基本的な考え方
ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、原材料の調達から、生産、流通、使用、廃棄に至る製品のすべてのライフサイクルにおける投入資源、環境負荷およびそれらによる地球や生態系への潜在的な環境影響を定量的に評価する手法です。日清紡グループは、「行動指針」に環境負荷への認識と配慮を掲げ、製品の使用段階も含めたライフサイクルを通じた環境負荷の低減を推進し、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。
【主な対策】
- ①国内外において同一のLCAソフトを利用可能にして利便性を向上
- ②LCAソフト活用講習会の開催により、運用者の育成・拡大を推進
- ③製品LCAの結果をもとに化学物質や廃棄物の排出量を削減
- ④製品開発段階からLCAを導入し、環境配慮型製品の開発に活用
推進体制については、「環境マネジメント」にあります「推進体制」の記載をご参照ください。
日清紡グループの具体的な取り組み
第5期3カ年環境目標(達成年度2024年度)
日清紡グループでは、2024年度を達成年度とする「第5期3カ年環境目標(第5期サステナビリティ推進計画)」において、環境経営の推進を重点活動項目とし、「ライフサイクルアセスメント※1(LCA)の推進」を達成するために、以下の目標・KPI※2 を定めました。
※1 ライフサイクルアセスメント:原材料から生産、使用、廃棄まで製品のライフサイクルをとおした環境負荷量の把握のこと
※2 KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
「ライフサイクルアセスメント(LCA)の推進」 売上に占める割合 60%以上
計画的に推進した結果、当社グループの2024年度の状況は、売上に占める割合が51%に減少しました。2024年度から活動を開始した国際電気グループを対象範囲に含めたためです。
第6期3カ年環境目標(達成年度2027年度)
2027年度を達成年度とする「第6期3カ年環境目標(第6期サステナビリティ推進計画)」では、第5期の取り組みを踏襲しKPI値の引き上げをおこないました。
「ライフサイクルアセスメント(LCA)の推進」 売上に占める割合 70%以上
「3カ年環境目標」の概要については「環境マネジメント」をご覧ください。
「サステナビリティ推進計画」の概要については「サステナビリティ推進計画とKPI」をご覧ください。
LCA活動の推進
日清紡グループは、LCAソフトを有効に活用しながら、LCA活動の拡大を図り、LCAデータを算出して環境負荷の把握を行い、製品規格や製造工程改善、さらには環境配慮型製品の開発を推進しています。
製品LCAの結果をもとに、製造エネルギーや化学物質の排出量を削減することは勿論のこと、製品開発段階からLCAを導入し環境配慮型製品の開発に活用することで、「持続可能な社会に貢献する製品」の拡販につなげます。

グループ会社における活動事例
RCレーダのライフサイクルアセスメント
日本無線(株)は、JRCモビリティ(株)で製造、販売しているRCレーダのハンディサーチ(NJJ-200K)のライフサイクルアセスメントを行いました。
RCレーダは、電磁波を用いた非破壊探査装置で、コンクリート構造物の内部を短時間で探査できます。これにより、埋設物や部材の厚さ、空洞などを現場で確認することが可能です。
製造段階では製造部門の使用電力、使用燃料などを金額ベースで按分し、また使用段階では年間90回のフル充電を行い、製品寿命8年と仮定し計算しました。
ライフサイクルでの温室効果ガス排出量は327 kg-CO2であり、部品収集段階が77%(253 kg-CO2)を占めており、製造段階が20%(65 kg-CO2)、使用段階が3%(8 kg-CO2)という結果になりました。
使用段階の温室効果ガス排出量が占める割合が少ない理由は、同社のRCレーダが小型計量で省エネ性能に優れ、一回の充電で7時間使用が可能であり、測定現場で一日使用できるためです。



ライフサイクルアセスメント(LCA)教育
(株)五洋電子では、設計部内においてライフサイクルアセスメント(LCA)の実施経験者が5名と少ないため、設計部技師10名を対象としたLCA教育を2024年11月に実施しました。
過去の事例紹介を行いつつ、ツールの使用方法を教育しています。教育を受講した設計部技師は、OJTの中で自身もLCAを実施しながら、各設計者へ教育し、2025年度はLCA実施経験者を17名に増やす計画です。この計画により、当社設計者の約50%にあたる人員がLCA実施経験者となります。
同社は、2027年度にLCA適用製品70%以上という目標を掲げています。順次LCA実施経験者を拡大し、2027年度には実施経験者80%を目指し、LCA実施経験者の拡大を図っています。
開発段階でLCAを積極的に活用することにより、設計者自身が製品ライフサイクルにおける環境負荷を把握し、負荷低減のための技術や資材の導入を図った製品の開発につなげていきます。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の活用
日清紡ケミカル(株)では、これまでカーボン製品のうちコート製品に対してライフサイクルアセスメント(LCA)を実施していましたが、2024年度はコート製品にプレート製品と接着剤を加えた3つのカテゴリについてLCAを実施して、カーボン製品の生産などに伴う環境負荷の現状確認を行いました。
これにより、温室効果ガス排出量などの環境負荷を可視化できました。各製品の製造工程において、何に注力すれば、温室効果ガスやごみの分別徹底やエネルギー使用量の削減など環境負荷の低減効果が得られるのかが視認できるようになりました。


粉状カルボジライトのライフサイクルアセスメント(LCA)
日清紡ケミカル(株) 徳島事業所では、生分解性プラスチックの耐加水分解添加剤として粉状カルボジライトを製造し、販売しています。
2024年に粉状カルボジライトについてライフサイクルアセスメント(LCA)を実施し、製品システムの原料調達から製品の廃棄および製造設備の洗浄までインベントリ分析※ を行いました。これにより、温室効果ガス排出量の定量化が可能となり、環境負荷が大きいホットスポットを特定しました。
その結果、主原料の製造と輸送に大きく環境負荷がかかっていることが判明したため、主原料を温室効果ガス排出量の少ないものに変更することで、環境負荷の低減が実現できることがわかりました。LCA結果を活用し、環境負荷低減活動を推進していきます。
※ インベントリ分析:ライフサイクルアセスメントの一部であり、製品やサービスのライフサイクルにおける入力と出力のデータを収集するプロセス


紡績糸のライフサイクルアセスメント(LCA)比較
ブラジルのNisshinbo Do Brasil Industria Textil LTDA.では、主要生産している従来の紡績糸(リング糸)と設備投資を進めている革新紡機で生産された紡績糸(VORTEX糸)のライフサイクルアセスメント(LCA)を実施し、使用エネルギー量を算出することで、その削減効果を検証しました。
その結果、紡績工程を短縮させた革新紡機が生産するVORTEX糸は、従来のリング糸と比較して、製造時のエネルギー使用量が約30%少ないことが判明しました。
同社は2014年からこの革新紡機を導入し、販売を伸ばしながら従来設備からの更新を実施してきました。市場ではまだまだ従来の紡機で生産されたリング糸を用いた繊維製品のシェアが圧倒的に高い中、お客さまとの取り組みにより積極的な商品開発を行い、VORTEX糸の拡販を進めています。
繊維製品が与える地球環境への負荷を原材料である糸から低減させることにより、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。

