省エネルギー
日清紡グループのSDGsへの貢献
日清紡グループは、省エネルギーの活動を通じ、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献します。
当社グループ環境目標である、売上当たりの使用エネルギー削減を達成するために、KPI※ を管理して計画的に対策を講じています。
※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
コアとなるSDGsゴールおよびターゲットと日清紡グループの活動
日清紡グループは、SDGs 12.2をコアとなるゴールおよびターゲットと考え、省エネルギー活動を推進しています。
- ①ISO14001の活動を通じ、エネルギーの消費抑制活動を推進
- ②設備更新時に環境配慮型設備を選択、改善活動による省エネルギー対策を持続的に実施
- ③計画的な照明のLED化
- ④新建造する建屋・倉庫へのさまざまな省エネルギー設備導入と、空調で消費するエネルギー削減の追求
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12. つくる責任 つかう責任
持続可能な消費と生産のパターンを確保する。
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ターゲット:12.2
2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
燃料別エネルギー使用量
日清紡グループのエネルギー使用量実績は、9.95百万GJと前年度エネルギー使用量比2%増加しました。売上当たりのエネルギー使用量は、19.49GJ/百万円となり、前年度売上当たりのエネルギー使用量比 8%減少となりました。
新型コロナウイルス感染症の影響からの回復需要により、多くの事業において生産が増え、製造時のエネルギー使用量は増加しましたが、売上が増加し製造原単位当たりのエネルギー使用量は減少しました。
燃料別では、使用エネルギー全体の76%が購入電力でした。また、使用エネルギー全体の14%が繊維事業のインドネシア子会社2社(PT. Nikawa Textile Industry およびPT. Nisshinbo Indonesia)で使用している石炭によるものでした。
エネルギー使用量と売上当たりのエネルギー使用量の推移

(百万GJ)
2017 | 2018 (調整後) |
2019 | 2020 | 2021 | |
購入電力 | 7.74 | 8.27 | 7.93 | 7.25 | 7.58 |
石炭 | 1.66 | 1.51 | 1.50 | 1.60 | 1.41 |
都市ガス | 0.77 | 0.85 | 0.80 | 0.73 | 0.77 |
重油 | 0.06 | 0.05 | 0.04 | 0.05 | 0.04 |
その他 | 0.12 | 0.25 | 0.27 | 0.10 | 0.15 |
エネルギー使用量 | 10.35 | 10.93 | 10.54 | 9.71 | 9.95 |
(GJ/百万円) | |||||
売上当たりエネルギー使用量 | 20.22 | 21.23 | 20.68 | 21.25 | 19.49 |
※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。
事業別エネルギー使用量
エネルギーを最も多く使用したのはブレーキ事業(3.23百万GJ)で、次いで繊維事業(2.64百万GJ)でした。
事業別エネルギー使用量

