基本的な考え方
日清紡グループは「従業員と組織の健康づくりの推進により、一人ひとりが一層活躍できる環境の整備を通して、社会に必要とされ続ける企業グループを目指す」ことを健康経営の推進と捉え、各グループ会社において活動をしています。
推進体制
日清紡グループでは、日清紡ホールディングス(株)の取締役経営戦略センター長を責任者とする体制のもと、健康経営をグループ全体で推進するために、2018年度からグループ会社各社の健康管理部門の担当者による「グループ健康管理部門会議」を発足させ、毎年9月に会議を開催し統一的な活動を推進しています。
各社の健康施策は常に共有されており、各社の独自性も尊重しつつ活動しています。
サステナビリティ推進計画に基づく健康経営を推進するために、目標・KPI※ を管理し対策を講じています。
※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
健康経営
日清紡グループは、グループ全体で健康経営を推進する取り組みを行っています。具体的には、次の項目 を三本柱として活動を進めています。
- ①「個人の健康」:健診結果に基づき、生活習慣の改善施策を実施
- ②「組織の健康」:健診結果の傾向を組織単位で見える化し、課題を抽出
- ③「安全配慮義務の確実な履行」:就業制限の基準をグループ全体で統一
健康経営施策のフレームワーク
各社での取り組みに対し、経済産業省が制度設計し、日本健康会議が選定する「健康経営優良法人認定制度」において、大規模法人部門で9社が、中小規模法人部門で4社が、「健康経営優良法人2024」に認定されました。
日清紡グループの具体的な取り組み
「第5期サステナビリティ推進計画」では、従業員の健康づくりを重点活動項目とし、健康経営の推進に取り組んでいます。①定期健康診断後の精密検査受診率85%以上、②ハイリスク者への保健指導実施率100%をKPIとしてPDCAを回しながら目標達成に向け活動を進めています。2023年度は2022年度に引き続き、「健康経営施策によって職場と従業員の健康を守り、生産性を高める」との考え方に基づいて、以下の諸活動を推進しました。
- ①生活習慣病有所見者比率の改善
- ②ストレスチェック総合健康リスク低減
- ③従業員の健康状態を数値化した、健康管理レポートの作成
- ④グループ会社の産業保健スタッフが横断的に連携して、健康に関する啓発活動を実施
生活習慣の改善
定期健康診断結果を踏まえ、日清紡グループでは「喫煙率削減」「運動習慣の推進」「睡眠で休養が十分とれている人の割合を増加」に向け、各グループ会社で従業員の生活習慣の改善に取り組んでいます。
「喫煙率削減」の活動
- ①屋内喫煙室の撤去、喫煙所利用時間の短縮など喫煙所の運用の見直し
- ②禁煙外来費用補助、禁煙報奨、禁煙サポートサービス補助
- ③産業医などによる禁煙セミナーの実施
- ④世界禁煙デー・禁煙に関するポスター掲示
「運動習慣の推進」の活動
- ①歩くこと(運動すること)を推奨するイベントの開催
- ②スポーツイベント(ボーリング大会など)の開催
- ③産業保健スタッフによる体験型健康展の開催
- ④民間事業の運動体験に参加(インストラクターによるWEBでの運動体験セミナーやヨガ教室など)
- ⑤階段利用促進
- ⑥職場体操実施
- ⑦ウォーキングコースの紹介など運動に関する情報提供
- ⑧産業医などによる運動習慣に関するセミナーの実施
「睡眠で休養が十分とれている人の割合増加」の活動
- ①交替勤務と心身の健康管理や睡眠に関する情報提供
- ②産業医などによる睡眠に関するセミナーの実施
メンタルヘルスケア
日清紡グループでは、各グループ会社において以下の取り組みを実施しています。
- ①高ストレス者への産業医面談
- ②上司によるメンタルヘルス面談の実施
- ③メンタルヘルスカウンセリング
- ④仕事のストレス判定図を活用した職場改善
- ⑤ストレス対策、メンタルヘルスに関する情報提供
- ⑥ハラスメントに関する情報提供
- ⑦職場のコミュニケーション推進に関する情報提供
- ⑧産業医などによるメンタルヘルスに関するセミナーの実施
各健康保健組合と会社によるコラボヘルスの推進
会社の健康経営推進に併せ、健康保健組合も会社と連携して、加入者の生活習慣改善や疾病予防に取り組んでいます。
コラボヘルスの具体例は以下のとおりです。
- ①特定保健指導の動機付け支援
- ②禁煙外来や禁煙サポートサービスの費用補助
- ③ウォーキングイベント共催
- ④インフルエンザ予防接種費用補助
- ⑤歯科健診
女性の健康関連課題への理解促進
