基本的な考え方
日清紡グループは、「行動指針」に環境負荷への認識と配慮を掲げ、各国の法律や規則に則り、有害物質を適正に管理し漏洩防止措置をとるとともに、製品に含まれる物質についても適正な管理に努め、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。当社グループの環境目標に売上当たりのPRTR対象物質※1 排出量削減を掲げ、KPI※2 を管理して計画的に対策を講じています。
【主な対策】
- ①ISO14001の活動を通じ、各国の法律や規則に則り、有害物質に対し適正に管理・漏洩防止処置を実施
- ②生産拠点での、PRTR対象物質使用量削減と、PRTR対象物質排出量および移動量の削減
- ③精密機器事業などにおける、洗浄工程で使用する洗浄剤のPRTR非該当製品への変更
- ④化学物質漏洩を想定した緊急事態対応訓練の実施
※1 PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)対象物質:「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づく制度の対象物質で、排出量・移動量の届出を義務付けられている物質
※2 KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
推進体制については、「環境マネジメント」にあります「推進体制」の記載をご参照ください。
日清紡グループの具体的な取り組み
化学物質の取扱量
日清紡グループの2023年度PRTR対象物質取扱量実績は、2,390 tと前年度比9%減少となりました。繊維事業における、スパンデックスおよびエラストマーの生産量の減少にともない、メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネートの取扱量が減少しました。
PRTR対象物質取扱量のうち主要な物質は、ブレーキ摩擦材の原料であるアンチモンとクロムおよび三価クロム化合物、断熱材の原料であるイソシアネート類です。
事業別では、ブレーキ事業がグループ全体の52%を占めています。
PRTR対象物質取扱量の推移
※1 当社は2023年11月30日にブレーキ事業のうち子会社であったTMD FRICTION GROUP S.A.(以下、「TMD社」)の全株式を譲渡したことなどにより、TMD社他21社を連結の範囲から除外しています。このためTMD社他21社は2023年11月度までのデータを集計対象としています。
※2 当社は2023年12月27日に、HVJホールディングス(株)並びにHVJホールディングス(株)の子会社である(株)日立国際電気他7社を連結の範囲に含めましたが、2023年度データ集計の対象外としています。
事業別PRTR対象物質取扱量
化学物質の排出量
日清紡グループの2023年度PRTR対象物質の環境への排出量実績は、23.6 tと前年度比11%増加しました。売上当たり排出量は、0.044 kg/百万円となり、前年度比8%増加となりました。精密機器事業の南部化成(株) 裾野事業所において、塗料条件の標準化や塗布流量のデジタル設定化など、各種改善活動により塗料使用量が削減したものの、化管法※1 の改正によりPRTR制度の対象物質が変更・追加されたことで、PRTR対象物質の環境への排出量が増加しました。
※1 化管法:「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」
PRTR対象物質排出量と売上当たりPRTR対象物質排出量の推移
※1 当社は2023年11月30日にブレーキ事業のうち子会社であったTMD FRICTION GROUP S.A.(以下、「TMD社」)の全株式を譲渡したことなどにより、TMD社他21社を連結の範囲から除外しています。このためTMD社他21社は2023年11月度までのデータを集計対象としています。
※2 当社は2023年12月27日に、HVJホールディングス(株)並びにHVJホールディングス(株)の子会社である(株)日立国際電気他7社を連結の範囲に含めましたが、2023年度データ集計の対象外としています。
化学物質別の排出内訳
物質名 | 排出量(t) | 比率 |
---|---|---|
トルエン | 7.8 | 32.9% |
キシレン | 3.2 | 13.4% |
1-ブロモプロパン | 2.4 | 10.3% |
エチルベンゼン | 1.5 | 6.5% |