(百万GJ)
2017 | 2018 (調整後) |
2019 | 2020 | 2021 | |
エレクトロニクス | 1.89 | 2.64 | -- | -- | -- |
無線・通信 | -- | -- | 0.48 | 0.52 | 0.53 |
マイクロデバイス | -- | -- | 2.09 | 2.07 | 2.13 |
ブレーキ | 3.63 | 3.42 | 3.29 | 3.06 | 3.23 |
精密機器 | 1.41 | 1.43 | 1.30 | 1.14 | 1.18 |
化学品 | 0.11 | 0.11 | 0.10 | 0.11 | 0.13 |
繊維 | 3.19 | 3.20 | 3.16 | 2.70 | 2.64 |
その他 | 0.12 | 0.12 | 0.12 | 0.12 | 0.10 |
エネルギー使用量 | 10.35 | 10.93 | 10.54 | 9.71 | 9.95 |
※1 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。
※2 2019年度よりエレクトロニクス事業を無線・通信事業とマイクロデバイス事業に分離しました。
LED照明の導入
2021年度の新たなLED化による省エネ効果は、日清紡グループ全体で下表の通り866MWhとなりました。
電力削減量
事業区分 | 削減量(MWh) |
---|---|
無線・通信事業 | 181 |
マイクロデバイス事業 | 304 |
ブレーキ事業 | 132 |
精密機器事業 | 134 |
化学品事業 | 102 |
繊維事業 | 13 |
不動産事業 | 13 |
合計 | 866 |
※ 2019年度よりエレクトロニクス事業を無線・通信事業とマイクロデバイス事業に分離しました。
日清紡グループの活動事例
省エネ活動の推進
日清紡マイクロデバイス(株) 川越事業所では、2021年に4つの施策を展開し電力使用量の削減に取り組みました。電力使用量を減らすことで、CO2排出の削減にも寄与しました。
①クリーンルームの空調機器であるターボ冷凍機が老朽化したため、高効率インバータ、ノンフロン型へ1月に更新しました。これにより空調機器への負荷の少ない時期(3~6月、10,11月)にきめ細かい運転(運転ロス削減)が行え、年間約277MWh(CO2排出量137.3t-CO2)の削減となりました。また、ノンフロン型になったことで、オゾン層破壊の原因である冷媒の使用が無くなりました。
②工場で使用するエアーコンプレッサー設備の不純物を取り除くために設置されているフィルター部分を1月に改修して、圧力損を低減し過剰な運転を減らしたことにより、消費電力を年間約140MWh(CO2排出量69.5t-CO2)削減しました。
③24時間稼働、点灯しているクリーンルームの蛍光灯をLEDベースライト(462台)へ段階的に交換し、年間約96MWh(CO2排出量47.5t-CO2)削減しました。
④老朽化で故障した業務用エアコンを高効率なものに更新(9台)することによって、年間約28MWh(CO2排出量14.0t-CO2)の削減を行いました。
この4つの施策により川越事業所全体で年間約542MWh (CO2排出量268.3t-CO2)、電気代に換算し約760万円/年の削減効果となっています。

冷熱源設備 冷水送水コントロ-ル変更によるエネルギー削減
日清紡マイクロデバイス(株) やしろ事業所では、半導体を製造するクリーンルーム内の環境を維持するため、クリーンルーム用空調機へ冷水を送水しています。
改善前は、送水圧力が設定圧力になるようにポンプ出口の2方弁開度調整させる『圧力一定制御システム』で冷水を送水するポンプを稼働していました。
改善施策として、ポンプと制御システムを接続し、送水流量により最適な送水圧力を演算してポンプの回転速度をインバータ制御する『設定圧力変動と回転数制御』を導入することで、必要最小限の電力でポンプを運転することを実現しました。(末端空調機の2方弁が作動する範囲内で設定圧力と流量を変動させるので空調機制御の影響はありません)。この取り組みの結果、電気使用量を年間65MWh削減する事が出来ました。

設備更新による使用エネルギーの削減
日清紡マイクロデバイスAT(株)では、構内の照明をLED化する省エネルギー活動を推進しています。事務所では、照明器具1台ずつに個別スイッチを設け、エリア毎のON/OFFに加え、器具単独でのON/OFFにより省エネ意識の向上にも役立てています。事務所(蛍光灯145台)、体育館(水銀灯24台)のLED化による電力量の削減は42MWh/年となりました。
また、生産工程では装置の駆動や製品の搬送に大量のエアー(圧縮空気)を使用しますが、この供給源であるエアーコンプレッサーの老朽化による更新時に、高効率機種の選定や大型化による稼働台数の抑制を行い、電力量の削減を図りました。具体的には、低圧コンプレッサーの更新で、従来は160kW装置2台が必要でしたが、既存の能力の2倍の装置(275kW)を導入することで、装置1台で賄うことができ、効率の良い台数制御運転が可能となりました。ドライヤーの更新ではインバータ制御機を導入し、また高圧コンプレッサー更新では、不要な昇圧をカットする省エネロジックで7%の電力削減ができる装置を導入しました。
これらにより96MWh/年の電力量を削減することができました。