女性の健康関連課題への理解を高め女性が働きやすい環境を整備することが、女性のパフォーマンス向上に結びつくと考え、管理職に正しい知識を持ってもらうことを目的として、2023年度に女性の健康関連課題に関するeラーニング教育を実施しました。2024年度は更年期障害をテーマに啓発活動を推進する予定です。
グループ会社における活動事例
役員向け健康講演会
日本無線(株)では2023年9月に、産業医が講師となり、「健康経営は当社にとってどんなメリットがあるか」というテーマのもと、健康経営の4つのエッセンスの内容について講演会を実施しました。
- ①従業員の健康管理を経営的な視点で考えることの重要性
- ②健康経営を戦略的に実践することの意義
- ③企業理念に基づいて従業員への健康投資を行うことが、従業員の活力向上につながること
- ④健康経営の結果として、業績向上が期待できること
産業医からは、「役員はこの講演をポジティブに受け止め健康経営の重要性を理解した様子で、講演後には、他社の休業対策、プレゼンティーイズムの重要性、昼休みの睡眠の必要性などについて多くの質問があり、役員が健康経営について真剣に考えていることが伝わってきた」との感想がありました。
このような講演会を継続的に実施していくことで、役員が健康経営の重要性を共有しながら、会社全体で健康経営に取り組む意識を高めることにより、より良い職場環境の実現に向けた取り組みを目指します。
ウォーキングイベント
日本無線(株)では、従来実施していた「+10ウォーキング健康増進イベント」に代わり、2023年9月から年間イベントとしてウォーキングイベントを開催しています。いつでも気軽に登録、参加することが可能で、参加者は毎月の歩数によってベネフィットポイントを獲得できます。(1カ月平均12,000歩:500ポイント、9,000歩:400ポイント、7,000歩:300ポイント)
ウォーキングイベントは、健康促進、ストレス軽減、社交的な交流、モチベーションの向上、健康の自己管理化といった利点があります。また、他の参加者との交流によって新しい友人を作る機会にもなり、個々の健康管理にも役立ちます。今後もウォーキングイベントを継続し、従業員の健康増進に向けた新たな取り組みも実施したいと考えています。
リラクゼーション「YOGA」セミナー
長野日本無線(株)では、「心身のリラックス・リフレッシュ」をテーマに初めてYOGAセミナーを開催しました。同社グループ従業員計86名が参加し、ゆったりとした呼吸と動きで心身ともにリラックスできました。
ヨガ初体験の参加者からは「ヨガは女性というイメージがあって興味がなかったが、体験できてよかった。現在では動画配信サイトで動画を見ながら毎朝15分ヨガに取り組んでいます。」という嬉しい感想もありました。また、「初めて“緩む”という感覚がわかった。」という声もありました。
普段、業務に追われていると心身ともに緊張状態で過ごすことが多くなりますが、交感神経と副交感神経のオン・オフが上手にできるようになるとストレス解消や仕事のパフォーマンス向上につながります。運動が難しい方でも、ヨガやストレッチは日常に取り入れやすく、筋力低下や転倒予防にも役立ちます。今後も、従業員のためになるセミナーを企画・開催していきます。
ベジチェック測定会
日清紡マイクロデバイス(株)では、同社の健康経営(ヘルシーカンパニーの実現)の施策のひとつとして、自身の推定野菜摂取量を確認することで食生活の改善や野菜摂取への行動変容につなげることを目的に、「ベジチェック測定会」を実施しました。
手のひらをセンサーに当てると約30秒で推定野菜摂取量を測定できる「ベジチェック測定器」を1カ月間レンタルし、各事業所で自由参加の測定会を実施した結果、1,121名(全従業員の約50%)が参加しました。参加者からは、「野菜摂取レベルや推定野菜摂取量が数値で見えるのが良い」「各部署で数値を競い合うなどコミュニケーションが図られた」「定期的な測定を実施して欲しい」などの意見がありました。
今後も同社の健康経営戦略マップをベースに、従業員へのアンケートなどでニーズを確認しながら、健康増進に向けた活動を企画・実施していきます。
従業員の衛生促進プロジェクト
タイのNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.は、従業員の健康促進の目的として2023年度、1月から12 月までの衛生促進プロジェクトを実施しました。
本プロジェクトでは、工場看護師による毎日の血圧の監視と記録や、ストレスマネジメントなどの健康状態に関するアドバイスが提供されました。さらに、2023年1月には、ランプーンのハリプンチャイ・アヌソーン病院の看護師と理学療法士のチームにより、筋骨格系疾患などのさまざまなトレーニングコースを開催しました。
