統合レポートハイライト

写真左
日清紡ブレーキ(株)
代表取締役会長
西原 孝治

写真右
TMD Friction Group
プレジデント&グループ CEO
ジョン ハドソン

TMD Friction Groupが日清紡グループに加わって5年が経過しました。
それぞれがお互いから得たものは何でしょうか?

ハドソン : 日清紡ホールディングス(株)が株主となる前は、TMD社は12年間にわたってプライベート・エクイティ(PE)の所有下にありましたが、彼らの経営は、目先の1、2年に焦点を合わせがちです。よって当社が再び戦略的な親会社のもとで活動できるのは、とてもありがたいことでした。

日清紡グループと一緒になった今、我々には、大組織の後ろ盾があります。成長戦略を策定するときにも、日清紡ブレーキ(株)の皆さんと一緒に5年から7年、時には10年かそれ以上という長期的な枠組みで考えることができます。

この恩恵は、計り知れません。TMD社の社員は、自分たちがずっと大きなファミリーの一員であることを感じていますが、このことは、長期ビジョンを社員に説明する際に、重要なことです。また、日清紡ブレーキ(株)の皆さんとは、共通の製品開発プロジェクトについてオープンに話し合うことができますし、次世代製造技術をどのように展開するかについてのアイディアを共有することもできます。

西原 : 収益面では、TMD社が日清紡グループに入って最初の決算となった2012年度において、のれん償却後の営業利益は43億円の赤字でした。当期は、ほぼブレークイーブンまで回復しています。利益が改善した43億円の内訳は、TMD社が30億円、日清紡ブレーキ(株)が25億円、円安によるのれんの円換算額の増加が△12億円となっており、TMD社の利益は、当社グループに大きく貢献していることがわかります。

日清紡ブレーキ(株)は、1990年代後半から初めて海外展開を始めました。海外数カ所に工場をつくったことで、グローバル化が進んだと言われていたのですが、TMD社と一緒に仕事をしてみて、やはり日清紡ブレーキ(株)のオペレーションは、まだまだ日本市場の延長線上にあり、国内色が強かったと感じています。TMD社とのお客様の違い、国の違い、仕事の方法の違いなどを認識することによって、日清紡グループのブレーキ事業は、真のグローバル化へのステップが見えてきたと思っています。

TMD社と日清紡ブレーキ(株)の融合は、どの程度進んでいますか?

西原 : 2011年11月にTMD社の買収を完了する以前から、実は我々は、ミッション、バリュー、ビジョンについての話し合いを開始していました。全く文化の異なる会社が最初に上手くやっていくためには、理念の共有が重要です。もちろんそれは簡単なことではありません。日本的な考え方と西洋的な考え方をどうやって結びつけるかということに、時間を割きました。
日清紡グループでは、企業公器、至誠一貫、未来共創という企業理念がありますが、この精神をTMD社に理解してもらうため、京セラ(株)の創業者・稲盛和夫さんの著書にある「PASSION」という概念を導入しましたね。

ハドソン : 「PASSION」とは、Profit「利益」、Ambition「大望」、Sincerity「誠実さ」、Strength「強さ」、Innovation「創意工夫」、Optimism「積極思考」、Never Giving up「決してあきらめない」の頭文字をつなげたフレーズです。日清紡グループの企業理念についてみんなで考えてもらうために、PASSIONに関連付けた冊子を作成してTMD社の全社員に配布しました。
この5年間の我々のやり取りで、実に素晴らしかったのは、お互いが、相手から採り入れたいプロセスやアプローチを特定することができたことです。こうした共有化を推進したおかげで、お互いに活用できるさまざまなスキルや強みが明らかになりました。例えば、戦略策定や長期事業計画について、TMD社と日清紡ブレーキ(株)はそれぞれ違ったアプローチを採用していました。そこで、お互いのアプローチの良い部分を組み合わせて、TMD・日清紡ブレーキによる新たな長期計画プロセスを策定しました。同じように、次世代銅フリー素材の共同開発でも、認識や知識の共有を図りました。

