気候変動対策の推進
基本的な考え方
日清紡グループは、「行動指針」 に環境負荷への認識と配慮を掲げ、温室効果ガスの削減はもとより脱炭素型の技術・製品・サービスを提供し、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。当社グループの環境目標に温室効果ガス※1 の排出量削減および「持続可能な社会に貢献する製品」の拡販を掲げ、KPI※2 を管理して計画的に対策を講じています。
【主な対策】
- ①ISO14001の活動を通じて、温室効果ガスの排出量削減を推進
- ②製造拠点でのScope1(自社での排出)およびScope2(電力などサイト外での排出)の削減活動、環境配慮型設備の導入を推進
- ③太陽光発電設備の新設、再生可能エネルギー由来電力への切り替えを推進
- ④無線・通信事業における、気候変動による異常気象適応製品(洪水被害を未然に防ぐダム・河川管理システム、災害発生時に地域住民を守る防災情報通信システムなど)の提供
- ⑤マイクロデバイス事業における、半導体製造時に使用するPFC※3 等ガス除害装置の増設
- ⑥化学品事業における、断熱製品のノンフロン化への取り組み、および水素社会発展に貢献する燃料電池の基幹部品であるセパレータ部材の開発、製造、販売
※1 温室効果ガス排出量は、Scope1+Scope2が対象
※2 KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
※3 PFC:半導体製造工程におけるドライエッチングなどで使用されるフッ素系温室効果ガス
推進体制については、「環境への取り組み」にあります「推進体制」の記載をご参照ください。
日清紡グループの具体的な取り組み
温室効果ガス排出量削減目標
日清紡グループでは、気候変動関連の事業機会の取り込みとリスクの低減を目指しています。気候関連リスクを低減するため、2050年までのカーボンニュートラルを2022年6月に宣言し、2050年を達成年度とする長期環境目標を新設しました。カーボンニュートラルの達成を最重要課題として、省エネルギー活動や再生可能エネルギー由来電力への切り替え、PFC(パーフルオロカーボン)排出量の削減などの気候変動対策を積極的に推進しています。併せて、2022年6月、当社グループは温室効果ガス排出量削減に関する3カ年および中期環境目標を改定しました。
日清紡グループの温室効果ガス排出量削減目標
当社グループの環境目標については、「 環境への取り組み 」に、事業活動と環境負荷については、「 マテリアルバランス 」に掲載していますのでご覧ください。
TCFD対応の概要
気候変動は、国・地域を超えて地球規模の課題であり、温室効果ガスの削減は世界共通の長期目標となっています。日清紡グループでは、気候変動による事業機会の取り込みおよびリスクへの適切な対応を行うことが重要と考え、2021年度より、TCFD※ (気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に準じた気候変動シナリオ分析を開始し、2022年6月にTCFD提言への賛同を表明しました。
気候変動シナリオ分析の結果については、「TCFD提言に基づく情報開示」をご覧ください。
当社グループでは、気候変動シナリオ分析を通して、気候変動が将来、当社グループに及ぼすリスクや機会を特定し、事業戦略の策定に活かすことで、より柔軟で堅牢な戦略を立案し、将来のリスクに対するレジリエンスを高めていきます。
※ TCFD:金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース
環境データの第三者保証
日清紡グループは、温室効果ガス排出量(Scope1, Scope2)の環境パフォーマンスデータの信頼性向上のため、「日清紡グループ 温室効果ガス排出量データ 2022」にて、デロイト トーマツ サステナビリティ株式会社による第三者保証を受けています。
温室効果ガス排出量
日清紡グループの温室効果ガス排出量実績は、438.0 千t-CO2eと前年度比23%減少しました。エネルギー起源の温室効果ガスは、繊維事業で石炭ボイラーによる自家発電設備を停止し買電へ変換したこと、ブレーキ事業で太陽光・風力・水力発電由来のグリーン電力に、繊維事業で地熱発電由来のグリーン電力に切り替えが進んだことにより排出量が大幅に減少しました。
非エネルギー起源の温室効果ガスのうち84%をPFC(パーフルオロカーボン)が占めました。これは主として日清紡マイクロデバイス(株)の半導体製品製造工程から排出されたものです。
温室効果ガス排出量の推移
