統合報告書ハイライト

水素をエネルギー源とした燃料電池は、発電時にCO2を一切排出しない究極のクリーンエネルギーと言われています。家庭用から車載用までさまざまなポテンシャルを持つ燃料電池に対して、日清紡グループは、カーボンセパレータやカーボンアロイ触媒、水素センサーなどの開発を通じて技術やコストのハードルに挑み、水素社会の実現へ貢献しています。

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R&Dインタビュー

2025年の目標売上高1兆円に向けた、新規事業開発本部の役目は何ですか?
常務執行役員
新規事業開発本部長
木島 利裕

新規事業開発本部ではグループ内の研究開発に関する横串活動として「グループR&D」を推進しています。グループR&Dの長期戦略として「超スマート社会への価値の提供」を掲げ、これを具現化するために、水素、モビリティ、メディカル・ヘルスケア、社会インフラの4つのソリューションを戦略軸と定めて開発を進めています。グループ全体で見ると、研究開発投資の大部分が既存事業に関わるものですので、2025年に向けては既存事業のOrganic growthが圧倒的に大きいと考えています。一方でグループR&Dは既存事業に組み入れていない案件を指しますが、2025年の事業ポテンシャルとしては現段階で500~600億円規模と見ており、さらに上乗せを図っていく考えです。
新規事業の創出は、技術軸のシーズと市場軸のニーズの両者が合致するところに機会があると考えていますが、保有技術や顧客基盤を融合させることでグループの強みを発揮していきたいと考えています。

グループ内事業間の連携・融合をどのように推進していますか?
日清紡グループはセグメントが多岐にわたっており、研究開発部署の横串活動はグループ内で異業種交流をしているような印象すらあります。横串活動の「グループR&D」では融合活動を推進しており、グループ内で互いの仕事内容やキーパーソンを理解し合うことが重要と考えています。本音で進められない形式的な交流会では意味がなく、結果も期待できないのではないでしょうか。他社との共同研究では、どうしても契約の壁があり、それを越えるには大きな負担を伴います。この点でも多様な保有技術・顧客基盤がグループ内に存在することが「グループ内オープン・イノベーション」を可能にし、当社グループの最大の強みになっていると感じています。
水素関連製品の開発の進捗をお聞かせください。

カーボンアロイ触媒が、バラード社のポータブル用燃料電池スタックに昨年採用され、白金代替触媒としては世界初の実用化となりました。現在は、次のステップとしてフォークリフト用燃料電池スタックでの実用化を目指して、バラード社と共同開発を進めています。
燃料電池用のカーボン製セパレータは、すでに家庭用のエネファーム向けで普及していますが、今後は燃料電池車(FCV)向けの展開を期待しています。その開発を昨年日清紡ケミカル(株)から当本部に移管し、融合テーマとしてグループの総力で開発を加速させています。
また現在、水素ガスセンサーの開発も進めています。これは上田日本無線(株)の超音波技術、日本無線(株)の信号処理技術、日清紡ホールディングス(株)の顧客基盤を融合させたものです。実際にはマーケティングの結果、ヘリウムガス・リークディテクターとして先行させ2018年中には試験販売にこぎ着けたい考えです。
風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは、発電量が自然任せで我々の生活パターンに合わせることは難しいのが実情です。そこで再生可能エネルギーを使って水を電気分解し、水素として蓄え、生活パターンに応じて燃料電池で発電しようという動きが起きています。
今、世界のエネルギー事情は大きく変わろうとしています。来るべき水素社会を支える燃料電池の役割はますます重要になっています。我々の開発に期待してください。

将来を見据えた、長期視点での取り組みについて教えてください。

2016年から河田社長の肝いりで若手社員のワークショップをスタートさせました。仕事の習熟度が高まってきた30歳前後の若手社員に、2030年代以降のグループの将来を自ら考えてもらうものです。これを通じて、日清紡グループの将来を担う若者に横断的な人脈づくりをしてもらう狙いもあります。2017年にはグループのトップ層が世界中から集まる経営方針会議において、彼らが英語での発表を行い、好評を博しました。

燃料電池セパレータ

カーボンセパレータの売上実績

当社グループで製造している燃料電池用カーボンセパレータは、エネファームなどの家庭用や商業施設などで設置される定置用で採用されています。高い市場シェアを誇る家庭用と今後の普及が予想される定置用については、製造ラインの自動化を加速し、生産効率の改善を図る計画です。
また、車載用ではターゲットとなる燃料電池車(FCV)についても、着実にコストダウンを図る技術開発が進んでおり、特に中国や北米においてバスやトラックの燃料電池車の開発が活発化しています。カーボンセパレータは金属製と比較して同程度の薄さを持ちながら、成形性や耐食性などに優位性があります。また、軽量であるという点も車載用途での採用に向けてアピールできる強みです。当社グループでは、車載用セパレータの開発を日清紡ホールディングス(株)に集約し、グループ全体で開発に取り組む体制を整えました。2025年以降のFCVへの採用を目指し、開発を続けます。

カーボンアロイ触媒

燃料電池スタック

当社は、固体高分子形燃料電池に使用されるカーボンを主原料としたまったく新しいコンセプトのカソード触媒「カーボンアロイ触媒」を開発しています。希少資源である白金を使用していないことから、安定的に製品を供給することができます。2017年9月にカナダの大手燃料電池メーカーであるBallard Power Systems Inc.のポータブル燃料電池に採用され、非白金触媒として世界初の実用化を達成しました。カーボンアロイ触媒の採用により、同社の燃料電池スタックの白金使用量は約8割削減できました。Ballard社は、2017年12月から当触媒を採用した燃料電池スタックを製品ラインナップしており、アウトドア用途や災害時の緊急電源として注目されています。
現在は北米を中心に普及が進んでいる燃料電池フォークリフトへの適用、さらにはFCVの本格普及期への採用に向けて、カーボンアロイ触媒のさらなる性能向上に注力しています。
日清紡グループは、来るべき水素社会の実現に貢献していきます。

超音波式ガスセンサー

超音波式ガスセンサー

超音波式ガスセンサーは、水素ガス、ヘリウムガスなど雰囲気ガス(空気)と比重差のあるガスを検知します。当社グループの上田日本無線(株)がメディカル分野で培った超音波技術と、日本無線(株)がレーダー・無線通信で培った信号処理技術を融合して開発しました。現行のセンサーと異なり、ヒーターやレアメタル触媒が不要なため、長期の安定使用が可能になります。さらに応答速度が速く、広範囲な濃度測定などの特長があります。携帯型ヘリウムガスリーク検知器として2018年中に試験販売を開始します。大型で重量があり高価格な現行品に対し、この新型センサーは小型・軽量・電池駆動で、いつでも、どこでも手軽にガスリーク箇所が特定できることを実現しています。
今後は、防爆認定取得後、携帯型水素ガスリーク検知器への展開や、小型化を進めながらFCVに搭載されるよう開発していきます。FCVが本格的に普及すると見込まれる2030年代には、当センサーがデファクトスタンダードとなることを目指しています。