基本的な考え方
日清紡グループは、持続的な成長と企業価値の向上のため企業理念に立脚したコーポレート・ガバナンスの確立に取り組んでいます。
また、行動指針に「コンプライアンスの徹底」を掲げ、社会ルール・企業倫理など、広い範囲において常に公正で誠実に行動することを明記しており、体制整備のほか、社員への教育を実施しています。
推進体制
日清紡ホールディングス(株)は「日清紡グループ企業倫理規定」に基づき、取締役社長を企業倫理に関する最高責任者とし、社長直属の機関として「企業倫理委員会」を設置し、日清紡グループ全体のコンプライアンスに係る事項に対処しています。企業倫理委員長は当社の執行役員から任命し、企業倫理委員は経営戦略センターの室長以上から任命します。
また、法令違反の疑いのある行為や違反事実の早期発見・再発防止を図ることを目的として「企業倫理通報制度」を設け、社内外からの通報を受ける体制を整えています。グループ内の従業員の場合には、企業倫理委員のほか、社外の顧問弁護士へも直接通報できます。通報者に関する秘密を厳守するとともに、通報者に不利益が生じないように配慮されています。通報された内容は、企業倫理委員会で適切に対処しています。
サステナビリティ推進計画において「コンプライアンス意識の向上」、「企業倫理通報制度の運用」という目標を掲げており、目標・KPI※ を設定して進捗をモニタリングしています。
※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
日清紡グループの具体的な取り組み
2023年度は「第5期サステナビリティ推進計画」に従い、コンプライアンスの徹底を重点活動項目として取り組みました。KPIとして①管理職層のコンプライアンス教育受講率 100%、②企業倫理通報への対応率 100%を掲げ活動を推進しました。
コンプライアンス教育
日清紡グループでは、公正な事業活動の遂行を目指して階層別および職場別研修、海外派遣前研修などを通して各種コンプライアンス教育を実施しています。
2021年から導入したラーニングマネジメントシステムを活用して毎年新しい教育動画を公開し、繰り返しの教育を行っています。2023年度のコンプライアンス教育では、管理職層に特に心掛けてもらいたい内容(コンプライアンス問題が起こりやすい例、防止策、社内ルールなど)を組み込み、あらためてガバナンスの強化や管理者の倫理意識を高める動画を展開しました。
また、輸出管理教育の動画では、具体的な事例を題材にして注意点や対策を紹介する内容を担当者向けに展開しました。eラーニングなどの教育動画は、コンテンツが陳腐化しないように、定期的に見直しをしながら、教育自体が形骸化しないように努めています。
腐敗防止の取り組み
近年、贈収賄・腐敗行為に関する法規制の執行が国際的に強化され、摘発が厳格化しています。日清紡ホールディングス(株)は海外の関連法令への対応も念頭においた「腐敗行為防止のてびき」を策定し、海外グループ会社を含む全子会社に展開しました。このてびきは、日本の不正競争防止法第18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)はもとより腐敗の防止に関する国際連合条約(UNCAC)、国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関するOECD条約、米国連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)とそのガイドライン、英国賄賂防止法(UK Bribery Act)、中国の「不正競争防止法」、その他アジアの各国の刑法や汚職犯罪防止法など国際的な腐敗防止に関する条約や法令を対象としています。てびきの内容は適宜見直し、グループ全体で贈収賄防止対策に活用しています。
機密保持の徹底
設計・開発段階から連続する一連のサプライチェーンの中で開示を受けた知的財産や技術・ノウハウに関する情報などについては、機密保持契約を取り交わし、漏えい防止を図っています。また、営業秘密管理について毎年内部監査を実施し、適切に管理されていることを確認しています。
企業倫理通報制度
日清紡グループは、企業理念のもと、事業活動全般において全従業員に対し、企業倫理の浸透・定着に努めており、法令違反や企業倫理に反する疑いのある行為や違反事実の早期発見・再発防止を目的として、「企業倫理通報制度」を設けています。
本制度では、当社グループの従業員に限らず、広く社内外のステークホルダーの皆さまからの通報を受け付けています。当社グループにおける法令違反や企業倫理に反する事項、もしくはそれらの疑義行為にお気づきの場合には 、窓口まで相談・通報いただくようにお願いします。事実関係の調査のうえ、適切に対応します。匿名で相談・通報することも可能ですが、お名前・連絡先をいただいた方へは、対応策について、その概要を連絡させていただきます。
当社グループの従業員の場合には、社内の企業倫理委員のほか、社外の顧問弁護士へも直接通報できます。通報者に関する秘密を厳守するとともに、通報者に不利益が生じないように配慮されています。
当社グループ全体のコンプライアンスに係る事項は、日清紡ホールディングス(株) 社長直属の機関である「企業倫理委員会」で対処します。取締役会は、通報案件を含む企業倫理に関する重要事項について定期的な報告を受け、レビューを行います。
今後も真摯な取り組みを通じて企業の社会的責任を果たし、一層の企業価値向上を実現させていきます。
相談・通報先
日清紡ホールディングス株式会社 企業倫理委員会 受付窓口
電話・FAX番号 03-5695-8851
コンプライアンス違反件数・企業倫理通報件数
直近3年間に日清紡ホールディングス(株)の企業倫理通報窓口に通報された件数は以下のとおりで、全ての通報に対して通報者に係る秘密を厳守し、かつ通報者に不利益が生じない配慮を行いながら、企業倫理委員会で適切に対応し、違反と認められたものについては就業規則の定めるところに従った処分を行っています。
企業倫理通報窓口通報件数
2021年 | 2022年 | 2023年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