フェノール | 1.4 | 5.8% |
アンチモン及びその化合物 | 1.1 | 4.5% |
その他 | 6.3 | 26.6% |
物質別の排出量では、トルエンが最も多く33%を占めています。
事業別内訳では、トルエン、キシレン、1-ブロモプロパンを排出している精密機器事業の比率が41%となりました。
事業別PRTR対象物質排出量
※1 当社は2023年11月30日にブレーキ事業のうち子会社であったTMD FRICTION GROUP S.A.(以下、「TMD社」)の全株式を譲渡したことなどにより、TMD社他21社を連結の範囲から除外しています。このためTMD社他21社は2023年11月度までのデータを集計対象としています。
※2 当社は2023年12月27日に、HVJホールディングス(株)並びにHVJホールディングス(株)の子会社である(株)日立国際電気他7社を連結の範囲に含めましたが、2023年度データ集計の対象外としています。
排水の浄化
日清紡グループの2023年度売上当たりのSS(水中の浮遊物質)排出量実績は、0.20 kg/百万円と前年度比14%増加、売上当たりのCOD※ 排出量実績は、0.28 kg/百万円と前年度比7%増加となりました。マイクロデバイス事業のNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.において、新たにメッキ加工を始めたことにより増加しました。
※ COD(Chemical Oxygen Demand):水質の汚濁状況を示す指標で、化学的酸素要求量または化学的酸素消費量
売上当たり排水への排出量推移
※1 当社は2023年11月30日にブレーキ事業のうち子会社であったTMD FRICTION GROUP S.A.(以下、「TMD社」)の全株式を譲渡したことなどにより、TMD社他21社を連結の範囲から除外しています。このためTMD社他21社は2023年11月度までのデータを集計対象としています。
※2 当社は2023年12月27日に、HVJホールディングス(株)並びにHVJホールディングス(株)の子会社である(株)日立国際電気他7社を連結の範囲に含めましたが、2023年度データ集計の対象外としています。
大気への排出
日清紡グループの2023年度売上当たりのSOx(硫黄酸化物)排出量実績は、0.07 kg/百万円(前年度比7%増加)、売上当たりのNOx(窒素酸化物)排出量実績は、0.09 kg/百万円(前年度比 5%減少)、売上当たりのVOC※ 排出量実績は、0.12 kg/百万円(前年度比 7%減少)、売上当たりのばいじん排出量実績は、0.03 kg/百万円(前年度比 27%増加)でした。
繊維事業のPT. Nikawa Textile Industry(インドネシア)が2021年11月から⽯炭ボイラーによる⾃家発電設備を停⽌し石炭の使用をなくしたことで、当社グループのSOxおよびNOx排出量は2022年度から大幅に減少しています。
化学品事業の生産量減少にともない、アセトンの使用量が減少したことによりVOC排出量が減少しています。マイクロデバイス事業のNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.において、新たにメッキ加工を始めたため、ボイラーの稼働台数が増加したことによりばいじんが増加しました。
※ VOC(Volatile Organic Compounds):トルエンなどの揮発性有機化合物
売上当たり大気への排出量推移
※1 当社は2023年11月30日にブレーキ事業のうち子会社であったTMD FRICTION GROUP S.A.(以下、「TMD社」)の全株式を譲渡したことなどにより、TMD社他21社を連結の範囲から除外しています。このためTMD社他21社は2023年11月度までのデータを集計しています。
※2 当社は2023年12月27日に、HVJホールディングス(株)並びにHVJホールディングス(株)の子会社である(株)日立国際電気他7社を連結の範囲に含めましたが、2023年度データ集計の対象外としています。
グループ会社における活動事例
「教育訓練計画に基づく化学物質教育」他
ジェイ・アール・シー特機(株)では、教育訓練計画に基づき、該当業務従事者に対し各種教育を年に1回実施しています。化学物質の適正管理ついては、化学物質に関する基礎や有機溶剤の適切な取り扱い、および法改正に関する内容を教育し、最後に小テストを実施して理解度を把握しています。