※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。
Scope別温室効果ガス排出量の推移
(千t-CO2e)
2018 (参考値)※1 |
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |||
温室効果ガス排出量 | Scope1 | (エネルギー 起源 + 非エネルギー 起源) |
263.4 | 243.8 | 246.7 | 237.9 | 134.6 |
(エネルギー 起源) |
187.0 | 183.1 | 187.7 | 173.7 | 66.7 | ||
(非エネルギー 起源) |
76.3 | 60.7 | 59.0 | 64.2 | 67.9 | ||
Scope2 | (エネルギー 起源) |
373.0 | 348.6 | 317.4 | 329.4 | 303.4 | |
Scope1 + Scope2 |
(エネルギー 起源 + 非エネルギー 起源) |
636.3 | 592.4 | 564.1 | 567.4 | 438.0※2 |
※1 上記の温室効果ガス排出量の推移グラフ同様の参考値を示しています。
※2 温室効果ガス排出量のデータは、「日清紡グループ 温室効果ガス排出量データ 2022」にてデロイト トーマツ サステナビリティ株式会社による独立した第三者保証を受けています。
【算定方法】
・Scope1:
エネルギー起源温室効果ガス排出量=Σ[燃料使用量×CO2排出係数※1]
非エネルギー起源温室効果ガス排出量=非エネルギー起源CO2排出量+Σ[CO2以外の温室効果ガス排出量×地球温暖化係数※2]
※1 「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく排出係数を使用しています。 ただし石炭は熱量の実測値に基づき算出した係数を使用しており、2022年度は1.896 t-CO2/tを使用しています。
※2 「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく地球温暖化係数
・Scope2:
エネルギー起源温室効果ガス排出量=Σ[購入電力量・購入蒸気量×CO2排出係数※3]
※3 購入電力は、日本国内は 「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく電気事業者別の調整後排出係数、海外は電気事業者別の排出係数または入手困難な場合は「IEA Emissions Factors」の最新の国別排出係数を使用しています。2021年度以前のデータは、IEA Emissions Factors 2021の各年の国別排出係数を使用しています。 購入蒸気は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく排出係数を使用しています。
※4 購入電力は、2020年度までは「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく電気事業者別排出係数の代替値を使用していました。2014年度データ以降の過年度データについては、※3の排出係数を用いて遡及的に修正しています。
【対象組織】
2022年度の集計の対象組織は、当社および連結子会社99社の計100社です。
事業別では、マイクロデバイス事業が温室効果ガス排出量全体の34%を占めました。続いて、ブレーキ事業が26%を占めます。
事業別温室効果ガス排出量
※1 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。
※2 2019年度よりエレクトロニクス事業を無線・通信事業とマイクロデバイス事業に分離しました。
温室効果ガス排出量に占める国内の割合は50%でした。
国内/海外温室効果ガス排出量
※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。
再生可能エネルギー
太陽光発電
日清紡グループで導入した太陽光発電設備は、2022年度通して安定的に稼働し、約6.2千MWhの発電をしました。 マイクロデバイス事業のNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.で太陽光発電設備を2022年4月より設置、稼働を開始しました。
設置事業所 | 設備容量(kW) | 稼働年 | 用途 |
---|---|---|---|
日清紡メカトロニクス(株) 美合工機事業所 |
430 | 2010 | 自家消費 |
日清紡ケミカル(株) 千葉事業所 |
150 | 2011 | 売電 自家消費 |
