水資源保全

基本的な考え方

日清紡グループは、「行動指針」 に環境負荷への認識と配慮を掲げ、資源循環の質の向上を視野に、節水・リサイクルなどの推進に取り組み、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。当社グループの環境目標に売上当たりの水使用量の削減を掲げ、KPI を管理して計画的に対策を講じています。

【主な対策】

  • ①ISO14001の活動を通じ、節水活動を推進
  • ②製造拠点での節水タイプの設備導入、水使用量の削減、排水処理水の再利用などの活動拡大
  • ③水事情の異なる海外事業所における、雨水の利用や水の循環保全(地下水への戻し)など、持続可能な取水への取り組み
  • ④繊維事業における、取水した井戸水を浄化し、その一部を近隣住民に無料で送水する活動
  • ⑤化学品事業における、水処理用微生物担体の提供による、国内外の排水処理分野への貢献

※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標

推進体制については、「環境への取り組み」の「推進体制」の記載をご参照ください。

日清紡グループの具体的な取り組み

水使用量

日清紡グループの水使用量実績は、6,176千m3と前年度比 12%減少しました。売上当たりの水使用量は12.0m3/百万円となり、前年度比13%減少しました。繊維事業における取水方法の改善により、水使用量が減少しました。

水のリサイクル量実績は、967千m3でした。前年度比21%増加しました。繊維事業においてスパンレース(水流交絡法)不織布の生産で使用した水を空調設備で再利用しています。

※ スパンレース:繊維を高圧水流により交絡させて製造する不織布

水使用量と売上当たり水使用量

水使用量と売上当たり水使用量

※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。

水リサイクル量の推移

水リサイクル量の推移

※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。

事業別水使用量の推移

事業別水使用量の推移

※1 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。

※2 2019年度よりエレクトロニクス事業を無線・通信事業とマイクロデバイス事業に分離しました。

水リスクの把握と監視

日清紡グループでは、世界資源研究所(WRI)が発表しているAQUEDUCT水リスク地図 を活用して、当社グループの全事業所および主要なサプライチェーンの水リスク評価を実施しています。
AQUEDUCTによる評価で、当社グループ全事業所のうち7拠点(インドのNisshinbo Mechatronics India Private Limited、中国の賽龍(北京)汽車部件有限公司、賽龍(煙台)汽車部件有限公司、Shijiazhuang TMD Friction Co., Ltd.、インドネシアのPT. Nikawa Textile Industry、PT. Nisshinbo Indonesia、PT. Naigai Shirts Indonesia)が「非常にリスクが高い」地域に該当しています。いずれの事業所も、現在の水使用量を考慮すると事業活動に大きな影響を及ぼす可能性は高くないと捉えています。
また、主要サプライチェーンでは11拠点(繊維事業の取引先である在インドネシア企業、在カンボジア企業、在中国企業、およびブレーキ事業の取引先である在中国企業)が「非常にリスクが高い」地域に該当しています。
当社グループでは、「非常にリスクが高い」と評価された事業所およびサプライチェーンについて、状況の監視を継続しています。

また、気候変動シナリオ分析においても2050年時点での洪水によるリスク評価を行っています。想定される洪水による物的損傷や休業損失の発生に対し、リスク低減の対応策を進めていきます。

※ AQUEDUCT水リスク地図:12種類の水リスク指標を基に作成された地図で、水リスク指標には「物理的な水ストレス」、「水の質」、「水資源に関する法規制リスク」、「レピュテーションリスク(風評リスク)」などが含まれている

水リスクの把握と監視
水リスクの把握と監視

CDP水セキュリティ2022評価

CDPは、環境分野に取り組む国際NGOです。CDPの評価は、CDPが世界18,700社以上の企業、1,100以上の都市・州・地域を対象に調査を行い、気候変動や森林減少、水のセキュリティといった問題にどのように効果的に対応しているかについてAからD-のスコアで評価するものです。日清紡グループは、「水セキュリティ2022」で「B-」評価を受けました。

CDP水セキュリティ2022評価
CDP水セキュリティ2022評価

グループ会社における活動事例

汚泥回収設備の変更による水削減効果

NJコンポーネント(株) 山陽事業所ではフェライト製造部門の研磨工程において、加工水を含んだ研磨スラッジの脱水による汚泥処理を開始しました。

フェライトコアは要求された性能を得るため、研磨加工をする必要があります。研磨加工では切削抵抗を緩和するために研削材を添加した加工水を使用し、加工水は循環させて使用しています。使用した加工水には研削時に発生する研磨スラッジが含まれます。そのため、循環させて使用するためには研磨スラッジと加工水を分離する必要があります。分離方法として従来は、加工水の循環経路にスラッジを沈殿させるためのタンクを設置し、沈殿したスラッジを定期的に回収していました。

しかし、この方法ではタンク内の加工水も含めて廃棄されるため、研磨スラッジとともに大量の加工水が廃棄されていました。この加工水の大量廃棄を改善し水使用量の削減を図るため、スラッジの回収方法を従来の沈殿分離方法からスラッジの水分を取り除く、脱水分離方法に変更しました。これにより加工水を含まないスラッジのみの廃棄が可能となり、加工水廃棄による新たな加工水の補充量を50%削減することができました。