さまざまな省エネへの取り組み
日清紡マイクロデバイス福岡(株)では以下の省エネ対策を実施しました。
①送水ポンプ設備エコポンプ化
渦巻型ポンプおよびモーター老朽化のため、高効率なエコポンプにプレミアム効率モーター(IE3)を組み込んだエコポンプユニットを、常温冷却水(2台)および温水用(2台)に導入しました。常温冷却水エコポンプ化(37kW)では、45MWh/年の削減、温水エコポンプ化(15kW)では11MWh/年の削減となりました。
②L23系統200V系変圧器高効率化
稼働33年経過した変圧器(750kVA×2台)は、2系統による並行運転仕様でしたが、負荷状況、過去の故障履歴も無いことを考慮し、高効率変圧器(1,000kVA×1台)の単独仕様にて更新し、19MWh/年の削減となりました。
③非常灯照明LED化
一般照明(1,564本)のLED化は2019年度までに完了し、同年より非常灯照明(223本)のLED化を推進中で、2020年度までに85本完了しています。2021年度は18本のLED化を完了し、5MWh/年の削減となりました。残り120本の非常灯照明のLED化を今後も継続していきます。
電力削減状況として、2021年度は、生産負荷が前年度比22.0%増により、電気使用量が前年度比7.3% (2,166MWh)増と悪化しました。2022年度は、1月に完了したL24系統低圧盤(200V系)の更新による高効率化(18.8MWh/年削減)、5月完了予定の純水MF(精密ろ過)系インバータ化と工場棟屋根遮熱塗装、および非常照明LED化等の施策を行います。また、ノンフロンインバータターボ冷凍機(R-1・2計2台)の導入に向けた事前工事(4月完了予定)を2021年12月より開始しています。

海外事業所での省エネ活動
タイにあるNisshinbo Micro Devices (Thailand)でも省エネ活動を積極的に推進しています。
①LEDランプへの全社的切り替え
2017年度より蛍光灯をLEDランプに切り替える取り組みを実施しており、2021年度には残り全ての蛍光灯をLEDランプに切り替えることを検討しました。LEDランプは、消費電力が少ないだけでなく、光量が多いのが特徴であり、蛍光灯より少ない本数のLEDランプで代用することができます。2021年度は、6月、7月、12月に1,493本の蛍光灯を1,200本に交換し、16.4kW、144MWh/年、86.1
t-CO2/年を削減することができました。
②主排気ファンへのインバータ適用
2021年7月、モールド工程における主排気ファンにインバータを導入しました。モールド工程とは、ワイヤボンディングされたICとリードフレームを樹脂で封止する工程です。
従来、モールド装置からの排気はダンパーでその量を調節していました。今回のインバータ導入により、7.2kWから1.9kWへ74%削減(5.3kW削減)、46MWh/年、27.8
t-CO2/年を削減することができました。

プレート処理工程における省エネ化
アメリカのNisshinbo Automotive Manufacturing Inc.は、ブレーキディスクパッドを製造しています。同社では、このディスクパッドのプレート処理工程における予熱乾燥炉の温度制御を見直すことにより使用電力を削減する取り組みを計画、実行しました。
検証実験の結果をもとにプライマー乾燥に最低限必要なエネルギーを算出し、予熱乾燥炉の温度を従来より下げた結果、79.2kWhの電力消費を削減することができました。この取り組みにより、665MWh/年の節電につながりました。
デマンドレスポンス事業参加による電力削減
韓国のSaeron Automotive Corporation(SAC)では 、2020年12月から電力需要に応じ電力消費を抑えるデマンドレスポンス(Demand Response)事業に参加しています。デマンドレスポンスとは、電気の需要(消費)と供給(発電)のバランスをとるために、需要者側の電力を制御することです。あらかじめ電力会社と契約を結び、電力需給逼迫時に電力会社からの要請に応じて節電するほか、工場で余っている電力量を電力会社に入札し、落札された容量を電力取引所に販売する仕組みです。SACではこの仕組みを活用し、2021年は119MWhの電力が落札されました。
クーリングタワー循環ポンプ改造による省エネ推進
日清紡メカトロニクス(株)
美合工機事業所では、1工場で成形機を19台使用しており、その金型の冷却用で冷水設備を設置しています。冷水設備には15kWが2台、11kWが1台、計3台のチラーがあり、この3台のチラー冷却用として、クーリングタワーにより冷却水を3.7kWの循環ポンプを使用して循環させています。
このクーリングタワー循環ポンプは、改造前までは、水温、季節に関係無く、事業所稼働日は24時間運転していたため、電力の無駄使いとなっていました。
今回、内製によるクーリングタワー循環ポンプへのインバータ化を検討し、チラー入口に温度センサーを取付け、水温設定20℃で、ポンプ回転数を制御することで適正流量になるよう改造を実施しました。
この改造により、クーリングタワー循環ポンプ年間電力量を42%削減、11MWhの省エネとなり、4 t-CO2削減となりました。