また、緊急時対応訓練(化学物質の流出対応)では、コロナ禍のために中止していた実技訓練を3年ぶりに開催しました。社内標準に則り、化学物質の漏洩発見から緊急時対応ルートによる報告、漏洩状況に対する処置など、参加者全員が適切な対応を行うことができました。2022年までの紙による教育とは異なり、実技訓練では保護具の装着方法や化学物質の危険性などの質問事項も多々あり、従業員の緊急事態に対する認識が高まったことを確認できました。
今後も、安全に対する教育活動が形骸化しないよう工夫を図り、従業員の安全、ならびに環境汚染の未然防止に努めていきます。
動力設備の緊急処置訓練
日清紡マイクロデバイス福岡(株)では、動力設備で想定される漏洩事故(都市ガス、薬品、高圧ガス)に対し、動力設備・環境対応部門(施設環境課)と動力設備運転管理業務委託先(極陽セミコンダクターズ(株) 福岡事業所様)と共同で、緊急事態想定訓練を年3回実施しています。
1984年より稼働し機齢40年目を迎えようとしている動力設備の定期保全や、延命化、計画的な更新などで動力の安定供給に努めていますが、漏洩などが発生した場合重大な事故に波及する恐れがあります。日頃から不測の事態に備え、安全かつ迅速に被害拡大を抑え、二次被害や被災者を出さない対応ができるように心掛けて訓練を行っています。
今回は、硫酸タンクからの移送配管破損による硫酸漏洩および側溝から社外流出の恐れがある場合という想定訓練を実施しました。この活動は動力設備で使用する薬品類の漏洩想定箇所を毎年変更し、不測の事態に備えるため実施しています。
危険化学物質漏洩時を想定した緊急対応訓練
タイのNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.では、毎年2月から3月にかけて危険化学物質漏洩時の緊急対応訓練を実施しています。
危険な化学物質が流出した場合は、会社として迅速な対応を取る必要があるため、それに備えた以下のような緊急対応訓練を実施しています。
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①講義形態による化学物資知識の習得
SDSを用いた化学薬品の性質・保管方法・保管設備・輸送方法の理解、漏洩や人体が触れた際の環境および人への影響の理解 - ②シミュレーションによる実技訓練
2023年度は第2純水工場で使用する薬品の漏出を想定して、緊急事態対応訓練を実施しました。保管室から移動中の薬品が台車から落下し、構内道路に薬品が漏出した場面を想定しています。10リットル以上の薬品が道路に漏出した際、漏出したと判断した現場確認者は、連絡ルートに則り薬品対応チームに連絡する手順を取ります。そして、薬品担当チームは漏洩を処置し、安全・環境担当者に連絡します。
このような具体的な場面を想定して訓練を行うことで、危険化学物質漏洩の緊急対応に備えています。
「危険物緊急時対応テスト」の実施
日清紡メカトロニクス(株) 美合工機事業所では、地震などの災害が発生した場合に、危険物保管庫内から屋外への危険物(切削油)の漏洩を想定し、その対応手順を要領書にまとめています。
手順は、①発見 ②緊急時連絡 ③漏洩防止作業 ④応急処置 ⑤廃油回収 ⑥復旧連絡の順です。その手順が実際に有効なのかを確認するために、1年に1回、テストを実施しています。テストは、実際に作業にあたることが想定されるメンバーが集まり、要領書通りに作業しながら内容を確認し、改善点がある場合には、要領書の見直しも進めています。これまでのテストにおいて、土のうや吸着マットの位置、数量の見直しなどを行いました。また、安全に作業ができるよう、安全のポイントも記載しています。テスト時には、手順を守らなかった場合の環境や生態系への影響に加え、企業としての社会的責任についても再認識するよう努めています。
各種想定における緊急時対応訓練
日清紡精機広島(株)は、環境マネジメントシステムに従い、緊急事態一覧表を作成しています。年始に環境実行計画書を作成する際には、緊急事態を想定した訓練を実施するように各部門に促しています。