西原 : 我々は最初に、オポチュニティーチームというのをつくりました。TMD社と日清紡ブレーキ(株)の専門家を数名ずつ選んで、両社の全世界のさまざまな拠点を一緒に見て回るというツアーを実施し、その上で我々はいったい何を最初にやったらいいのかということを検討しました。
R&Dでは、共通のグリーンガイドラインをつくりました。これは将来の摩擦材で環境を考えたときに、使ってよい原料、使ってはいけない原料の基準です。
調達は一番成果が得やすい領域ですが、ジョイント・チームを立ち上げ、共同購買でコストを下げるという活動をずっと続けています。
ロジスティクスについては、TMD Japanを日清紡ブレーキ(株)の館林事業所に移動するなど、統合を図りました。
また、私とハドソン社長、韓国のSaeron AutomotiveCorporation(SAC社)のSeo社長に加えその他数名で、グローバルマネジメントチーム(GMT)をつくり、共通の課題や方向性について共有し決めていくという形をとっています。

ハドソン : GMTの最も重要な側面は、この会議のおかげで、我々が一つの部屋に集まって、お互いの顔を見ながら共通の話題を話し合えることだと思います。これは、日清紡ブレーキ・TMDという組織内に、長期的な協業関係をいかに築いていくのかということです。このような場がなければ、我々は多くのチャンスを逸してしまうでしょう。
ほかには、異文化意識を育むプログラムも実施しています。TMD社の組織は、日本から中国、ヨーロッパ、ブラジル、メキシコまでグローバルに広がっていますが、それぞれの国にそれぞれの文化があります。TMD社では、上級管理職として数多くの国際的な人財がいるため、さらなるグローバル化を望む日清紡グループをサポートしています。しかし、それでもなお、社員たちは異文化の存在に留意し続けていく必要があります。そうしないと、簡単に、自分たちが理解できることや自分たちが経験したことだけの状態に、自動的に逆戻りしてしまうからです。ですから、これからも、話し合いを継続し、ミーティングの機会を継続的に持たねばなりません。こうして我々は、一つのチームとしてのアプローチを着実に構築しているのです。

西原 : 現在、日清紡ブレーキ(株)の本社には、TMD社からドイツ人が一人、SAC社から韓国人が一人来て、一緒に仕事をしています。CSRのテーマで、TMD社と日清紡ブレーキの社員を一緒に教育するプログラムも始まります。R&Dや品質保証、工場の生産技術などについて、機能別のグローバル会議を、それぞれ年に一度開催しています。

ハドソン : 人事やITにおいても同様の施策を行っています。ほとんどすべての機能において、定例会議を開催しています。TMD社内では、人事会議、R&D会議など、多くのグローバル会議を開催していますが、こういった会議には、日清紡ブレーキ(株)の皆さんにも参加いただいています。また、日清紡ブレーキ(株)にも同様の会議があって、そちらにはTMD社のメンバーが参加しています。これらすべてはお互いをより良く理解するための学習プロセスの一環ですが、次世代製品や次世代製造技術の開発にも役立っています。

西原 : 2016年からは、TMD社、日清紡ブレーキ(株)、SAC社のすべての拠点で改善を目指すプロジェクト、「MissionZero, Step by Step」を開始しました。

ハドソン : このプロジェクトのゴールは、事故率ゼロ、品質問題ゼロの達成です。日清紡ブレーキ(株)とTMD社の世界中の全事業所で、「カイゼン」プロジェクトを実施しています。安全に注力したプロジェクトもあれば、品質保証、あるいは工場の効率化に注力したプロジェクトもあります。こういった「カイゼン」プロジェクトのベストプラクティスを共有するために共同発表会を行っています。今年は日清紡ブレーキ(株)の館林事業所で開催されましたが、TMD社からは、世界各地の「カイゼン」チームを代表して約20名が参加しました。そこでは、日清紡ブレーキ・TMDの中から、最優秀「カイゼン」プロジェクトが選出されますが、「カイゼン」チームが一堂に会することの最大の意義は、例えば、メキシコのケレタロ工場の取り組みと比較して、館林工場の手法はどうだろう、ルーマニアではどうだろう、という理解が芽生えることです。この結果、グループ全体でベストプラクティスの共有が可能になります。

ドイツとブラジルの生産体制の再編は進んでいますか?