改善活動による省エネ推進
日清紡メカトロニクス(株) 浜北精機事業所では、省エネを推進するための改善活動を行っています。
工場棟屋上空調機械室の排気ファン(0.52kw×8台)は、これまでは商用周波数(60Hz)の最大負荷でサーモ間欠運転していましたが、温度によって能力過剰となり電力のムダ使いとなっていました。そのため、サーモ間欠運転をインバータ制御に変更し、室温が32℃以上の時は55Hz、18~32℃では20~50Hz、18℃以下では停止となるように設定しました。これにより、年間16MWhの省エネとなりました。
また、工場棟の空調に使用している空冷冷凍機は、夏季には熱負荷のため定格電流を超える高負荷運転になることがありました。そこで散水ノズルを設置し、外気温が27℃以上になった時に散水を行うように設定しました。散水によって設備周辺環境の温度を下げ空冷冷凍機の負荷を低減させることにより定格電流内に抑えることができ、さらに年間10MWhの省エネとなりました。

セントラルミストフィルター設備投入による省エネ推進
中国での環境意識の高まりを受け、日清紡大陸精密機械 (揚州) 有限公司では、工場内の各設備から発生する溶剤ミストの回収方法を、従来の個別ミストフィルター装置から、セントラルミストフィルター設備に変更することによって、より効率的に回収できるようになりました。また、中国では危険物として廃棄する使用済みフィルター廃棄量の大幅な削減も実現しました。
さらに、従来の方式では各設備機器の上部に設置された個別のミストフィルターで処理した排気をVOC※ 設備に集約していましたが、セントラルミストフィルター設備では各設備機器とVOC設備の配管を直結してミストを集約的に処理する方式に変更したことで、個別のモーター駆動に代わって一台の大型モーターで効率的にカバーできることとなり、使用電力の大幅削減につながり、年間で147MWh削減することができました。
※ VOC(Volatile Organic Compounds):揮発性有機化合物
反応釜温調システム変更による電力量及び燃料の削減
日清紡ケミカル(株) 徳島事業所では、樹脂添加剤製品である「カルボジライト®」を反応釜で製造しています。反応工程での加熱冷却は190℃高温熱媒と5℃低温熱媒の注入量で調整しています。2021年度は、省エネルギー対策として2つのテーマに取り組みました。
①高温熱媒をコントロールする弁を小型化し、細かな注入流量調節を可能にすることによって無駄な熱媒注入が無くなり、温度ムラが減少したことで加熱装置および冷却装置の負荷が低減されました。
②反応釜温度調節不要時、反応釜温調ポンプは反応釜へ熱媒を供給しないバイパスラインで運転を継続していましたが、反応釜温調ポンプを停止させるプログラムを導入しポンプの使用電力が減少しました。
以上の対策を行なった結果、年間で使用電力は58MWh、灯油燃料使用量は2.7kLの削減となり、二酸化炭素は40 t-CO2/年の削減を達成しました。