脱水による汚泥処理
脱水による汚泥処理

純水設備更新による水使用量の削減

日清紡マイクロデバイス(株) 川越事業所では、純水製造設備の一部である樹脂塔(水の不純物をイオン交換で取り除き水の純度をあげる設備)を更新し水の使用量削減に取り組みました。

半導体ウエハプロセスの中で各工程前後に実施される洗浄工程に使用される純水は、ウエハ表面の微細なゴミやチリなどを落とし、残渣しないようします。残渣は製品品質の歩留りに大きく影響するため、純水は大変重要なインフラのひとつになります。その純水を製造する設備の樹脂塔更新においては、環境負荷を考慮し、排出してしまい無駄になってしまう水の使用量を、なるべく少なくするためコンパクトで一体型の樹脂塔へ変更しました。

このことにより、2022年末からの稼働で、年間約18,000 m3の削減量となり、対前年比約28%の削減を見込んでいます。

一体型の樹脂塔
一体型の樹脂塔

生産用上下水道使用量の削減

日清紡マイクロデバイスAT(株)では、ウエハダイシング(ウエハをカットして1個1個のチップを切り取る製造工程)や、基板ダイシング(素子が封止された基板をカットし個片化する製造工程)に多量の純水や上水道を使用しています。これらを削減するために、同工程からの排水を回収し再利用するためのろ過装置を導入しました。

ろ過装置の心臓となるろ過部には中空糸膜(一端が閉じたストロー状繊維膜のことで、壁面に無数の超微細孔があり、圧力を加えた水がここを通過時に、不純物を除去できる)を使用しており、この装置でろ過することで上水道以上の水質が得られます。回収した水を製造工程に送水再利用することで、大幅な上水道削減を達成しています。2022年の実績としては年間70,000 m3削減しており、同量の下水道も削減となりました。

導入したろ過装置
導入したろ過装置

生産設備排水のリサイクル

タイにあるNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.では、水使用量削減の活動を強化しています。2022年6月、ダイシング装置からの廃水をUF(Ultra Filter:限外ろ過)ユニットとRO(Reverse Osmosis:逆浸透)ユニットでリサイクルし、各種装置の冷却水用に再利用することで水使用量削減を進めました。

限外ろ過は、高分子物質の回収と低分子物質の回収に用いるユニットです。逆浸透は、極めて低分子量の成分を分離することができ、水の精製を目的としたユニットです。同社では、多数のICが形成されたウエハを1個1個のチップに分離するダイシング装置の排水系統を該当のユニットに接続し、設備排水のリサイクルを試みました。

この活動により、冷却塔の給水を年間約 19,176 m3削減することが可能となりました。なお2023年も工場レイアウトを変更することで別エリアにあったダイシング装置を集約し、さらなる生産設備排水のリサイクルを推進する方針です。

ダイシング廃水タンク
ダイシング廃水タンク
廃水を収容するUFタンク
廃水を収容するUFタンク
純水製造用ROユニット
純水製造用ROユニット

真空ポンプ熱交換器冷却水運用変更による節水

日清紡ケミカル(株) 徳島事業所では、洗浄後の反応釜乾燥を水封式真空ポンプで真空乾燥を行っており、乾燥工程時間約6hrを必要とします。この間、反応釜内部の真空度を維持するためには水封用循環水の水温が重要であり、真空ポンプから発生する熱により循環水温度が上昇すると、マイナス圧環境下では循環水の水封部分に気泡が発生し、反応釜内部の真空度に悪影響を与えてしまいます。

真空ポンプ熱交換器は、循環水の温度上昇を抑えるため冷却水を常時通水させる運用をしていましたが、冷却水の通水は真空ポンプ運転時以外不要であることに着目し、真空ポンプ停止期間中は通水を停止して節水に努めた結果、2022年度の水使用量は、2021年度比1,400 m3の削減を達成しました。

綿素材の改良による無水染色技術の活用

ポリエステルなど疎水性繊維の無水染色には「超臨界CO2染色法」があります。無水染色は、染色工程で全く水を使用することなく、また染料を含む汚染水も発生させずに生地を染めることができる環境に優しく、水資源を使わない染色技術です。この工法はポリエステルなどに適応した分散染料を使用するため、従来は親水性である綿などの天然繊維の染色はできませんでした。

日清紡テキスタイル(株)は、セルロースの水酸基を疎水化することで、親水性の綿繊維を使用した生地でも「超臨界CO2染色法」による染色が可能となる技術を開発しました。現在、綿素材の染色工程では大量の水が消費され、使用済染料を含む汚染水も排出されていますが、この開発により環境に優しい無水染色が可能になりました。実用化に向けて生産性、コスト、堅牢度などの課題を解決するため、さらに研究を進めています。

冷却水再利用による排水量削減

中国の日清紡績(常州)有限公司は、先染シャツ地の形態安定加工を主とした整理加工工場として操業しています。

加工の際に生地を冷却するため、生地と接触するシリンダーロールの中に常温の工業用水を流して生地を間接冷却しており、今まではこの冷却用に使用した水を馬杭先染工場の排水処理設備に排水していました。

2022年8月からこの冷却用の水を馬杭先染工場の取水設備に戻すように変更し、ろ過、イオン交換による軟水化を行い工業用水として再利用することができるようになりました。結果8月~12月の5カ月間の水総使用量1,547 m3の内、704 m3(使用量の46%)を再利用しました。