新日本無線(株)会長インタビュー

日清紡グループは、「環境・エネルギーカンパニー」グループとして、社会が直面する課題にソリューションを提供、事業を通して持続可能な社会づくりに貢献することを、中長期経営戦略の一つとして掲げています。
中でもマイクロデバイス事業は、電子デバイスの設計と生産を担い、モビリティ、産業機器、通信デバイス、ヘルスケア、衛星通信などさまざまな領域で事業を展開しています。

新日本無線(株)
代表取締役会長
小倉 良
2018年12月期は、10月頃からスマートフォンや車載、産業機器向けで出荷が落ちてきましたが、市場で何が起きているのでしょうか?

スマートフォンに関しては、中国経済の減速に伴い出荷が低調となりました。また通信技術の切り替え期に需要が伸びる傾向がありますが、現在は3Gから4Gへの切り替えが一巡していることも低調の要因です。しかし5Gへの切り替えが本格化すれば、改めて需要は拡大するとみています。実はそうしたタイミングでスマートフォンメーカーの市場シェアがガラっと変わるので、どのメーカーのどの機種に採用されるかでも出荷状況に大きな影響があります。

車載向けは、足元の出荷はスローになっていますが、業界習慣として予定納入個数が減る可能性は低く、現在出荷しているものは、3~4年前に開発および客先承認が完了しているものです。我々はむしろSOP 2021およびその先の製品について、国内Tier 1メーカーと話を進めており、実際に大型案件なども受注できているため、将来の事業拡大を期待しています。投資についても受注が見えていますので、回収できる安心感があります。

産業機器向けは、中国の経済成長などに伴ってシリコンサイクルを越える拡大を続けてきましたが、足元では出荷が伸び悩んでいます。しかし世界的なIoT化の流れを考えると、長期的な市場規模はさらに拡大していくわけで、我々の製品開発のペースを緩める理由はどこにもありません。

※ Start of Production 2021:2021年生産開始予定という意味

マイクロデバイス事業における日清紡グループの強みは何ですか?

信号系の分野を中心に、センサー/オペアンプ/ADCをフルラインで扱っており、クライアントのニーズに合わせてカスタマイズし、ワンパッケージのモジュール製品を提供できることです。モジュール化による品質の向上やコストダウンに加えて、クライアントとしては設計工程や部品調達の作業労力を大幅に削減し、リソースを注力分野へ集中投下できるということで評価を得ています。これはより大手の競合メーカーではなかなかできない取り組みだと自負しています。

また当期よりリコー電子デバイス(株)との協業が本格化したことで、同社の電源ICなどを加えたモジュール製品をクライアントに提供できるようになりました。

独自技術を持っているのも、日清紡グループの強みです。センサーに関しては、新日本無線(株)のMEMS技術が差別化要因になっています。また、同社ではマイクロ波技術を利用して、通信衛星用の受信・送信機で高いシェアを誇ります。このマイクロ波は人感センサーとして、自動販売機やサニタリー分野などでも導入されています。さらに産業機器向けでは、ロボットアームなどの回転角度を検知するエンコーダ用センサーに使われる、光半導体の技術も優位性になっています。

※ Analog-to-Digital Converter:アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する電子回路

アナログ半導体モジュールの仕組み
新日本無線(株)とリコー電子デバイス(株)との協業は進んでいますか。

新日本無線(株)は一部外部委託していたウエハーの製造をリコー電子デバイス(株)のやしろ工場で、リコー電子デバイス(株)は外部委託していたアセンブリー工程の一部を佐賀エレクトロニックス(株)で、それぞれ対応するプロジェクトがすでに両工場で始まっています。

人員のやり繰りも大きなメリットです。デバイスの工場は時期によって人員の過不足が出てくるので、互いの工場に人員を融通し合うことで、マンパワーの平準化をしています。
設計・開発チームは、両社融合したワーキンググループをいくつか立ち上げており、次世代製品の開発をスタートさせています。

車載製品は、生産プロセスにおいて厳しい安全基準が求められます。リコー電子デバイス(株)は、日本のIATF16949と欧州のVDA6.3両方の認定を受けている新日本無線(株)の製造ラインを活用することで、車載製品のラインナップを一気に増やすことができます。

欧州市場での取り組みはどのような進捗でしょうか。
車載向けの採用が増えています。大手Tier 1メーカーとの取り組みも活発化しており、数十億円規模の受注も決まっています。この車載製品は新日本無線(株)とリコー電子デバイス(株)の共同開発によるものです。
経営上のESGテーマとしては、どのようなことに注力していますか。
生産工場として、環境負荷の低減は当たり前のことです。加えて電子デバイスの製造は長時間労働が起こりやすい業種であるため、「働き方」に関して最大限の配慮をしてきました。新日本無線(株)では、2016年に「ヘルシーカンパニー宣言」を行い、健康経営を推進しています。健康増進を目指す社員に対して各種インセンティブを与え、工場屋内にトレーニングジムを設置し、ヨガ教室を開催するなどしています。
その結果、2017、2018年に経済産業省の「健康経営優良法人 ホワイト500」に認定されました。社員それぞれのライフスタイルと会社勤務の最適なバランスを追求したいと考えており、勤務時間の裁量を広げ、子育ての支援を充実させるなど、さまざまな施策に取り組んでいます。