日清紡ブレーキ(株) 館林事業所 |
300 | 2011 | 自家消費 |
長野日本無線(株) 本社工場 |
110 | 2013 | 売電 |
日清紡ホールディングス(株) 徳島事業所 |
1,768 | 2013 | 売電 |
日清紡精機広島(株) | 1,020 | 2015 | 売電 |
日清紡マイクロデバイス(株) 川越製作所 |
19 | 2018 | 自家消費 |
Nisshinbo Micro Devices (Thailand) Co.,Ltd. | 1,524 | 2022 | 自家消費 |
合計 | 5,321 |
グリーン電力購入
日清紡グループでは、グリーン電力への切り替えを進めています。2022年度は、約61.4千MWhのグリーン電力を購入しました。
日清紡ホールディングス(株) 本社事業所は水力発電由来の非化石証書を、ブレーキ事業の日清紡ブレーキ(株) 館林事業所、Nisshinbo Somboon Automotive Co., Ltd.、Nisshinbo
Automotive Manufacturing Inc. は太陽光発電由来の電力を、TMD Friction UK Limitedは太陽光・風力・水力発電由来のグリーン電力を、繊維事業のPT. Nikawa Textile
Industry、PT. Nisshinbo Indonesia、PT. Naigai Shirts Indonesiaは地熱発電由来のグリーン電力を購入しています。
2022年度事業所別グリーン電力購入量
会社・事業所 | セグメント | 購入元 | 種別 | 購入量 (MWh) |
---|---|---|---|---|
日清紡ブレーキ(株) 館林事業所 |
ブレーキ | (株)ウエストエネルギーソリューション | PPA※太陽光 | 51 |
Nisshinbo Automotive Manufacturing Inc. | ブレーキ | Sterling Planet Inc. | 太陽光 | 923 |
Nisshinbo Somboon Automotive Co.,Ltd. | ブレーキ | WEST International (Thailand) Co.,Ltd. | PPA※太陽光 | 128 |
TMD Friction UK Limited Warrington | ブレーキ | Drax Power Ltd. | 太陽光/ 風力/水力 |
187 |
TMD Friction UK Limited Hartlepool | ブレーキ | Bryt Energy Ltd. | 太陽光/ 風力/水力 |
14,358 |
TMD Friction UK Limited Elvington | ブレーキ | Bryt Energy Ltd. | 太陽光/ 風力/水力 |
9 |
PT. Nisshinbo Indonesia | 繊維 | PT Perusahaan Listrik Negara (Persero) ("PLN") | 地熱 | 6,314 |
PT.Nikawa Textile Industry | 繊維 | PT Perusahaan Listrik Negara (Persero) ("PLN") | 地熱 | 37,838 |
PT. Naigai Shirts Indonesia | 繊維 | PT Perusahaan Listrik Negara (Persero) ("PLN") | 地熱 | 1,030 |
日清紡ホールディングス(株) 本社 |
その他 | 東京電力エナジーパートナー(株) | 水力 | 586 |
合計 | 61,424 |
※PPA:Power Purchase Agreementの略、電力販売契約
CDP気候変動2022評価
CDPは、環境分野に取り組む国際NGOです。CDPの評価は、CDPが世界18,700社以上の企業、1,100以上の都市・州・地域を対象に調査を行い、気候変動や森林減少、水のセキュリティといった問題にどのように効果的に対応しているかについてAからD-のスコアで評価するものです。日清紡グループは、「気候変動2022」で「B」評価を受けました。
経済産業省「ゼロエミ・チャレンジ企業」に選定
日清紡ホールディングス(株)は、「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」において、日本無線(株)は、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において、日清紡ケミカル(株)は、「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」において、取り組みが評価され、経済産業省「ゼロエミ・チャレンジ企業」に選定されました。
