基本的な考え方
日清紡グループは、「行動指針」に「安全が全ての基本」を掲げ、事業活動の全てにおいて安全を最優先にしています。
また、日清紡ホールディングス(株)の「リスクマネジメント規定」の中で、災害などの緊急事態発生時の行動指針を以下のように明記しています。
緊急事態発生時の行動指針
- ①緊急事態が生じた時は、その対応を通常の事業活動に優先する。
- ②当社グループの顧客(間接的な顧客も含む)・役員・従業員・仕入先・近隣住民・その他関係者の安全と健康の確保を最優先とする。
- ③関係者の安全・利益に関する情報を積極的に開示する。
危機管理体制
日清紡グループは、地震・火災など緊急事態発生時に速やかに対処するため、「リスクマネジメント規定」の中で緊急事態対応を定めています。緊急事態発生時の体制は、日清紡ホールディングス(株)に対策本部として、緊急事態対策本部と緊急事態対策チームが置かれます。緊急事態対策本部は社長を対策本部長とし、本部員は当社の執行役員から任命されます。緊急事態対策チームは、経営戦略センター長をチーム長として、チーム員は本社在籍者の中から任命されます。緊急事態対策チームには情報収集班、安否確認班、コミュニケーション班と事務局が置かれます。
<緊急事態発生時の体制>

<対策本部の構成と役割>
日清紡ホールディングス 対策本部 |
緊急事態対策本部 | 日清紡グループ全体の経営判断・意思決定 |
緊急事態対策チーム | 日清紡グループの被害状況の情報集約 | |
日清紡ホールディングス BCP本部員 |
BCPを発動するための諸情報の収集 | |
自衛団本部<本社事業所> | 本社事業所の被災後の初動対応 | |
各社連絡担当者 | 日清紡グループ各社の被害状況の情報集約 |
<緊急事態対策本部と緊急事態対策チームの構成と役割>
構成 | 主な役割 | |||
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対策本部 | 対策本部長 | 日清紡ホールディングス社長 |
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対策本部長補佐 | 経営戦略センター長 |
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対策本部員 | 日清紡ホールディングス執行役員より任命 |
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対策チーム | 対策チーム長 | 経営戦略センター長 |
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対策チーム員 | 情報収集班 | 日清紡ホールディングス本社事業所在籍者より任命 |
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安否確認班 |
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コミュニケーション班 |
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事務局 |
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緊急事態対策本部は、国内の主要拠点のいずれかで震度6弱以上の地震が発生した場合などに原則として設置します。その他の場合の対策本部の設置については、対策本部長である社長が決定します。
日清紡グループの具体的な取り組み
災害BCPの取り組み
日清紡グループは、事業継続の観点から、大規模地震などの緊急事態発生に備え、従業員の安否確認と災害からの早期復旧に必要な情報連絡訓練を、毎年実施しています。迅速かつ確実に安否確認を実施するため「安否確認・緊急連絡システム」をグループ内で開発し導入しています。
また、日清紡ホールディングス(株)と当社グループの主要な事業所では、自衛消防団を組織し、防火設備などの定期点検や放水訓練などを実施しています。また、年に1度の防災査察を、60年以上にわたり継続し、災害発生直後の対応力強化と初動体制の整備を図っています。
2023年度は、安否確認・緊急連絡システムに、安否情報の入力を依頼する機能(プッシュ通知機能)を追加しました。大規模災害発生に備えて、会社単位で入力・応答の訓練を行うなど、従業員の安否確認の迅速化に向けて更なるレベルアップを図っています。
また、2023年度のBCM訓練では、災害による電源喪失時の緊急事態対策本部の立ち上げ・機能維持を想定して発電機やポータブル電源を導入し、初動対応時の電源と通信手段の確保の方法を緊急事態対策本部員とチーム員に対して説明を実施しました。緊急時に必要な設備については、今後も継続して整備していく計画です。
調達サプライチェーンにおけるBCPの取り組み
調達サプライチェーンにおけるBCPについて、サプライヤーさまへのアンケート項目として状況をお問い合わせしています。2023年度の結果ではBCPの取り組みが不足していると捉えられているサプライヤーさまが多かったですが、2022年度と比較すると僅かにその取り組み活動が推進されている傾向が見られました。アンケート結果のフィードバックと支援を継続的に実施し、日清紡グループのサプライチェーンBCP向上を目指します。
グループ会社における活動事例
災害発生時のサプライチェーンにおけるBCP活動の取り組み
日本無線(株)では、有事(天災、疫病、火災、暴動、テロ、戦争、内乱など)の際、迅速な情報収集や代替検討をするために、サプライチェーンデータベース構築(最新性維持)に取り組んでいます。
この取り組みを通じて、製品の安定供給を果たすとともに、お客さまからの信頼獲得を目指しています。
従来、有事の際には全サプライヤーさまへ調査依頼を行っていましたが、工場の所在地データを把握することにより、ピンポイントでの調査が可能となりました。有事の際24時間以内の1次回答率(影響有無)が100%となり、お客さまへの回答も迅速に対応することが可能となっています。データベース最新性の維持に関しては、2年に1回を更新のタイミングとしてサプライヤーさまへ調査を行い、更新を行っています。
今後も、お客さまからの信頼を守るためデータベース最新性の維持に努めていきます。
水害発生を想定した訓練を実施
日本無線(株) 長野事業所では、水害による建物への浸水に備えて、現在1,470袋の「水嚢(すいのう)」を備蓄しています。
水嚢は、河川の氾濫や大雨による建物内への浸水を防ぐために建物の入り口に設置し、土嚢のような役割を果たします。長野事業所では、構内の浸水危険度を示すハザードマップを作成し、浸水リスクの高い建物を対象に、毎年の防災訓練の一環として水嚢を設置する訓練を行っています。訓練では、地下水を水嚢袋に注水する作業やバケツリレー方式で水嚢袋を運ぶ作業など、手順を一つひとつ確認しながら行っています。訓練場所は環境試験棟や大型機器工場など、毎年異なる建物で行われ、当該建物に勤務する従業員を含めたメンバーが参加します。
継続的な訓練により、水害が発生した場合の迅速な初動対応を確認し、浸水リスクの低減を図っています。

