インフラストラクチャー&セーフティー

日清紡グループでは気象レーダーや河川水位の監視システムなどの防災システムをはじめ、海事情報トータルサービスやプラントファクトリーなど、グループ各社の技術と知見を活かして、超スマート社会における人々の安全と安心を実現するソリューションをグローバルに提供しています。また、燃料電池向けのカーボンセパレータやカーボンアロイ触媒、ガス検知センサーなどについて、技術面・コスト面のハードルに挑み、これら製品の性能向上を通じて水素社会の実現に貢献しています。

気象レーダー

フェーズドアレイ気象レーダー

日本無線(株)の開発する気象レーダーは、気象庁、国土交通省、海外気象機関などの気象・雨量観測システムに広く導入されています。
近年、線状降水帯などの連続した積乱雲によって局地的大雨が発生するケースが増え、洪水や突風などの自然災害リスクが増大しています。しかし、従来の気象レーダーでは1回の観測が終了するまでに5分程度の時間がかかり、短時間で急速に発達する積乱雲の立体像を捉えることが困難でした。
日本無線(株)が開発したフェーズドアレイ※気象レーダーは、複数個のアンテナを搭載し、各アンテナからの電波を電子的に制御することで、積乱雲を立体的に、かつ高速で観測することができます。これにより局地的大雨の素早い予測を可能とし、災害被害の低減に貢献できます。今後は千葉市内に設置したフェーズドアレイ気象レーダーによる試験観測を続け、現在は難しい定量的な雨量の観測や、雨・雪・雹などの粒子の判別といった課題にも取り組んでいきます。

※ 小型のレーダーを平面上に多数組み合わせた複眼型で、死角が少ない気象レーダー

従来の気象レーダー
フェーズドアレイ気象レーダー

防災システム

日本無線(株)では、ダムや河川の管理施設、各種防災・減災施設などの社会インフラが、安全かつ確実に機能するための重要なシステムをトータルに提供します。
洪水による被害を未然に防ぐダム統合管理システム、災害時に地域住民の安全を確保するための防災情報通信システム、気象予報に使用する気象観測用システムなどで、社会インフラの発展にグローバルレベルで貢献しています。

防災に向けたソリューション
防災に向けたソリューション(クリックで画像を拡大)
防災無線操作卓
防災無線操作卓
防災無線スピーカ
防災無線スピーカ

J-Marine NeCST

日本無線(株)が日本郵船(株)と共同開発したJ-Marine NeCST(Navigational electronic Conning Station Table)は、クラウド型海事情報トータルサービスJ-Marine Cloudを活用したアプリケーションであり、電子海図を含む航海情報を大型ディスプレイ上で管理・共有する運航支援装置です。ディスプレイ上の電子海図に手書きで情報を書き込める世界初のシステムであり、航海計画の効率的な立案や、将来の自動運航を見据えた船陸間の情報共有と安全な運航を可能にします。
開発にあたっては多くの船員からヒアリングを行い、また開発者が実際に乗船し船内作業をリサーチするなどして、ユーザビリティを徹底的に追求しました。紙の海図の使い勝手と、タブレットのような直感的な操作性を両立しています。導入の対象となる船舶は全世界で1万隻程度あると見られており、今後の普及に向けて種々のディスプレイサイズへの対応も予定しています。

J-Marine NeCST
J-Marine NeCST

プラントファクトリー

工場でのイチゴ栽培の様子

世界的な異常気象に伴い、安心・安全な食物を安定的に確保することが大きな課題となっています。そうしたなかで当社は、完全密閉型の工場内で植物を栽培する技術開発に取り組んできました。その結果、日本で初めて、完全人工光型の植物工場で、通常は旬の季節にしか実らないおいしいイチゴを気温・天候に左右されずに通年栽培することに成功。徳島事業所、藤枝事業所に生産設備を導入し、「あぽろべりー」のブランド名でイチゴを栽培・販売しています。
今後は、当社グループの持つセンシング技術や通信技術を応用し、栽培環境をビッグデータとして扱うことで収穫量予測や安定化を図るなど、スマートファクトリー(SF)化への取り組みを進めます。これに基づき、設備販売や関連サービスの提供へと事業を拡大していきます。

カーボンアロイ触媒

燃料電池スタック

当社は、固体高分子形燃料電池に使用されるカーボンを主原料としたまったく新しいコンセプトのカソード触媒「カーボンアロイ触媒」の開発に取り組んでいます。希少資源である白金を使用していないことから、安定的な供給が可能な製品です。2017年9月には、カナダの大手燃料電池メーカーであるBallard Power Systems Inc.のポータブル燃料電池に採用され、非白金触媒として世界で初めて実用化されました。同社では2017年12月から、当触媒を採用した燃料電池スタックが製品ラインナップに加わり、アウトドア用途や災害時の緊急電源として注目されています。カーボンアロイ触媒の採用により、同社の燃料電池スタックの白金使用量は、従来比で約8割減少しました。
現在当社は、カーボンアロイ触媒のさらなる性能向上に注力しています。今後は北米を中心に普及が進んでいる燃料電池フォークリフトへのカーボンアロイ触媒適用、さらには、近く本格普及期を迎えるとみられる燃料電池自動車(FCV)への採用を目指します。