規定では、経営リスクが発生した場合の損失を極小化することを主な目的としていますが、一方で、経営リスクを持続的成長のための「機会」と捉えることも重要と考えています。そのためにさまざまな事業環境の変化を把握・分析し、グループ企業理念から導かれた事業方針のもと社会に貢献することで、新たな成長「機会」を創出していきます。
推進体制
日清紡グループは、事業遂行上の経営リスクに対して適切に対応し、経営リスク発生時の損失をミニマイズするために、下図のようにリスクマネジメント体制を定め運営しています。
日清紡ホールディングス(株) 取締役社長をリスクマネジメントの最高責任者とし、最高責任者は統括責任者を当社の執行役員の中から任命し、現在は当社リスクマネジメント室担当執行役員がその任にあたっています。リスクマネジメント事務局はリスクマネジメント室に置いています。
リスクマネジメント委員会は、最高責任者と統括責任者と各中核会社の社長を含むメンバーなどで構成され、毎年1月に開催されます。委員会では前年度レビューの報告と新年度の計画策定(各事業などの重点管理リスク)の審議が行われます。
リスクマネジメント体制図

※ HD:日清紡ホールディングス(株)
当社のサステナビリティを推進する組織体制の概要については、「サステナビリティ推進体制」をご覧ください。
リスクマネジメント
日清紡グループでは、リスクが与えうる経済的な影響などを加味し、それぞれのリスクを回避・軽減・移転・保有の4種のいずれかに分類して対応を図っています。
リスクに応じた対応

リスクマネジメントによるリスクの軽減の仕組み
軽減可能なリスクについては、1年間のPDCAサイクルを回すことでリスクの軽減を図っています。具体的な手順は「リスクマネジメント規定」に基づいて管理しています。年度末に各事業において経営リスクを抽出した後、抽出したそれぞれのリスクについて影響度と発生確率共に高い方を高得点として5段階評価し、影響度と発生確率を掛け算した結果が一定以上となる経営リスクを抽出します。
リスク抽出プロセス(リスク分布の可視化例)

各事業は抽出したすべての経営リスクとその中から新年度に重点的にモニタリングする経営リスクを数点抽出してリスクマネジメント事務局に報告します。報告された経営リスクについて事務局は各事業のリスクマネジメント担当者と内容を確認して、当社グループ全体のリスク傾向やレベリングなども加味しながら必要に応じて経営リスクの項目の調整を行います。調整済みの経営リスクを各事業の責任者(中核会社の社長)が承認して新年度にモニタリング対象とする経営リスクが確定します。
事務局は、各事業のモニタリング対象の経営リスクを1月のリスクマネジメント委員会に報告して、新年度のリスクマネジメント活動が開始されます。各事業は、月次報告の中の報告事項のひとつとしてリスクマネジメント活動の報告を行います。事務局は報告内容を確認して必要に応じて進捗などについてヒアリングしながら各事業の活動をサポートします。そして、年度末になると各事業で1年間の活動を振り返り、影響度や発生確率が下ったかどうかの評価を行い、事務局と評価結果について調整します。これを毎年繰り返すことで、リスクを軽減していきます。
主要なリスクと機会
事業の状況、経理の状況などに関する事項の内、経営者が連結会社の財政状況、経営成績およびキャッシュフローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクと機会は、以下のとおりです。

日清紡グループの具体的な取り組み
第5期サステナビリティ推進計画(達成年度2024年度)
2024年度を達成年度とする「第5期サステナビリティ推進計画」では、リスクマネジメント活動の推進を重点活動項目とし、「外部環境に応じたリスクマネジメントシステムの運用」を推進するために、以下を目標に定めて活動しました。
外部環境に応じたリスクマネジメントシステムの継続的な運用
各事業の担当者および事務局が協働してPDCAの仕組みを含むリスクマネジメントシステムを運用し、リスクマネジメント活動を通してリスク軽減に取り組みました。
第6期サステナビリティ推進計画(達成年度2027年度)
2027年度を達成年度とする「第6期サステナビリティ推進計画」では、引き続き、リスクマネジメント活動の推進を重点活動項目とし、以下を定性目標に置いて活動のレベルアップを図ります。
環境の変化に応じたリスクマネジメントシステムの運用
サステナビリティ推進計画の概要については「サステナビリティ推進計画とKPI」をご覧ください。
リスクマネジメントに関する活動
2025年1月にリスクマネジメント委員会に報告した内容の中で、幾つかのトピックについて内容を紹介します。
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サイバーリスク対策
デジタル化の進展、地政学リスクの高まり等を背景に、世界的にサイバーリスクが増大しています。当社グループにおいても外部からの不正アクセスなどの攻撃に備えて、情報システム部門が中心となって外部の専門家の協力も得ながらサイバーリスクの低減に努めています。2025年度のリスクマネジメント活動の中でも、複数の事業グループにおいてサイバーリスクを重点モニタリング対象として取り上げ、従業員への教育・啓蒙にはじまり、標的型メール訓練の実施、保険等によるリスク移転や一層のシステム強化などを図っていきます。 -
BCP/BCMの運用状況の確認
当社グループでは、リスクマネジメント事務局と各事業との間で、半年に1回、各事業のリスクマネジメント活動への取組状況について、ヒアリングを行っています。2024年8月に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表を受け、BCP/BCMに関する規定やマニュアル等の保有・運用状況について確認する必要性があると認識したため、国内外の全子会社に対してアンケート形式で調査を行いました。全般的な危機の発生に応じたBCP/BCMが多い中で、一部の会社ではサイバー、火災、地震、洪水、停電、感染症などの個別の危機の発生に応じた文書を準備していることを確認しました。アンケートを通じて現状を把握すると同時に、各社の関連文書が陳腐化しないように、見直し含めた再整備の契機としました。
顕在化したリスクの把握
当社グループでは、事業に影響を及ぼしうるような事象が発生した時には、同報メール宛に報告することで、当社の社長、執行役員、関係する部門の室長等に情報共有されるようにしています。
リスクマネジメント規定において報告すべきリスクの例を具体的に列挙して基準を定めており、顕在化したリスクをいち早く把握して共有することで、事業影響が小さいうちから必要な対策が取れるように備えています。2024年度に報告されたリスクは36件と前年度比で5件減少しました(自然災害件数の減少)。幸いにも各社で対処可能なレベルの事象が大半で、事業継続に著しい影響をおよぼすには至りませんでした。
当社グループでは、顕在化したリスクの第一報を知らせるツールとして有効に活用できるように、今後もグループ内に周知徹底を図っていきます。