持続可能な社会づくりに貢献する製品・技術開発にさまざまな面から取り組んでいます。
日清紡グループは、多岐にわたる保有技術を融合し、3つの戦略的事業領域において持続可能な社会づくりに貢献するさまざまな技術・製品の開発に取り組んでいます。
新規事業開発本部では、“水素ソリューション”、“モビリティソリューション”、“メディカル・ヘルスケアソリューション”、“社会インフラソリューション” の4つのソリューションに沿った研究テーマを設定しています。
▼ 研究開発事例(トピックス)
水素社会にカーボンアロイ触媒で貢献
水素は発電や燃料の代替など多くの目的に使用可能であり、利用時に温室効果ガスであるCO2が発生しないため、クリーンなエネルギーとして注目されています。水素を燃料とし電気エネルギーを取り出すことができる燃料電池は発電効率が高く、環境にやさしい次世代の発電技術として期待されています。燃料電池の本格的な普及にあたっては、高出力化、耐久性能向上、低コスト化などが大きな課題となっています。
そのカギを握るのが高性能触媒です。当社は、工業的に安定生産が可能なカーボン(炭素)を主原料とし、高価な白金を一切使用しない「カーボンアロイ触媒※」の開発に取り組んでいます。
「カーボンアロイ触媒」の研究課題の一部は、群馬大学、千葉大学と共に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究公募「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」に採択されています。
※カーボンアロイ触媒とは…カーボンアロイの概念に基づいて材料設計された触媒機能を発現するカーボン材料
カーボンアロイとは…カーボン原子の集合体を主体とした多成分系からなり、それらの構成単位間に物理的・化学的な相互作用を有する材料。ただし、異なる混成軌道を有する炭素は異なる成分と考える。
【炭素材料学会 新カーボン用語辞典より】
「新方式のガスセンサ」で
水素社会を支えるインフラ、FCVをより安全安心に
水素社会の発展のためには、水素インフラやFCVから漏洩する水素ガスを早期に検知することが重要となります。
市販水素センサの多くは化学反応による検知方式のため、触媒の劣化等による耐久性に課題があるとされていますが、当社のガスセンサは、検知方式に超音波式を採用しており触媒を使用しないため、触媒毒となるNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)などの影響を受けません。
低濃度から高濃度までの水素ガスを1台で検知し、吸引式と拡散式の2方式が使用可能です。また、幅広い温度・湿度の環境下で精度の高い計測を可能にしています。 さらに、リーク量の数値化機能により品質管理の精度向上に貢献します。
現在は水素ガス以外にヘリウムガスリーク検知器のラインアップがあり、製造設備などのガス配管のリーク検知や、ウエット試験(発泡、水没)からドライ試験への移行に対応します。
引き続き、アンモニア、メタン、気化したガソリンなど検知対象ガス種を増やし、製品ラインアップを拡充する予定です。
海に優しい樹脂素材を開発
近年、海洋プラスチックごみが世界中で問題となっています。2019年開催の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも海洋プラスチックごみ問題が取り上げられました。中でも小さくて回収・処理が難しいマイクロプラスチック※について関心が高まっています。今世界で、プラスチックの排出削減と、環境に優しい代替素材の開発が強く求められています。
当社では長年、「セルロース」など天然由来の高分子物質を利用する研究開発・製品化に取り組んでまいりました。そのひとつ、海藻由来の「アルギン酸」から開発した「フラビカファイン®」は、優れた吸放湿・吸放水性が評価され、多くの製品に採用されています。
現在進めているのは、新しい分解メカニズムを持つ樹脂素材の開発です。この取り組みは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」に採択されています。「環境・エネルギーカンパニー」である当社は、マイクロプラスチック問題を解決するため、今後も開発を進めてまいります。
※マイクロプラスチックとは・・・直径5 mm以下のプラスチック粒子。自然界で分解せずに蓄積され続けるだけでなく、有害物質を吸着する性質があり、生態系や人間の身体への影響も懸念されています。
様々な課題解決に貢献する「第3の液体」
イオン液体はイオンのみからなる液体で、水や有機溶媒に次ぐ第3の液体とも呼ばれています。1900年代初頭に報告されて以来、様々なアニオン種、カチオン種の組み合わせが研究されています。揮発性が低く不燃性である、イオン伝導度が高い、特異的な溶解性を示す等の特徴を持ち、多くの分野での利活用が期待されている物質です。
当社では、イオン液体の研究を2001年より開始し、セルロースの溶解や蓄電デバイスへの応用などの検討を行ってきました。
セルロース溶解への適用については、信州大学、株式会社ナカムラサービス、日清紡テキスタイルと共同で、廃棄されるシャツを新しいシャツに生まれ変わらせる「シャツ再生プロジェクト」に取り組んでいます。これは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の先導研究プログラム「植物由来繊維資源循環プロセスの研究開発」の委託事業として採択されています。
当社のイオン液体は、次世代電池向け電解質、CO2電解溶媒、CO2吸着剤、有機電解効果トランジスタ(FET)など様々な用途で検討されており、関東化学株式会社より購入可能です。
オープンイノベーションを活用した技術の実証実験
日清紡グループでは、エネルギーの有効活用や省力化、ビッグデータを活用したオペレーション効率化など、スマートファクトリー技術の開発に取り組んでいます。
これまで、太陽電池や燃料電池などのクリーンエネルギーによる「発電システム」、二次電池を利用した「蓄電システム」、設備と消費電力を一体的に管理し効率的に運用する「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」を開発し、FiEMS(魚市場向けエネルギー情報統合管理設備)として展開してきました。
現在、プラントファクトリー(植物工場)を対象に、「IoT」・「AI」・「ロボット」・「生産工程データ」などを活用した実証を通じて、生産工程のスマート化にも取り組んでいます。
安心安全なイチゴを通年で安定供給
世界的な異常気象や人口の増加に伴い、安心・安全な食料の確保は人類にとって大きな課題となっています。
日清紡グループは、食の安心安全・安定供給に向けて、完全閉鎖型、環境センサーネットワークによる「環境制御」、画像AIとロボットによる選果梱包作業の「省力化」、「栽培・検査データの利活用」など、プラントファクトリーのスマート化に取り組んでいます。
加えて、植物を安定栽培するノウハウを確立し、日本で初めて、イチゴを気温・天候に左右されず通年栽培することに成功しました。
スマート栽培設備と栽培ノウハウをセットで提供し、持続可能な農業へ貢献していきます。
実証設備で栽培したイチゴは、「あぽろべりー®」のブランド名でスイーツ業界他に販売しています。
コンクリート構造物の維持管理に
高度経済成長期に建設された橋梁など多くのコンクリート構造物の劣化が社会問題となっています。例えば、橋梁の寿命は一般に50年程度と言われていますが、建設から50年を超えるものが2030年には半数を超える見込みです。そのため、これからは老朽化した構造物を効率的に点検・診断し、適切なメンテナンスを行っていくことが求められます。
当社グループでは超音波技術を活用し、コンクリート内部を高精度に3次元で観測することが可能な装置を開発しました。今後は本装置を活用して、構造物の維持管理に貢献してまいります。
「あっという間のダウンロード」を可能に
スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末の高解像度化が加速し、デジタルカメラやデジタルビデオの高画質化もあって、消費者が扱う情報量は増加の一途をたどっています。
開発中のミリ波通信デバイスは、スマートフォンやタブレット端末などの情報家電で活用できる高速な無線通信手段です。大容量化するデジタルコンテンツ情報をストレスなく送受信できるようにし、快適な暮らしの実現に貢献します。