ハドソン : どちらの移転計画も、予定どおり順調に進んでいます。まずブラジルですが、現在の工場は築50年で、住宅地として非常に人気のあるエリアの真ん中にあります。工場周辺の道路は狭く、原材料を搬入するのも完成品を搬出するのも一苦労です。また、近隣住民の方々は、工場の近くで暮らすことを望んではいません。そこで、日清紡ホールディングス(株)のサポートを得て、工場を20キロほど離れた工業地帯に移転するプロジェクトを発足させました。2017年中の移転を目指しています。現在の敷地は、土壌改善を施して売却します。
ドイツでは、二つの工場がお互い75キロも離れていない場所にあって、どちらも乗用車メーカーに新車向け部品を供給しています。理由は多くありますが、我々はこの二つの工場を一カ所にまとめることにしました。一方の工場が、現在のブラジルの工場のように住宅地に近いということもあります。しかし、最大の理由はコスト削減です。
工場を二つ稼動させるというのは、生産量の多い工場を一つ稼動させるよりも、割高になります。そこで、エッセン工場の敷地に新たな施設の建設を開始しており、2018年末までの完成を予定しています。
ブラジルでもドイツでも、新施設には次世代生産技術を導入します。これには大きな効果が期待できます。まず、新技術を用いて、製造過程の必要人員を削減することができます。また、製品のさらなる品質向上を目指して、原材料の保管・処理・混合に、日清紡ブレーキ(株)のルールを取り入れます。我々は、ブラジル、ドイツの両国において、巨額の投資を行い、決められた次世代の生産ロードマップに沿って、技術面での大幅なアップグレードを図ります。
以上より、生産パイプラインでは、単価と品質の両方を大きく改善することができます。社員たちにとっては、新たなスキルを習得する機会となるでしょう。また、設備の自動化やオンラインでの品質管理検査に向けて、さらなるIT投資も必要です。

TMD社と日清紡ブレーキ(株)の協業をさらに発展させるために、何をすべきですか?

西原 : 基本的には今の活動を続けていくというのが重要だと思います。M&Aに関する多くの事例研究をしていますが、日本的な製造業の良さをグローバル・スタンダードに発展させていくために、単純な合併は良くないと思っています。お互いに良いところを残しながら、一つひとつ共同活動を増やすことが、両社の融合の近道です。ただし、マネジメントについては、最終的には一つの組織にしたい。時期は決めていませんが、そのつもりです。

ハドソン : いくつかの分野では、すでに大きな進展があったと思います。例えば、アフターマーケット事業では、TMD社のアフターマーケットチームが、日清紡ブレーキ・TMDとして同事業の成長をリードすることで合意し、すでに始動しています。調達においては、調達のスキルとプロセスをまずTMD社全体で使用し、それをグループ全体に拡大するために、プロジェクトチームを設置しました。

西原 : 回生ブレーキや自動ブレーキが登場し、我々のビジネスはこれから大きく変わっていくかもしれません。しかし、一番重要なのは、我々の技術力、問題解決能力によって、お客様に満足してもらうことです。その能力を高めながら、グローバルにすべてのお客様に満足していただけるような能力と体制を築いていきます。

ハドソン : 引き続き、コミュニケーションを推進し、学習プロセスを推進し、人事交流を推進していけば、我々は、力強い未来をともに実現できると考えています。

※ ハイブリッド車や電気自動車に搭載されている、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収するブレーキ。このブレーキと従来の油圧ブレーキの併用により、摩擦材の摩耗寿命は延びると考えられる。

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