経済産業省は、一般社団法人日本経済団体連合会(以下「経団連」)や 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)、農林水産省と連携して、2050カーボンニュートラルの実現に向けたイノベーションに挑戦する企業をリスト化し、投資家などに活用可能な情報を提供するプロジェクト「ゼロエミ・チャレンジ」に取り組んでいます。
同省は、経団連や NEDO、農林水産省と連携して、脱炭素化社会の実現に向けて、イノベーションの取り組みに果敢に挑戦する企業を「ゼロエミ・チャレンジ企業」と位置づけ、2020年に続いて第二弾として、2021年10月の「TCFDサミット2021」で公表しました。
公表された企業リストは、「革新的環境イノベーション戦略」に紐付く経済産業省、農林水産省の事業や、NEDOが実施している45のプロジェクトを対象にしており、ゼロエミ・チャレンジの趣旨に賛同した623社がリストアップされています。
経団連「チャレンジ・ゼロ」に参加
一般社団法人日本経済団体連合会(以下「経団連」)が主導するプロジェクト「チャレンジ・ゼロ」(チャレンジネット・ゼロカーボン イノベーション)に参加しています。
「チャレンジ・ゼロ」は、経団連が日本政府と連携し、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」が長期的なゴールと位置づける「脱炭素社会」の実現に向け、企業・団体がチャレンジするイノベーションのアクションを、国内外に力強く発信し、後押ししていく新たなイニシアティブです。
日清紡ホールディングス(株)は、「チャレンジ・ゼロ」の趣旨に鑑み、事業活動を通じて温室効果ガスを削減し、脱炭素社会の実現に貢献できるよう、イノベーションの創出を推進していきます。
経団連「チャレンジ・ゼロ」公式Webサイト https://www.challenge-zero.jp/
脱炭素社会の実現に向けた、当社グループのチャレンジ事例が掲載されています。
グループ会社における活動事例
PFC等ガス除害設備の導入進捗と温室効果ガスの排出量削減状況
日清紡マイクロデバイス福岡(株)の温室効果ガス排出量削減対策は、排出量の多いPFC、および電力に重点を置き、電気使用設備の更新に併せた高効率機器導入やインバータ化、C3F8ガス(PFC)使用設備への除害装置導入の2本柱で活動しています。
2022年度の温室効果ガス排出量は年間33,128 t-CO2で2014年比27.3%減(12,437 t-CO2削減)となりました。PFCの排出量は16,998 t-CO2で略横ばいでした。12月中旬にPFC等ガス除害装置2台目の導入セットアップを完了。2023年度1月より2台体制となり、PFC排出量は年間4,018 t-CO2削減、総排出量は36.2%減(16,510 t-CO2削減)となる見込みです。
また、並行でPFC等ガス除害装置3台目の前倒し導入、CF4ガス使用設備への新たな除害設備追加導入などを同社は検討中です。
再生可能エネルギーの利用拡大
タイのNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.は、2022年4月に工場屋根に設備容量1,524 kWの太陽光発電パネルを設置しました。総パネル面積は10,184 m2 であり、工場棟最大限の発電パネル設置を実行しました。この取り組みにより、電気エネルギー使用量のうち年間約 2,107 MWh (938 t-CO2) を再生可能エネルギーに変更することが可能となりました。
この太陽光発電の稼働は当初2021年12月に開始する計画でした。しかし世界的な新型コロナウイルス感染症の影響を受け、発電パネル部材の調達に遅れをきたし、2022年4月にパイロット稼働となりました。そしてパイロット稼働3カ月を経て、2022年7月からフル稼働に至りました。
太陽光発電フル稼働開始以降、現在の発電量は当初の見積り通りで、順調に発電を継続しています。同社では引き続き発電量を監視し、再生可能エネルギーの安定利用を推進していきます。
オンサイトPPA太陽光発電
日清紡ブレーキ(株) 館林事業所では2022年12月よりオンサイトPPA※ を結び太陽光発電設備を導入し、2022年12月より発電を始めています。館林事業所の一部の屋根に、約3,698 m2の太陽光パネルを設置しました。システム容量は500 kWとなっており、年間発電量は年間約741 MWhを想定しています。また、温室効果ガスの削減効果については、年間約285 t-CO2、同事業所の温室効果ガス排出量の2.3%削減を見込んでいます。
