統合報告書ハイライト

自動車や船などの移動体に関する自動運転技術が注目されています。そうした技術の進展により、交通事故の減少やエネルギー消費量の削減といった成果が期待されます。日清紡グループでは保有する技術を融合させながら、ADASをはじめ陸海空すべての移動体の自動運転に関わる技術を磨き、安全性や環境面での貢献を進めていきます。

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JRCモビリティ加藤社長インタビュー

JRCモビリティ(株)設立の背景を教えてください。
JRCモビリティ(株)
代表取締役社長
加藤 謹司

日清紡グループではこれまで、日本無線(株)の通信機器事業など自動車関連技術を結集し、グループ横断的にADASの事業推進を行ってきました。2025年にはレベル4の自動運転が実現すると言われている中、我々も開発のスピードを上げる必要があります。また、自動車業界で要求されるQCD(Quality、Cost、Delivery)に対応できる生産体制の構築も視野に入れる必要があります。こうした背景から、より迅速で柔軟な意思決定を可能にすべく、モビリティ事業に特化した新会社として、日本無線(株)通信機器事業から発展的に事業独立しました。
日本無線(株)から新会社への事業移行プロセスは二段階を予定しており、まずは自動車向けの高性能ミリ波レーダーや超音波センサーの開発部門を移管し、その後2020年の1月を目標にETC車載器やGPSといった既存オートモーティブ関連製品を新会社に移管する計画です。

※ Advanced Driver Assistance Systems:先進運転支援システム

オートモーティブ関連事業の現状についてお聞かせください。
日本無線(株)はこれまで日本国内で使用する道路課金システム車載器(ETC)を事業展開してきました。今年4月には、日本国内を含め海外も視野に入れた、次世代有料道路課金システム車載器の開発受注に成功しました。このため、開発が終了した数年後には、生産台数も倍増する予定です。また、同新システムは世界的に普及する可能性もあり、今後大きな期待ができます。
DSSS※1は、今年から国内2カ所で実運用が始まっており、今後数千カ所の重要交差点へ設置される計画があります。また、トラフィックカウンタ※2も今年から実運用を開始しています。今後、環境条件に左右されにくい日本無線(株)のミリ波レーダーが徐々に採用されると考えています。
  • ※1 Driving Safety Support Systems:交差点などで、ドライバーに交通状況や信号などの情報を送信し、交通事故を未然に防止することを目的とするシステム
  • ※2 高速道路などに設置され、車の台数カウントや逆走検知を行う機器
グループ内シナジーをどのように発揮していきますか。

日清紡グループでは、ブレーキ事業のほかに金属部品や樹脂部品を製造する精密機器事業、燃料電池用セパレータを製造する化学品事業などの自動車関連事業を有し、顧客との強い信頼関係があります。またアナログ半導体を製造する新日本無線(株)とは、IC供給などの技術的な面でのシナジーも期待できます。
また、2017年6月には日清紡ホールディングス(株)が(株)ZMPへの出資を行いました。カメラによるセンシング技術を応用し、ロボットやドローンなどの自動運転を推進する同社と、我々の持つセンサー・通信技術を組み合わせて、新たな可能性を広げていきたいと考えています。
「安全」「安心」は当社グループが社会に提供する価値です。新体制で開発力と事業化力に磨きをかけ、自動車分野にとどまらず船舶や航空機なども含めたモビリティ分野において、当社グループの社会貢献を最大化していきます。

高精度測位サービス

自動運転などを実現するためには、これまでよりも高精度な測位サービスが必要です。10メートル程度の誤差が生じる現在のGPSに替わり、センチメータ級の高精度な測位技術が実現すれば、衛星測位だけで自動車の走行レーンの判定が可能になるなど、さまざまな分野で需要が期待できます。日本無線(株)は、そうした測位サービスの実現において不可欠な、準天頂衛星からの信号を受信するGNSSチップ(受信機)の開発を行っており、2018年秋にサンプル出荷を予定しています。また、同サービスを海外でも普及させるべく、2017年6月、日本無線(株)はグローバル測位サービス(株)(略称:GPAS)の設立株主となりました。
超スマート社会における自動車、農業機械および建設機械の自動運転、海洋および気象観測など、幅広い分野を支える基盤技術の確立に向けて取り組みを続けます。

グローバル測位サービスの仕組み
1 世界中の基準局で測位衛星の観測データを収集
2 収集したデータから、衛星軌道と衛星時計の誤差を精密に計算
3 QZSSの信号を用いて地上のユーザに補正情報を配信
4 今後、インターネットでの配信も計画
5 配信されたデータを用いて測位演算を行うことで世界中でセンチメータ級の測位が可能に

※ QZSS:Quasi-Zenith Satellite System:準天頂衛星システム

交通インフラ

日本政府は、2018年を目途に交通事故死者数を2,500人以下とし、2020年には世界で最も安全な道路交通社会の実現を目標とし、ICT(情報通信技術)を活用した、より安全な交通インフラの整備を急いでいます。日本無線(株)の開発するDSSS(安全運転支援システム)は、センサーによって感知した歩行者情報などを、無線通信によってドライバーに提供することで交通事故の防止や、より効率的な運転を可能とします。
また、日本無線(株)では、レーダーセンシングの技術を応用し、逆走検知機やトラフィックカウンタなどの製品を展開しています。日本無線(株)の感知器には、船舶や気象で培われた技術を応用したレーダーセンシングの技術が搭載されており、従来型のカメラ型機器と比較して、夜や霧などの気象条件、逆光や対象の色などの影響を受けないことや、小形で低価格などの強みがあります。

船舶の自律運航

船陸間通信システム

船舶の自律運航が実現すれば、衝突事故の防止や、運航効率の向上、人件費の抑制など、さまざまなメリットがあります。国土交通省が海事生産性革命(i-Shipping)を推進する研究開発事業を支援するなど、マリン業界では各社が新技術、新サービスの開発を行っています。日本無線(株)では、衛星通信およびVHF帯データ通信システム(VDES)などをインフラとした船陸間情報共有システム、避航操船技術などをコア技術として、2022年に船舶の半自律運航、2030年に船舶の完全な自律運航の実現を目指しています。航海の安全性の向上に加え、最適航路の航行による燃費の改善など環境面での貢献も期待できます。

(株)ZMPとの協業

自動車をはじめとする移動体の自動運転分野で高い技術力を持つ(株)ZMPとの協業を図るべく、日清紡ホールディングス(株)は2017年6月に同社への資本参加を行いました。(株)ZMPは、自動運転技術開発プラットフォームの販売・レンタルのほか、ワイヤレスの脳波センサーなどの開発を行っています。中でも、ロボット技術を応用した台車や、オフィスビルなどで自走が可能な宅配ロボットの実験などが注目されています。これまで当社グループが培ってきた情報通信技術、センシング技術をさまざまな移動体の自動運転に応用していくため、同社との協力体制を強化していきます。