業績ダイジェスト

2023(令和5)年12月期

(はじめに)
 当社は、当連結会計年度において、当社グループの事業ポートフォリオ戦略に沿って、ブレーキ事業の一翼を担っていたTMDグループを譲渡しました。これにより親会社株主に帰属する当期純損失を計上することになりましたが、自動車のxEV化の進展やブレーキ粉塵規制といったTMDグループが抱えることになった課題を考慮しての事業譲渡であり、ブレーキ事業の体質強化に向けた一施策でもあります。一方、当社の子会社である日清紡シンガポールと共同でHVJホールディングス㈱の発行する株式全てを取得したことにより、HVJホールディングス㈱の子会社である日立国際電気グループを連結子会社化しました。日立国際電気グループが得意とするAI画像認識技術・最先端の無線通信技術と日本無線グループが得意とする情報処理技術を組み合わせてトータルソリューションを提供することにより、SDGs等の社会課題解決に貢献してまいります。また、当社グループの海外拠点も活用しながらグローバルレベルでシナジーを追求し、無線・通信事業の収益基盤を強化し成長を加速させます。
 こうしたカーブアウトやM&Aにより、2024年12月期には核とする無線・通信、マイクロデバイス事業の売上構成比率が60%を超えるなど、当社グループの事業ポートフォリオは更に大きく変化する見込みです。

 なお、TMDグループの経営成績(損益計算書)は当連結会計年度の連結損益計算書に反映していますが、期末財政状態(貸借対照表)は譲渡に伴い当連結会計年度末の連結貸借対照表に反映していません。
 また、HVJホールディングス㈱および日立国際電気グループの期末財政状態(貸借対照表)は当連結会計年度末の連結貸借対照表に反映していますが、経営成績(損益計算書)およびのれんの償却額は次期(2024年12月期)より連結損益計算書に反映する予定です。

 当連結会計年度の当社グループの売上高は、マイクロデバイス事業は減収となりましたが、無線・通信事業やブレーキ事業が増収となったこと等により541,211百万円(前年同期比25,125百万円増、4.9%増)となりました。
 営業利益は、ブレーキ事業の増益があった一方で、マイクロデバイス事業の減益等により12,453百万円(前年同期比2,981百万円減、19.3%減)となりました。
 経常利益は15,785百万円(前年同期比4,611百万円減、22.6%減)となり、TMDグループ譲渡に伴い固定資産の減損損失および事業整理損を計上したこと等により親会社株主に帰属する当期純損失は20,045百万円(前年同期比39,785百万円悪化)となりました。
 主要な事業セグメントの業績は次のとおりです。セグメント利益またはセグメント損失は営業利益または営業損失ベースの数値です。

2023年12月期セグメント別売上高構成比率

無線・通信事業

 ソリューション・特機事業は、防衛省向けレーダ装置は増加したものの、前年同期に大型案件があった県・市町村防災システムや航空・気象システムが減少したことに加え、河川の水位・雨量を監視する水・河川情報システムの更新需要の一巡等により減収・減益となりました。
 マリンシステム事業は、期首から受注が好調に推移しており、商船新造船用機器や欧州河川市場向けワークボート用機器が増加していることに加え、円安も追い風となり増収・増益となりました。
 モビリティ事業は、米国政府の補正予算執行に伴う需要増により海外業務用無線が大幅に増加したことに加え、新型レピータ装置や鉄道用次世代安全システムの開始もあり増収・黒字化となりました。
 その結果、無線・通信事業全体では、売上高158,081百万円(前年同期比5.1%増)、セグメント利益4,745百万円(前年同期比1.6%減)となりました。

マイクロデバイス事業

 主力の電子デバイス事業は、車載製品はEV充電用やセンサ、カーナビ関連が好調で価格転嫁も寄与し増加しましたが、産機製品はモータ制御やオフィス機器関連をはじめ全般的に低調だったことに加え、民生品(コンシューマ製品)は市況の回復遅れにより中国・アジア向けスマートフォン関連やPC関連を中心に大きく減少したことで減収・減益となりました。
 マイクロ波事業は、センサ関連製品や電子管保守部品は堅調に推移したものの、米国向け船舶・地上固定局用の衛星通信関連や船舶用レーダコンポーネント関連製品が低調だったことにより減収・減益となりました。
 その結果、マイクロデバイス事業全体では、売上高80,044百万円(前年同期比6.2%減)、セグメント利益934百万円(前年同期比89.6%減)となりました。

ブレーキ事業

 日本の拠点や中国拠点は、カーメーカーの生産回復により増収・増益となりました。米国・韓国拠点も増収でしたが、原材料等の高騰は企業努力で吸収できる範囲を上回っており損失拡大となりました。
 新車販売が不振だった影響で減収・減益となりました。TMDグループは、アフターマーケット製品の受注が好調に推移したことで増収・黒字化となりました。
 その結果、ブレーキ事業全体では、売上高178,541百万円(前年同期比16.2%増)、セグメント利益4,682百万円(前年同期比9,346百万円改善)となりました。

精密機器事業

 精密部品事業は、インドに設立したCONTINENTAL社との合弁会社(NISSHINBO COMPREHENSIVE PRECISION MACHINING (GURGAON) PRIVATE LTD.)で立ち上げ準備費用等が発生したものの、中国拠点における自動車用EBS部品が好調だったことにより増収・増益となりました。成形品事業は、車載関連製品等は好調でしたが、空調関連製品が顧客の生産調整の影響を受けたこと等により減収・減益となりました。
 その結果、精密機器事業全体では、売上高53,265百万円(前年同期比0.7%減)、セグメント利益1,328百万円(前年同期比71.1%増)となりました。

化学品事業

 断熱製品は、硬質ブロック等は受注減ながらも、冷蔵冷凍設備・住宅用・土木用原液の受注増により前年同期並みの売上でしたが、原料価格等高騰の影響により減益となりました。燃料電池用カーボンセパレータは、海外定置用の受注減により減収・減益となり、機能化学品も、国内外の受注減により減収・減益となりました。
 その結果、化学品事業全体では、売上高11,433百万円(前年同期比9.8%減)、セグメント利益801百万円(前年同期比63.3%減)となりました。

繊維事業

 シャツ事業は、アポロコットシャツ等の超形態安定商品が好調に推移し増収でしたが、原料価格上昇等により減益となりました。東京シャツ㈱は、人流回復に伴い実店舗の販売が増加したことで増収・損失縮小となりました。ユニフォーム事業は、増収ながらも原料価格上昇等により減益となりました。開発素材事業は、受注減により減収・損失拡大となりました。
 その結果、繊維事業全体では、売上高37,481百万円(前年同期比2.2%減)、セグメント損失420百万円(前年同期比519百万円悪化)となりました。

不動産事業

 静岡県浜松市の宅地販売は減少しましたが、滋賀県東近江市のマンション販売やリノベーションマンション販売を実施したこと等により前年同期並みの売上・利益となりました。
 その結果、不動産事業全体では、売上高11,263百万円(前年同期比0.8%増)、セグメント利益8,518百万円(前年同期比2.3%減)となりました。