また2023年5月には、ストレスの問題を持っている従業員に対して、労働安全衛生部がメンタルヘルスに関する研修を開催しました。安全で楽しく働くために心と体の健康を管理・配慮することについてビジネス人材開発センターのニコム・オンラマイ教授から指導がありました。
2023年7月には、仕事の疲労を軽減するために筋肉の弛緩に関する研修を開催しました。 Hariphunchai Memorial Lumphun病院から看護師と理学療法士のチームをお招きし、従業員に対して講義が行われました。病気のリスクを減らして免疫力を高めることや、正しい運動方法、疲労の要因、仕事や日常生活によってもたらされる可能性のある症状の予防方法についての講義のほか、眼球周辺マッサージの実践などがありました。
また、2023年12月には、専門職レベルの安全管理者(Safety Officer)が法律に基づき、高温や大きな騒音の機械を取り扱う従業員や、化学物質を取り扱う従業員向けに職業病および環境疾患に関する研修を開催しました。
健康増進プログラムによる作業者の健康管理
韓国のSaeron Automotive Corporationでは、2022年の健康診断結果において要観察者・有所見者となった従業員に対し、2023年1月から毎月2回、保護具の抜き打ち点検を実施しています。
健康診断の結果に基づき必要な保護具を分類・管理していますが、聴力に所見があった作業者には、聴力保存プログラムを実施するとともに耳栓だけでなく耳あてを支給して着用するようにしています。
また、2023年2月から健康診断要観察者・有所見者に対して、健康相談を行っています。 当初は、地元の会社指定病院(天安忠武病院)から医師と看護師が同社を訪問して相談を受けるようにしていましたが、有所見者の相談率が低調だったため、要観察者・有所見者には、年1回以上健康相談を受けることを義務付けています。
なお、会社指定病院からの医師および看護師による健康相談は、2023年の対象者全員に実施されました。
健康フェア
アメリカのNisshinbo Automotive Manufacturing Inc.では、健康フェアを毎年開催しています。
健康フェアは、同社の従業員への健康面での支援や、予防に関する基本的な情報提供、基礎検診の提供を目的とした活動です。新しいウェルネス・イニシアチブを立ち上げ、健康教育情報を共有し、予防検診や予防接種を実施することで、健康リスクに対する意識も高めています。
同社では、健康フェアの開催を通して健康意識の向上を図るとともに、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの予防接種を同社従業員に実施したほか、健康啓発活動や検診、血圧や血糖値、健康保険に関する相談なども行われました。また、同会場で開催されたファーマーズ・マーケットでは新鮮な農産物が販売されました。参加した従業員は各販売者をまわって自作のヘルス・カード・パスポートにスタンプを押し、すべてのスタンプが埋まると新鮮な野菜や果物と交換することができるイベントを行いました。
メンタルヘルス面談
日清紡メカトロニクス(株)では、年に1度、海外拠点へ出向している従業員も含めた全従業員を対象として、上司と部下とのメンタルヘルス面談を実施しています。
日頃のラインケアに加えて個別面談を実施することは、コミュニケーションの促進にも役立っています。面談では仕事上の悩み相談はもちろんのこと、会社生活における悩み、職場での人間関係や最近の関心事、休日の過ごし方など幅広くコミュニケーションを取る機会としています。業務を離れて1対1で上司と会話をする機会は、お互いの理解を深めることにつながり、職場内のコミュニケーション向上に役立っています。また、面談を通じて気になることがある社員には、産業医と連携してメンタルヘルス不全の防止や早期発見に役立てています。
Female Health Trainingの開催
インドのNisshinbo Mechatronics India Private Limitedでは、女性従業員が増えてきたことを受け、産婦人科医師を外部講師として招いて「Female Health Training」を2023年4月に開催しました。
女性の健康とウェルネスに関する指導や、POCS(多嚢胞性卵巣症候群)など女性特有の病気の原因や症状について説明していただき、衛生管理と健康的なライフスタイルを維持する重要性を学びました。適切な食事と栄養摂取や、適度な運動に加え、適切な睡眠・休息をとり、ストレスを抱え込まないこと、それらにより健康な身体を手に入れ、充足した毎日を送れるようにという指導をいただきました。