品質・顧客満足度向上の取り組み

基本的な考え方

日清紡グループは、イノベーションにより独創的な新しい価値を創造し続け、豊かな社会づくりに貢献することを目指しています。

お客さまの求める機能と品質を備えた製品・サービスを適時に安定的にお届けするとともに、優れた品質でお客さまに満足と信頼をいただくよう努めています。お客さま起点の価値創造に取り組んでいます。

推進体制

日清紡グループはお客さまにご満足いただく製品・サービスを提供するために、各事業の製造部門および品質保証部門が、それぞれの製品に求められる、品質・顧客満足度向上の活動を推進しています。サステナビリティ推進計画における「顧客満足度向上施策の継続推進」を達成するために、日清紡ホールディングス(株)の取締役経営戦略センター長を責任者とする体制のもと、経営戦略センター サステナビリティ推進室 品質保証グループが目標・KPI を管理しています。

※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標

日清紡グループの具体的な取り組み

「第5期サステナビリティ推進計画」では、品質・顧客満足度向上を重点活動項目として取り組んでいます。

2023年度は、「第5期サステナビリティ推進計画」に従い、KPIとして①PL法違反件数 0件、②各セグメントの品質クレームの状況把握、共有を掲げ、PDCAを回しながら目標達成に向け活動を進めました。

PL法違反・クレーム状況

2023年度、日清紡グループ全体において製造物責任(PL)法違反事例はありませんでした。クレーム・苦情などの判断は、業界や業態などによって異なるため、当社グループ内各社ごとに毎年の推移を確認しています。クレーム件数が直近の3年間で連続して増加している会社は1社もなく、各社とも減少の傾向にあります。

品質に関する認証の取得

日清紡グループでは、国際標準化機構(ISO)が定める品質マネジメントシステム「ISO9001」の認証を、2023年9月現在、40社48組織で取得しています。また、業界固有の要求事項に対応すべく、30社34組織にて自動車産業品質マネジメントシステム規格「IATF16949」の認証を取得しており、医療関連の機器を製造している3社は、医療機器品質マネジメントシステムの国際規格である 「ISO13485」の認証を取得しています。

グループ会社における活動事例

品質学習ルームの整備

日清紡マイクロデバイス(株)では、品質問題の早期解決を図る“特別消防隊”の設置や、クレームなどの品質問題に対して確実な是正・予防処置活動を行う“品質会議”を実施しています。この活動により、品質問題に関する真因の究明、対策・再発防止、水平展開を確実に行い、品質改善に努めています。

さらに過去の品質問題に関して、

  • ①同じ失敗を二度と起こさない。そのために、品質問題が起こるとどうなるかを伝承する。
  • ②人材を育成し、後世に財産を残す。そのために、品質問題から得られた教訓を伝承する。

ことを目的に、同社やしろ事業所では”品質学習ルーム”を設置しています。この部屋では、ポスターや現物を常時展示し、伝承教育の場として用いています。川越事業所でも伝承教育を実施するため、常設ではありませんが、移動式の展示環境を整備しました。

今後、両事業所において、過去の教訓を伝承し、よりよいモノづくりに活かしていきます。

Aやしろ事業所 品質学習ルーム
やしろ事業所 品質学習ルーム
川越事業所 品質関連展示
川越事業所 品質関連展示

持続的な品質改善、開発品質検証の強化

韓国のSaeron Automotive Corporationでは、不良品顧客流出ゼロ達成のために再発防止策を立案し、Error Proof(ポカヨケ)実施活動を継続的に実施しています。

新規アイテム量産品の品質確保のために、開発段階から量産先行を行い、事前に不具合を抽出して改善しています。 2023年は、欧米の自動車企業新規顧客向けの製品について、量産開始前に全従業員に対して品質意識を高める教育を実施しました。

また、工程品質改善を継続して行うために、類型別改善課題および目標を設定して取り組んでおり、拠点ごとに品質交流会を実施して不具合類型についての情報を共有し、全拠点で改善活動を横展開することで、全体での品質向上を図っています。

品質顧客満足度向上キャンペーン
品質顧客満足度向上キャンペーン

品質向上活動の品質月間

日清紡賽龍 (常熟) 汽車部件有限公司では、2015年から品質月間を制定した活動を実施しており、2023年で9回目となりました。

品質月間では、スローガンを募集し、大会で1~3等賞を表彰しました。また、各職場の作業者と管理者から品質改善提案を募集して、金、銀、銅賞の表彰を行いました。2023年は、各作業工程で作業指導書に基づいて、工程保証度の点検を初めて実施し、作業間違いや異品混入、作業しづらい点などを発見して、改善を実施しました。

その他、過去クレームの点検や、工程能力指数とPFMEA の点検などを実施しました。品質月間の活動は、同社の全従業員の品質意識や改善意識の向上につながり、品質に関心を持つ雰囲気づくりが、未然防止や異常処置強化などの体制強化にもつながっています。