件数 | 事実に対する 懲戒処分 |
件数 | 事実に対する 懲戒処分 |
件数 | 事実に対する 懲戒処分 |
|
ハラスメント関係 | 3(1) | 0 | 3(3) | 0 | 3(1) | 0 |
法令違反 | 0(0) | 0 | 3(0) | 0 | 0(0) | 0 |
労務問題 | 1(1) | 0 | 2(1) | 0 | 1(1) | 0 |
会計上の不正 | 3(2) | 懲戒処分 2 | 1(0) | 0 | 0(0) | 0 |
その他(モラル違反など) | 2(0) | 0 | 8(2) | 0 | 7(2) | 懲戒処分1 |
通報件数 計 | 9 | 17 | 11 | |||
通報への委員会としての対応件数 計 | 9(4) 100%対応 |
17(6) 100%対応 |
11(4) 100%対応 |
※ 通報件数の( )内は、違反などの具体的な事実が確認できた数
グループ会社における活動事例
従業員のコンプライアンス意識向上
日本無線(株)では毎年、コンプライアンス教育として「JRC行動規準およびコンプライアンス研修」(eラーニング)を実施しています。
2023年は11月~12月に実施しました。研修内容は、実際に起きた事例や抵触の恐れがあるテーマを取り入れたもので、毎年少しずつその内容を変えながらテキストやテストを作成しています。また、過去の事例を重く受け止め、コンプライアンス遵守の意識を風化させないために、毎年11月第3火曜日を「コンプライアンスの日(2023年は11月21日)」と定め、啓蒙活動を行っています。2023年は例年の社長メッセージやポスター掲示に加え、従業員に内部通報アンケートを実施し、社内WEBにて公開しました。そこで得られた回答を参考に今後の内部通報体制のレベルアップにつなげていく予定です。
コンプライアンス意識の向上は従業員一人ひとりが意識して行動をとることが重要です。そのための取り組みを今後も継続していきます。
「Training Day」による従業員へのコンプライアンス教育
タイのNisshinbo Mechatronics (Thailand) Ltd.では、会社のイベントとして毎年10月に「Training Day」を実施しています。
午前中は、タイ人の中堅社員を中心とした改善活動の発表会を実施、タイ人管理者層が審査員となり優秀チームへの表彰を行いました。同イベントは毎年大いに盛り上がっており、従業員のモチベーションアップにもつなげています。また、午後には、日清紡グループの企業理念の説明やコンプライアンス教育、環境に関連した法律の教育に加え、2023年度にはIT教育も実施しました。パワーポイントを利用して、初めて聞く人でも分かり易い説明を行っています。
毎年この教育テーマは変更していますが、基本的には日清紡グループの企業理念に即した教育テーマを選定し、法令順守や社会貢献について、また、環境問題への意識改革だけでなく、従業員の満足度も上げることができるように心掛けています。
会社の行動基準を明確に示す機会として、今後も「Training day」の活動を継続させていきます。
会社・組合・株主による不正防止共同声明
インドネシアのPT. Standard Indonesia Industryでは、不正防止のために会社・組合・株主の3者が共同声明を行い、その声明文を掲示することにより社内に周知しています。
インドネシアは経済成長が著しい一方で、汚職や贈収賄などの不正行為が社会問題となっており、民間企業でも、不正会計や内部不正などの問題が顕在化しています。こうした状況を受け、3者が共同声明を行うことは、不正防止の取り組みを加速させる上で、下記のような重要な役割を果たすと期待しています。
- ①不正防止意識の向上:3者が協力して不正防止に取り組む姿勢を示すことで、企業全体における不正防止意識をより高めることができる。
- ②企業イメージの向上:企業のガバナンス体制の強化や透明性の向上をアピールする有効な手段となり、顧客からの高い評価につながる。
- ③不正行為の抑止効果:不正行為を行った場合、3者から厳正な対応を受けることが明確になるため、不正行為を抑制する効果が期待できる。
QRコードを活用した企業倫理通報制度の導入
ブラジルのNisshinbo Do Brasil Industria Textil LTDA.では、QRコードを活用した企業倫理通報制度を導入しました。
自身の携帯電話からQRコードを読み取ることで、だれもが容易に通報ができるようにしています。通報者が一般的に感じる通報のハードルを下げ、周囲を気にせず通報ができることを目的としています。そのため、QRコードも周囲を気にせず読み取ることができる場所へ掲示するなど配慮をしています。
この新たな通報制度を全従業員に対し説明すると同時に、管理者にはコンプライアンス教育を、主任層へはセクシャルハラスメント講習を実施しました。また、入社時教育にこの通報制度の説明と、セクシャルハラスメント講習を新たに加えています。
これからも誰もが働きやすい職場環境を目指し、企業倫理を一層高めるよう努めていきます。
出向者赴任時基礎研修の実施
日清紡企業管理 (上海) 有限公司では、グループの中国への新規赴任者が、ビジネスや生活上で必要な知識を身につけるために「出向者赴任時基礎研修」を実施しています。
内容は大きく分けて“健康・安全”と“中国でのビジネスマナー・生活ノウハウ”の2部構成です。
-
①健康・安全
安全管理は、中国滞在において必要な法律知識を中心に行います。基本的なパスポートの携帯や宿泊登記の必要性に加え、交通ルールや事故発生時の対応などです。また、昨年より緊急時の拘束の種類や対応方法についても、説明を開始しました。健康については、食事やお酒の留意点や救急診療体制の状況などを説明しています。 -
②中国でのビジネスマナー・生活ノウハウ
中国の概況や人々の特徴はもとより、ビジネスマナーについては、知っておくべき基本的な会食マナーや固有の記念日などを解説しています。生活ノウハウは、数多くある携帯アプリ中から必須の物の紹介と、その使用方法やそのほか地域コミュニティの説明などを実施しています。