特に、多くの化学物質を使用している生産部門や、薬品を使用している開発部門には積極的に教育訓練を実施するようにしています。昨年度は、①切削油の工場外への漏洩、②炭化水素洗浄液(第2石油類)の階下への漏洩、③メタノール、エタノールの取り扱いと緊急時の処置手順、④苛性ソーダフレークのこぼれ、⑤薬品漏れ時の対応に対して訓練を行いました。これらの緊急事態対応訓練は、継続して実施しており、部内の周知が進みました。これからは、関連部門にまで参加メンバーを拡大することを計画しています。これにより、化学物質の有害性の認識がさらに高まることを期待しています。また、著しく環境に影響を与える緊急事態に限らず、インフラ関連の供給の遮断にも着目した訓練も進められるように計画していきます。
化学品の使用・管理・漏洩に関する教育
日清紡精密機器 (上海) 有限公司では、法令に適合した化学品管理を行うとともに、化学品漏洩を防ぐために、関連部署に化学品の使用・管理方法および、化学品漏洩に関する教育を実施しました。
化学品の使用・管理方法の教育では、法令に基づき、化学品を安全に使用するための注意点や、管理方法などを記載した化学品使用手順書を作成し、手順書に沿って指導し、運用を開始しました。運用状況については、同社の安全衛生管理員が定期的に確認しています。
化学品漏洩に関する教育では、漏洩発生時の初動(漏洩区域の封鎖隔離、安全保護用品の着用および避難、化学品に応じた漏洩処置など)の手順に加え、有害ガス発生時のマスク着用方法、化学品漏洩による火災予防対策ならびに火災発生時の対応などについて教育資料を作成し、指導しました。
今後も継続的に教育を実施し、法令に順守した化学品管理ならびに化学品漏洩による災害の防止に努めていきます。
化学物質漏洩を想定した緊急事態対応訓練
日清紡ケミカル(株) 土気事業所では、毎年、防災訓練の一環として化学物質漏洩を想定した緊急事態対応訓練を日清紡ホールディングス(株) 中央研究所と合同で実施しています。
2023年度は、大規模地震発生後に土気事業所内の屋内貯蔵所で保管している薬品(一斗缶)の転倒による薬品漏洩を想定し、11月に訓練を実施しました。全体訓練以外にも、各職場単位でEMS活動の一環として訓練を行うことで、化学物質を取り扱う従業員全員が緊急事態発生時に適切な対応を取れる体制を維持する取り組みを継続しています。
(公社)日本作業環境測定協会 第16回総合精度管理事業 精度管理優良賞を受賞
(株)日新環境調査センターは、作業環境測定機関の技術力を評価する「令和4年度総合精度管理事業(公益社団法人 日本作業環境測定協会)」に参加しました。その結果、「デザイン(測定計画)」「サンプリング」「分析」の3つの領域と、分析においては機関登録をしている「粉じん」「有機溶剤」「金属類」「特定化学物質」の4つの項目すべてにおいて精度管理に係る取り組みが良好と認められ、優良機関として2023年6月に表彰されました。
作業環境測定の意義は、測定のデザインからサンプリング、そして分析に至るまでの一連の過程が、適切・正確に行われているという前提の上に成立しています。作業環境測定機関に測定を委託しても、 得られた結果が作業現場の実態を正しく表していない場合、作業環境管理の指針にならないだけでなく、誤った管理にも結びつきかねません。
同社の作業環境測定に係る技術力が高く評価されたことは、今後強化される化学物質管理の業務拡大につながると考えています。
サステナブルな取り組みへの認証取得
インドネシアのPT. Nisshinbo Indonesiaでは、サステナブルな取り組みに対して、次の認証を取得しています。
- OEKO-TEX®※1 STANDARD 100※2
- OEKO-TEX® STeP※3
- GOTS※4(The Global Organic Textile Standard)
- OCS※5(The Organic Content Standard)
※1 OEKO-TEX®:Association(エコテックス®国際共同体)は、スイスのチューリヒに本部を置き1992年に設立され、欧州15カ国と日本の独立した検査研究機関が加盟する、繊維の安全性と信頼性を証明するシステムを構築した機関
※2 OEKOTEX® STANDARD 100:すべての国の規制をカバーできるよう、350を超える有害化学物質が対象となる厳しい分析試験にクリアした製品だけに与えられる世界最高水準の安全な繊維製品の証として、100カ国以上の取り引きや消費の際の大切な指標
※3 OEKO-TEX® STeP:繊維製品を生産する工場や企業がいかに持続可能な体制であるかを示す認証
※4 GOTS:糸、生地、衣類など広い意味での繊維製品が対象とする、テキスタイル(繊維製品)を加工するためのオーガニック基準
※5 OCS:オーガニック繊維を含む製品の生産・製造に対する認証