同社の品質管理体制の向上に寄与する品質月間の活動を継続して行い、お客さまに高品質で安全な製品を提供することで、満足度と信頼性の向上をこれからも図っていきます。

※ 製造工程における不具合を想定して、影響を分析評価し、対策を講じる解析手法

品質月間表彰の様子
品質月間表彰の様子
現場での点検
現場での点検

品質保証につながるグループカイゼン活動の推進

日清紡メカトロニクス(株)では、品質問題の防止や生産工程の不良削減、間接業務の効率化で成果があったカイゼン事例を共有化するため、南部化成(株)の各社や日清紡精機広島(株)をはじめ、海外拠点も含めたグループ品質保証会議やカイゼン活動発表会を開催しています。

この数年のグループカイゼン活動は特にデジタル化に力を入れています。2020年よりデジタル化推進プロジェクトチームを結成し、2023年には同社美合工機事業所品質保証部にデジタル推進課を新設しました。同課では内製によるデジタルツールの開発、実証を進めており、グループ全体へデジタル改善を発信し続けています。

2023年末時点で、同社および南部化成(株)の各社、日清紡精機広島(株)などの生産現場に、10件以上のAI異常検知装置を設置しています。不良削減や不具合流出防止に大きく貢献しており、お客さまからも高い評価をいただいています。

ヘアネット着用確認アプリ画面
ヘアネット着用確認アプリ画面
溶着検査アプリ画面
溶着検査アプリ画面

品質向上の中核「再発防止ルーム」の取り組み

九州南部化成(株)の「再発防止ルーム」は、品質向上の中心的な取り組みの場です。実際に発生した不具合を丹念に分析し、その根本原因やお客さまへの影響を真剣に検討する場として設置し、運用を開始しました。「再発防止ルーム」は、不具合がなぜ発生したのかを徹底的に追求し、同様の問題が再び発生しないようにするための具体的な改善策を模索する場でもあります。

また、製造現場だけでなく、総務経理などの間接部門も月に一度訪問し、全社的な視点から品質問題に取り組むことができる環境を提供しています。この取り組みにより、品質向上が単なる製造現場の責任ではなく、全社員の共通の責務であることを認識し、連携を深めています。

さらに、新入社員や復職者に対しても、このルームで教育を行っています。自動化や機械化が進んでも、品質管理には人の洞察力や経験が不可欠であることを忘れないようにし、「再発クレームゼロ」を目指しています。

再発防止ルーム
再発防止ルーム

化学品事業グループカイゼン活動

化学品事業グループでは、日清紡ケミカル(株)の断熱、カーボン、機能化学品、燃料電池の4事業部に加えて、事業統括部、子会社の(株)日新環境調査センターの6つのチームにて、「全員参加によるカイゼン活動」をモットーに、生産現場でのカイゼンや、普段の業務の効率化などを目的としたカイゼン活動を実施しています。毎年12月頃には、各チームの年間のカイゼン活動の成果を共有化するために、カイゼン発表会を開催しています。

2023年度は、「手作業の自動化」「製品原価分析などによる原価低減」「業務改善による品質の向上」「安価な代替原料の検討」「IT技術の活用による業務効率化」などの活動によるカイゼンの成果の発表がありました。カイゼン発表会では、ボードメンバーによる審査が行われ、日清紡グループ全体でのカイゼン発表会に参加する代表チームを選考しています。また、発表会で共有された各チームの良い活動を自分達の職場に横展開することができないか検討し、さらなるカイゼンに活用できるよう取り組んでいます。

品質向上への取り組み

(株)日新環境調査センターでは、お客さまから持ち込まれた試料の分析のほかに、分析試料を現地で採取するサービスも行っています。試料採取用の機材は天井材や壁材を採取する電動ドリルなどの工具から、周辺の空気を採取するための吸引ポンプなど、機器も数多くあります。公定法に従って正しい機材と正しい方法で試料採取・分析することで正しい結果が得られます。

同社は分析や採取そのものについてはプロですが、細かな不適合の発生や業務の効率化という面ではまだ弱い部分が見られます。不適合発生の抑制のためにも業務フローにそって品質パトロールを行い、トレーサビリティの確認や現状潜んでいるリスクを見つけ、不十分な部分を強化することでお客さまに信頼をいただける品質の維持・向上に努めていきます。

また、現場採取時の手書きデータから電子データの記録へ「eYACHO」の活用を進め、業務の効率化とデータ転記の正確性向上に取り組んでいきます。

品質パトロール
品質パトロール

自社店舗とECサイトを融合させたOMO戦略

コロナ禍以降、消費者の生活様式は変化し、急速なデジタル化が進んでいます。こうした中、東京シャツ(株)では、自社店舗とECサイトを融合させたOMO(オンラインとオフラインを融合させたサービス)戦略に取り組んでいます。

同社のOMOサービスの内容は、お客さまがネットで商品を注文した際に倉庫に在庫が無くても、近くの店舗からお客さまの自宅まで商品を発送する「店舗出荷」のほか、お客さま指定の店舗で商品を受け取れる「店舗受取」、お客さまが店舗で決済できる「店舗支払」、店舗にいらしたお客さまのご要望の商品が無い場合に店舗に備え付けのタブレット端末で倉庫や他店舗にある商品を手配する「店舗受注」の4種類です。

2023年は全体売上の9%強のお客さまがこのいずれかのOMOサービスを利用されました。同社ではお客さまにECサイトでの手軽さと店舗での丁寧な接客の両方の購買機会をご提供することで、お客さまの利便性と満足度の向上に取り組んでいきます。