社外取締役×日清紡マイクロデバイス社長対談

拡大を続ける半導体市場の中で、“Connect Everything”技術にさらに磨きをかけ、アナログソリューションプロバイダーとして成長していく

2022年1月に、新日本無線(株)とリコー電子デバイス(株)が統合し、日清紡マイクロデバイス(株)が発足しました。
日清紡ホールディングス(株)の谷奈穂子社外取締役と新会社を率いる田路悟代表取締役社長が、半導体市場の成長性や新会社の競争優位性などについて対談を行いました。

コロナ禍で半導体の供給不足が続いています。昨今の半導体市場の変化や、市場の成長性についてどのように見ていますか。

田路:半導体の市況変動は、ここ数年でサイクルが短期化し、過去経験したことのない振れ幅を見せています。2020年秋以降、巣ごもり需要を背景とした旺盛な需要が続き、今に至るまで供給不足が続いていますが、長引くコロナ禍や地政学リスクの高まりの中で、サプライチェーンの分断に備えて部品在庫を抱える企業も多く、適正在庫に対する考え方が変化しているように思います。潮目が変わるタイミングは予見しづらいものの、いずれ、自動車向けを中心に、過剰在庫の適正化に向けた調整局面が来ると見ています。

谷:半導体需要を牽引するプレーヤーも、2008年以降は、PCや液晶テレビに代わってスマートフォンが牽引するなど変化しています。今後はDXやGX(グリーントランスフォーメーション)によって需要はさらに押し上げられ、また、通信データ量が飛躍的に増大することで、データセンターや通信インフラへの大型投資も拡大すると見ています。

田路:IoTをはじめとするスマート社会の到来で、センシング技術があらゆる場所で使われるようになり、通信インフラ向けの需要は拡大一直線になると私も思います。先進国に続き新興国でもスマート社会やクルマのEV化が進むことで、中長期にわたって半導体業界は着実に右肩上がりに伸びていくと考えます。

その中で、日清紡グループの半導体の競争優位性はどこにありますか。

田路:統合前の2社は、アナログ技術を核とする点は共通しながらも、個々の技術や製品、主に海外での顧客等の重複はほとんどなく、それぞれが得意とする領域で強化を図り成長してきました。スマート社会の実現に伴いセンシング市場が急拡大する中で、各社の持つ強い製品・技術を融合させることで、センサーから出るさまざまなアナログ信号をフィルタリング、増幅したうえで、デジタルに変換・処理し、アクチュエータを通じて再び現実社会にフィードバックをかけていく、インからアウトまでの一連の流れを一貫してご提供できる体制が整いました。本年2月には、ディー・クルー・テクノロジー(株)も日清紡グループに参画し、デジタル処理のノウハウがさらに強化されています。高付加価値製品のポートフォリオが拡充したことは当社グループの大きな強みとなって、お客様への提案力強化やクロスセルによる相乗効果にもつながると期待しています。また生産面でも、やしろ事業所の6インチと8インチラインの先端テクノロジー技術、日清紡マイクロデバイスAT(株)(旧・佐賀エレクトロニックス)の一次・二次実装技術など、前工程から後工程までを独自の強い技術力で開発・製品化できる点も当社グループの強みだと考えます。

谷:グループ内に日本無線(株)をはじめ、半導体を使うお客様がいることも大きいと思います。今後は、通信インフラ系に加え、自動車向けの半導体需要も拡大していきますので、直接カーメーカーやティア1とネットワークを持つ日清紡ブレーキ(株)のような会社がグループ内にあることも強みになると思います。

事業を展開する上での課題や事業機会についてどのように捉えていますか。

田路:新会社の発展の源泉は従業員ですから、従業員が統合のメリットを実感できるよう、2社協業での製品開発などから成功体験を積み重ね、積極的な情報発信や共有を通じて、従業員の意識を高めていきたいと思います。

谷:以前、旧・リコー電子デバイス(株)の従業員満足度調査結果を拝見し、情報共有に対して社員の満足度が非常に高かったことが印象に残っています。田路さんのリーダーシップに期待しています。

田路:新会社はラインやグループ会社も含めて3,500人超の大所帯となるので、一人ひとりが自ら考え、行動できる環境を随所で醸成していきたいと思います。従業員の意識も含めたPMI(合併後の統合プロセス)を円滑に進め、筋肉質な体質の会社へと進化させるには、異なる文化・やり方に直面した時こそ、より良い方向へ変化できるチャンスだと前向きに捉えることも大事だと考えています。また、水やエネルギーの消費量の大きい半導体工場にとって、環境負荷の低減がもう一つの大きな課題です。ドラスティックな低減につながるよう、さまざまな施策を検討していきます。

「環境・エネルギーカンパニー」グループとして、製品・ソリューションを通じてどのように環境・社会課題の解決やステークホルダーとの価値共創を図っていきますか。

田路:低消費・高精度・高効率を最も強みとする技術を有しており、今後も「環境・エネルギーカンパニー」に相応しい製品を開発することが課題解決に寄与すると考えます。

谷:半導体需要を今後も大きく牽引するデータセンターは、将来的に世界の電力供給を逼迫しかねないほどの電力を消費することが喫緊の課題となっています。日清紡グループは、会社の使命としてこの課題に取り組みながらも、もう一方では、カーボンニュートラルへ向けた世界的な大型投資の動きの中で新たなビジネスチャンスも出てきますので、その両面を捉えて進めていかれると良いと思います。

日清紡グループが「超スマート社会の実現」に向けて価値提供をする中で、ご自身の役割をどう認識されていますか。

田路:社会の発展に向けて、エレクトロニクスや電子部品が果たす役割はますます高まります。日清紡グループの1社を任された立場として、将来の方向性をしっかりと見極め先回りして行動を起こすことで社会の役に立てるよう、その役割を果たすと同時に、企業としてしっかりと利益を上げていくという使命も果たしていきたいと考えています。

谷:社外取締役就任後、私の母も昭和20年代に日清紡と関係があったことを知り、人並みならぬご縁を感じています。経営に参画して1年強ですが、当社グループは、人財を大切にしながらもしっかりとガバナンスの利いた経営をしていると感じています。社外取締役として経営のチェック機能を果たしながら、若い人財や女性の活用など、多様性に富んだ人財を持つ日清紡グループの良さをさらに引き出せるよう、貢献していきたいと思います。

最後にステークホルダーに向けてメッセージをお願いいたします。

田路:統合した2社の保有する技術を「深化」させ、そこから新しいものを生み出す「進化」を通じて、価値ある製品・モジュールをお客様にご提供し、2025年の数値目標である売上高1,000億円、営業利益率10%以上の達成に寄与していきます。そしてさらにその先は、アナログ技術にAIやデジタル技術を取り込んで、これまでにない新しい価値を提供するアナログソリューションプロバイダーを目指していきますので、引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

谷:日清紡グループは20年後の社会を見据えてイノベーションを創造していますので、引き続きご期待いただきたく思います。