災害時想定訓練の実施
日清紡精密機器 (上海) 有限公司では、災害時想定訓練として、全従業員による避難訓練、消防訓練、緊急連絡網による伝達予行訓練を実施しています。
避難訓練では、日中の避難訓練に加え、夜間避難訓練や担架を使用した救助訓練も実施し、いつでも全従業員が安全に避難できるよう訓練しています。消防訓練では、主に新入社員を対象とした消火器を使用した初期消火訓練や、消火栓を使用した消火訓練を実施し、万が一火災が発生した際にも、迅速かつ適切な初期対応ができるよう訓練しています。緊急連絡網による伝達予行訓練では、想定した災害事象に関する情報が、緊急連絡網に従い、迅速かつ正確に経営責任者にまで報告される予行訓練を実施しています。
これらの訓練を通じて従業員の防災意識の向上を図り、また訓練実施により判明した課題への対策を行うことで、災害発生時の初動体制の強化を図っています。


地震を想定した避難訓練、BCP訓練
(株)エクセル東海では年に1回、全社員を対象に防災訓練を実施しています。
今回は従来行っていた避難訓練に加え、怪我により逃げ遅れた人が発生したケースを想定しました。避難後の点呼で1名の不明者が発覚し、同時に7つの建屋をそれぞれの担当者が捜索する中、要救助者を発見したという想定です。無線による相互連絡により捜索隊が現場に集合し、車いすで避難・搬送をしました。この仕掛けは関係者に知らせない状態で行なわれましたが、捜索から搬送までの一連の動作は比較的スムーズにできたと考えています。
当避難訓練の後、地震を想定したBCP初動訓練を実施しました。各班(本部、総務班、情報班、救護班、復旧班)がほぼ計画通りに役割をこなしましたが、本来の目的である「被災した建屋・設備を復旧させ、生産を再開する」という部分の計画が甘かったことが反省点です。次回訓練はこの点を重点的に修正する予定です。


購入原料の供給リスク調査
日清紡ケミカル(株)では、全購入原料について、サプライヤーさまの生産場所、生産のタイミング、在庫場所、在庫の分散状況、サプライヤーさまが購入する原料の複数化の進捗、BCP計画の有無を調査しました。
サプライヤーさまがほかの原料・ほかの製造者に置き換えが不可能な原料については、在庫数量の把握や定期修理の実施時期の調査に加え、製造設備の耐震強度や災害発生時の復旧期間も確認しています。さらに、製造設備と在庫保有場所が近接している場合、受け入れ工場である徳島事業所との経路上に在庫保有場所を移動することを協議しています。
輸入原料は、スエズ運河が武装組織の航行妨害により航行不可であるほか、パナマ運河の渇水により航行制限が発生しているため、欧州製原料と米国製原料の納期が長期化しています。製造への影響が生じないよう、発注する時期を1カ月以上早くするなどの措置を取っています。
災害リスク対応訓練
日清紡テキスタイル(株)では、毎年9~11月の期間に全社の防災査察が実施されます。防災査察の時期に、全従業員を対象に各事業所で想定した地震避難訓練、初期消火訓練、重油漏洩対応訓練および消防通報訓練を実施しています。
吉野川事業所での災害リスク対応訓練は、地震避難訓練とテキスタイル加工機からの織物生地火災想定で初期消火訓練を実施しました。また、地震避難訓練では例年通りながらも、世代交代を意識し、さまざまな人が新たな役割を分担できるよう、新たな体制で行いました。織物生地火災想定の初期消火訓練では、他職場からの応援連携を確認しながら、消火器による初期消火に続き、屋内外の消火栓からの放水訓練を実施しました。また、新入社員を主にしながらベテラン社員も含め、消火器訓練を実施し、消火器の種類や扱い方の説明や実際の体験訓練を行いました。

