日清紡グループは、「事業を通じて社会に貢献すること」を使命として、人権を尊重した事業運営に取り組んできました。2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されるなど、人権尊重の重要性が一層高まる中、当社グループは、企業として人権を守る責任を改めて真摯に受け止めています。
こうした経営姿勢を対外的に明確に示すため、当社グループは2023年8月に「日清紡グループ人権方針」を策定しました。本方針は、当社グループの事業活動における人権尊重の取組みに関する文書・規範の上位方針として位置付けています。
当社グループは、自社の従業員をはじめ、お客さま、取引先や地域社会の人びとなど、事業に関わるすべての人びとの人権を尊重・保護し、促進する主体として、人権デューデリジェンスを通じて人権尊重を経営に組み込み、取組みを継続的に推進します。今を生きる人びと、そしてこれからを生きる子どもたちが、幸せで豊かな人生を送ることができる「ウェルビーイング」な社会の実現に尽力します。
2025年の取組み
苦情処理メカニズムの整備・強化
2025年度は、人権デューデリジェンスの実効性を高める重要な基盤である「苦情処理メカニズム」に着目し、グループ各社の整備・運用状況を把握する社内調査を実施しました。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が示す要件に対して、当社グループの各社苦情処理メカニズムの現状を可視化した上で、今後の改善・強化につなげることが目的です。
調査にあたっては、人権に関する国際的な評価機関であるCHRB(Corporate Human Rights Benchmark)が公開している評価基準を参照の上、設問を設定し調査を実施しました。
【UNGP 原則31に基づく実効性のある苦情処理メカニズムの8要件】
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正当性(Legitimate)
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利用可能性(Accessible)
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予測可能性(Predictable)
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公平性(Equitable)
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透明性(Transparent)
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権利適合性(Rights-compatible)
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継続的な学習の源(A source of continuous learning)
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関与(エンゲージメント)と対話に基づくこと(Based on engagement and dialogue)
調査概要
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調査対象
国内外グループ会社のうち、自社独自で苦情処理メカニズム(相談窓口)を設置している34社
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調査期間
2025年9月〜12月
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調査手法
アンケートおよび担当者へのヒアリング
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調査項目
CHRBの評価基準をもとに独自で設定した8項目、32問
結果
スコアは全8項目(8点満点)で評価し、その結果、全社平均は2.7点と低い水準となりました。全体を通じて日常的な運用に大きな問題は見られないものの、規程・手順等の明文化や、利用者への周知、社内外への公表といった点で課題が確認されました。
分析と対策
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社内向け相談窓口について
多言語対応が不十分で、全従業員が相談窓口にアクセスできていない。多言語対応を進め、すべての労働者が利用できる窓口体制を整備する。
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社外向け相談窓口について
多言語対応は進む一方、社外ステークホルダーや取引先への周知が不足している。研修やガイドライン展開により窓口の認知を高め、利用を促進する。
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ステークホルダーとの対話
利用者の意見を制度設計や改善に十分反映できていない。定期的な対話を通じて意見を運用改善に反映する仕組みを構築する。
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苦情処理プロセスの公開
手順は整備されているが、相談者が期待できる対応内容の周知が不十分である。対応内容や期間の目安を開示し、窓口の信頼性を高める。
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報復の禁止
報復禁止規定はあるものの、明文化・公開や定期的なモニタリングが不十分である。報復禁止規定を明文化・公表し、遵守状況のモニタリングを強化する。
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公的な苦情処理メカニズムとの関与
公的苦情処理機関への関与について、会社としての方針やルールが明確化されていない。相談者の法的権利を保障する方針をルール化し、社内外に周知する。
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負の影響の是正
対応プロセスや是正内容、再発防止策の開示に関する認識が十分に浸透していない。指導原則に沿った内容を精査し、対応プロセス等の開示を進める。
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苦情処理実績の公開、コミュニケーションの反映
相談対応の知見は活用されているが、運用実績の公開に課題がある。相談件数など、整備済みデータから段階的に実績を開示する。
今後の取組み計画
今回の調査により、あるべき姿に向けた改善の出発点が明確になったと捉え、以下のとおり苦情処理メカニズムの整備・強化に注力します。
- 窓口担当者の機能強化
- 国内の相談窓口研修を刷新し、国内外の担当者に向けて相談窓口の重要性を伝える研修を実施し、対話を通じて制度整備を支援する。
- 対応プロセスや
ルールの取り決め - 現行の国内法令に基づく対応に加え、今後は指導原則に沿ったガイドラインやルールの整備を進める。
- 窓口利用者との
意見交換 - 窓口の整備にあたり、窓口利用者との意見交換の機会をつくり意見を反映させる。
- 窓口の周知とアクセシビリティの向上
- 窓口の周知強化や多言語対応を通じて、窓口の利用促進とアクセシビリティ向上を図る。
- 取引先への要請
- 調達アンケート、調達ガイドラインの展開を通じて、取引先に窓口の設置を要請するよう各社に依頼する。
- 関連情報の公開
- 窓口の対応状況や対応結果、運用改善の内容を社内外に公開し、窓口の透明性と信頼性を高める。
責任ある鉱物調達に対する体制整備
社会の人権への意識の高まりから、児童労働や強制労働など重大な人権侵害につながる恐れのある紛争鉱物とされる3TG(錫、タンタル、タングステン、金)以外でも、規制の対象となる鉱物や地域が拡大することが予想されています。このため日清紡グループでは、「責任ある鉱物調達」を人権デューデリジェンスの重要課題とし、2025年度は紛争鉱物(CM)・拡張鉱物(EM)・追加鉱物(AM)について、事業会社の調達担当者へのヒアリングを行い、現状調査を実施しました。
CM、EM使用実績があるグループ会社では、客先への報告書(鉱物の使用状況をサプライチェーン全体で調査・報告するための標準化テンプレート)を提出するなど、適切に対応していることを確認しました。引き続き、鉱物調達に関わる情報の全社共有、鉱物調達担当者へのヒアリングを通じて、グループ内の鉱物調達体制の整備を進めています。
人権尊重の理解促進のための教育・啓発活動(海外含む)
日清紡グループでは、実効的な人権デューデリジェンスの取組みを進めるためには「人権を尊重する企業の責任(「ビジネスと人権」)」についての本質的な理解が必要と考えています。2025年度は以下2つの研修を中心に、グループ内の教育を行いました。
グループ人権研修
毎年実施している「グループ人権研修」として、2025年度は「石井社長からの人権メッセージ」をグループ全社に展開しました。社長自らが人権尊重の重要性を語ることで、経営層としてのコミットメントを明確にしています。なお、本研修は新規入社者向け教育としても継続して実施します。
人権トップ層研修
毎年実施している経営層対象の研修として、SDGパートナーズ有限会社CEOの田瀬和夫氏による講演会を実施しました。今回は「環境と人権の不可分な関係」と題し、環境と人権を一体的に捉えた上での共通点や課題をふまえ、サプライチェーン全体を視野に入れながら、持続可能な経営と新たな価値創出への道筋をつくる実践のヒントを講演いただきました。
経営層だけでなく、各社の管理職層も含めて約800人が受講しました。
今後も人権を尊重した経営を推進するため、経営層の理解深耕につながるテーマで研修を実施します。
今後の計画
2026年以降は、以下を中心に人権デューデリジェンスの取組みをさらに進めていきます。
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人権リスクの抽出と対応
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人権に関するガイドラインの展開
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苦情処理メカニズムの整備と強化
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責任ある鉱物調達に関する体制整備
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人権尊重の理解促進のための教育(海外含む)