太陽光発電設備の状況はWebブラウザを使用することで、当日の発電量、導入からの累計発電量、設備の異常有無・履歴などを、リアルタイムに監視することが可能です。今後も、太陽光パネルを載せるスペースが屋根にあるため、順次、太陽光発電設備を増設していく予定です。
※PPA:Power Purchase Agreementの略、電力販売契約
オンサイトPPAによる太陽光発電の導入
タイのNisshinbo Somboon Automotive Co., Ltd.では、オンサイトPPA を結び太陽光発電設備を導入し、2022年12月より発電を始めています。同社工場の屋根一帯に、約5,900 m2 の太陽光パネルを設置しました。システム容量は1,000 kWとなっており、年間発電量は年間約1,580 MWhを想定しています。また、温室効果ガスの削減効果については、年間約790 t-CO2、同社の電力使用により排出される温室効果ガスの約18%を見込んでいます。
太陽光発電設備の状況はWebブラウザを使用することで、当日の発電量、導入からの累計発電量、設備の異常有無・履歴などを、リアルタイムに監視することが可能です。今後は、蓄積されていく太陽光発電の各種履歴を用いて、より効率的な利用方法を模索し、さらなる温室効果ガスの削減に取り組んでいきます。
カーボンセパレータの製造・販売・開発体制の拡大
日清紡ケミカル(株)は、千葉事業所にて製造・販売を手掛けている燃料電池用のセパレータ生産能力増強を決定しました。
同社では、2009年に販売が開始された国内の家庭用燃料電池「エネファーム」への採用により、カーボンセパレータの製造・販売を本格的に開始しました。現在、カーボンニュートラルの達成に向けて世界各国での取り組みが加速している中、燃料電池はその実現に向けたキーデバイスのひとつとされており、データセンター、通信基地局、ビル、建設機械、小型発電機など定置用途の展開が世界各国で進んでいます。また、将来的にはトラック、バスなどの車載用や、船舶用、鉄道用などの市場拡大も有力視されており、重要構成品のひとつであるカーボンセパレータの需要もさらに拡大していく見込みです。
そのような状況の中、お客さまからの引合いも多くあり、工場増設による生産能力増強を決定しました。一方、次世代セパレータの開発にも着手しており、競争力強化に努めています。今後も事業活動を通じ、燃料電池市場拡大や地球環境保護に貢献し、持続可能な社会の実現に向け活動していきます。
インドネシアにおける再生可能エネルギー使用の取り組み
インドネシアには、地球全体の潜在的な地熱エネルギーの40%を上回る28,000 MWhが存在すると見積もられています。この資源量はアメリカに次いで世界第2位です。基本的な仕組みは、火山の地下などにあるマグマの熱によって温められた地下水の蒸気でタービンを回し、発電を行うというシンプルなものです。化石燃料を必要としないため環境負荷が低く、燃料市況に電力価格が左右されないこと、太陽光や風力発電など気象の影響を受けやすい他の発電方法と比べて、安定した電力を得られることなどが大きな特徴です。
日清紡テキスタイル(株)の在インドネシア子会社3社(PT. Nikawa Textile Industry、PT. Nisshinbo Indonesia、PT. Naigai Shirts Indonesia)において、国営電力会社(PLN)の地熱由来の電力に契約を切り替え、グリーン電力証明(REC)を取得しました。2022年度のインドネシア3社の地熱発電切り替えによる温室効果ガス排出量の削減は約40,000 t-CO2となりました。
バイオマス燃料の活用
インドネシアのPT. Nisshinbo Indonesiaでは主にドレスシャツやユニフォームの染色整理加工を行なっています。その加工工程である漂白、染色、樹脂加工などにおいては、加工液や洗浄水の昇温或いは生地乾燥のために蒸気や加熱オイルが必要で、ボイラーが使用されます。
同社では燃料として石炭も使用していますが、バイオマス燃料としてヤシ殻を積極的に利用しています。インドネシアは世界最大のパームオイル生産地であり、その生産過程で排出されるヤシ殻は、原料であるアブラヤシの成長過程でCO2を取り込んでいるため、燃焼によって放出されるCO2量がゼロと見なされます。このヤシ殻を積極的にボイラー燃料に利用することで石炭の使用量を減らし、CO2削減に努めています。
2022年度のヤシ殻などのバイオマス燃料を6,190 t使用し、石炭使用量を33%減少させ、約9,000 t-CO2の温室効果ガス排出を削減しました。今後も再生可能エネルギー源として、バイオマス燃料利用に努めていきます。