日清紡ブレーキ(株)社長インタビュー

日清紡グループのブレーキ事業は、銅レス・銅フリー製品の開発で先行し受注を伸ばしていることで、環境対応製品を提供するメーカーとして業界のトップランナーの地位を固めています。また、日清紡ブレーキ(株)とTMD Friction Group S.A.を合わせたグローバル市場シェアは約20%に及び、世界トップクラスのブレーキ摩擦材メーカーとして、自動車産業の安全性を世界的に支えています。

日清紡ブレーキ(株)
代表取締役社長
石井 靖二
2018年12月期は、厳しい業績となりましたが、まずは日清紡ブレーキ(株)の減収・減益(調整後前期との比較)について、その理由をお聞かせください。

日清紡ブレーキ(株)が減収・減益となったのは、ほぼ2018年4月のファウンデーションブレーキ事業の譲渡によるものです。継続する摩擦材事業は、国内・海外ともに順調に推移しています。

ファウンデーションブレーキ事業譲渡の理由を改めて説明すると、今後電動ブレーキ化が進む中で競争力を維持するためには、大規模な設備投資や開発投資が必要になることから、当社としては市場優位性を持つ摩擦材事業へ経営資源を集中させるという意思を固めたものです。

当期はTMD社が減収・赤字となりました。TMD社で何が起きたのでしょうか?

日清紡ブレーキ(株)の製品は、新車組み付けがほとんどですが、TMD社では新車組み付けと同等以上の規模を持つアフターマーケット(交換)向け事業があり、TMD社の収益の柱になっています。

直接的な赤字の原因になったのは、アフターマーケット向け事業です。ドイツに複数あった倉庫を統合し、よりグローバルオペレーションに適した配送システムを構築すべく広い敷地を確保し、2017年から移転を開始しました。ところが、新倉庫においてシステムに関する混乱などがあった結果、受注に対応した出荷ができなくなるという事態が発生しました。この状況が2018年初頭から6月くらいまで続いたため、減収に加え問題対応へのコストアップ、さらには顧客離れを招いてしまいました。

TMD社の製品には確固としたブランド力があるため、最終的な顧客の回復は得られると思いますが、回復に向けて小売店ベースのキャンペーンを大規模に展開せねばならず、2019年はコストアップの影響が残ります。

新車組み付け製品に関しては、TMD社は歴史的に多くのメーカーが合併を繰り返して成長した会社であるため、それぞれのブランドがそれぞれの地域でオペレーションを継続している部分があります。その非効率を改善すべく、最大の市場であるドイツにおいて、レバークーゼンとエッセンのオペレーションをエッセンに集約し、採算を大幅に向上させるプロジェクトを数年前から行っていたのですが、現地の運営力が弱くこれがなかなか進んでいませんでした。

上記問題を解決すべく、2018年半ばに経営陣を刷新したことに加え、オペレーションに関しても日清紡ブレーキ(株)から人員を派遣するなど、総力的に支援を行っています。
こうした取り組みを進める中で、安全や品質、生産工程などで対処すべき課題が明確になり、それぞれ適切に対処していくことで2020年からは本格的な経済効果を発揮できる見込みです。

 
日清紡ブレーキ(株)の銅レス・銅フリー製品の状況はいかがでしょうか?

2019年4月時点で館林事業所でのディスクパッド生産量のうち、1/5程度が銅レス・銅フリー製品になっています。自動車部品業界では、受注した製品は数年先まで出荷数量が決まっており、日清紡ブレーキ(株)の銅レス・銅フリー製品も2025年頃までの出荷が見えています。

館林事業所では、2025年までに生産能力を2019年4月時点に比べ2割程度増強させ、そのうち6割超が銅規制対応製品となる予定です。また米国工場では対応製品は現状1割程度ですが、2025年には全体の生産能力を現状から4割程度増強させた上で、そのうちの5割超が対応製品となる予定です。中国でも量産を開始しており、こうした銅レス・銅フリー製品の生産能力増強などに向けて、日本、米国、中国の総額でこれまで実行した分を含めて200億円程度の投資を計画しています。

2025年以降のブレーキ製品に関しては、今後の技術動向に応じて開発の方向が決まりますが、高い安全性などを前提として小型化、軽量化、低環境負荷という流れは確実です。

銅規制対応品で市場シェアを確保していくことが、次世代製品の開発にあたっても最良のポジションを得ることにつながっていくと思っています。

ブレーキ事業としての日清紡グループ全体への貢献や、経営上のESG関連テーマに関しては、どのように取り組んでいますか?

日清紡グループの注力するモビリティ分野について、自動車メーカー、Tier 1メーカーとの良好な信頼関係を構築しているブレーキ事業では、グループの新規事業とのつなぎ役を果たしています。また館林事業所では、IoTやAIを活用した生産プロセスの効率化などを推進していますが、こうした成果を日清紡グループ全体に波及させるべく、グループ横断の取り組みとして、生産技術力強化プロジェクトを進めています。

ESGに関しては、製造現場での廃棄物などを極限まで減らす努力を継続している一方で、「働きやすさ」の改善にも努めています。ブレーキ事業の成長のためには、女性も含め、若い人材の活躍が鍵となります。若手社員により責任ある提案をさせるなど、優秀な人材に選ばれる組織を目指して、常に改善を進めています。