環境・生物多様性保全のための貢献活動
基本的な考え方
日清紡グループは、「行動指針」 に環境負荷への認識と配慮を掲げ、生物多様性保護への認識を深め、生物多様性保全活動を推進し、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。当社グループの環境目標に生物多様性保全活動の強化を掲げ、KPI※ を管理して計画的に対策を講じています。
【主な対策】
- ①自然生息地や重要な生態系の保全、絶滅危惧種の保護、環境美化活動
- ②地域や自治体、大学や地元企業、サプライチェーンなどとの連携活動
- ③事業所周辺の環境美化活動
※ KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標
推進体制については、「環境への取り組み」の「推進体制」の記載をご参照ください。
日清紡グループの具体的な取り組み
生物多様性民間参画パートナーシップに参画
日清紡ホールディングス(株)は、日本国内の企業・経済団体・地方自治体などから構成される「生物多様性民間参画パートナーシップ」に参画し、生物多様性の保全活動に取り組んでいます。
2015年度から生物多様性保全活動を開始し、国内では13事業所で活動を継続しています。また海外では、5事業所で生物多様性保全活動を展開しています。
「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」への参画
日清紡グループは、「経団連生物多様性宣言・行動指針(改定版)」に賛同しています。
「経団連生物多様性宣言・行動指針(改定版)」の詳細は下記URLをご参照ください。
https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/
084_honbun.html#p3
経団連は、SDGsや「ポスト愛知目標※」など内外の大きな流れを受け、本宣言・行動指針の改定を2018年に行いました。改定された宣言は「自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現」を目指すものです。
また経団連は、「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」を公表しています。これには改定版宣言・行動指針への賛同を表明した企業・団体名(ロゴマーク)が掲載されており、当社グループも紹介されています。
「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」について、下記URLをご参照ください。
https://www.keidanren-biodiversity.jp/
当社グループは2009年、経団連が制定した「経団連生物多様性宣言・行動指針」に賛同し、調査・教育期間を経て2015年から生物多様性保全活動を開始し、活動範囲を拡大してきました。
※ 「ポスト愛知目標」:2020年以降の生物多様性に関する世界目標のこと
日清紡グループの生物多様性保全活動
国内13事業所
会社・事業所 | 関連する愛知目標 活動内容 保護生物等 |
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日本無線(株) |
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長野日本無線(株) 本社工場 |
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日清紡マイクロデバイス(株) 本社および川越事業所 日本無線硝子(株) 本社工場 |
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日清紡マイクロデバイスAT(株) |
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日清紡ブレーキ(株) 館林事業所 |
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日清紡メカトロニクス(株) 美合工機事業所 NJコンポーネント(株) 岡崎事業所 |
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日清紡ホールディングス(株) 中央研究所 日清紡ケミカル(株) 土気事業所 |
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日清紡テキスタイル(株) 藤枝事業所 |
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日清紡テキスタイル(株) 日清紡ホールディングス(株) 日清紡ケミカル(株) 徳島事業所 日清紡テキスタイル(株) 吉野川事業所 |
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海外5事業所
会社・事業所 | 関連する愛知目標 活動内容 保護生物等 |
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深圳恩佳升科技有限公司 (中国) |
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Nisshinbo Micro Devices (Thailand) Co.,Ltd.(タイ) |
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Nisshinbo Somboon Automotive Co., Ltd. (タイ) |
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Nanbu Philippines Incorporated (フィリピン) |
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PT. Nikawa Textile Industry (インドネシア) |
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グループ会社における活動事例
定置網漁業による漂流海洋プラスチックごみの回収とモニタリング
日本無線(株)は2022年より東京海洋大学の研究テーマのひとつである「定置網漁業による漂流海洋プラスチックごみの回収とモニタリング」に協力し、生物多様性保全活動に貢献しています。
2050年には海洋中のプラスチックごみの量が魚の量を上回るという予測が報告されるなど社会に大きなインパクトを与えており、ウミガメや海鳥などの多くの海洋生物の胃内容物からプラスチックごみが見つかるなど、その影響が懸念されています。
東京海洋大学の取り組みで東京湾口に位置する館山湾の定置網操業に同行し、漁獲物と一緒に採集されるプラスチックごみを回収、種類や個数などを記録することで、回収されたごみの個数と気象海象などの関係を解析しました。その結果、プラスチックごみの回収量は降水量や風向などに関係のあることがわかってきました。
本取り組みは2024年まで継続する計画で、今後は海洋プラスチックの発生源の推定を試みる予定です。
特定外来種アレチウリなど駆除活動
上田日本無線(株)では、本社工場の崖下緑地に生息しているアレチウリの駆除を目的とした除草活動を、実施しています。今年で10年目の活動となり、活動時期は繁殖期前の6月と8月頃、参加者は10~15名程度、除草面積は約1,800 m3となります。
「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」により環境省から「特定外来生物」に指定されているアレチウリは、原産地でも「害草」と呼ばれ、その旺盛な繁殖力から生態系を破壊し、在来の動植物に悪影響を及ぼす存在です。
また、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」で外来種の侵入防止、生態系の影響の減少について触れていることからも、今後も崖下緑地(森林)を持続可能な形で管理するため、継続的なアレチウリなどの駆除活動を引き続き実施していきます。
事業所近隣地域の清掃活動
日清紡マイクロデバイス(株) 川越事業所では、例年、労使共催による事業所周辺の地域清掃活動を春と秋の年2回実施しています。
2020、2021年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により実施できていませんでしたが、2022年は、感染防止対策を図りながら約2年半振りに開催しました。春(4月)は42名、秋(10月)は45名の従業員やその家族の参加がありました。
2022年の活動では、周辺地域を3つのコースに分かれ約1時間程度のゴミ拾いを行い、可燃ごみ、不燃ごみ、ビン、金属類など合計で13.1 kgが回収されました。
2年以上も未実施の期間があり、周辺の景色は商業施設の開店や歩道の整備で人の流れも大きく変わっていましたが、沿道には春に桜、秋には紅葉も見られ、参加された従業員やその家族には参加賞もあり、楽しく取り組んでいます。
事業所内の外来植物調査
日清紡マイクロデバイス(株) やしろ事業所では、生物多様性保全のための貢献活動として、やしろ事業所内における外来植物の調査を実施しています。
事業所の生物多様性環境保全運用標準に従い、約76,000 m2の広大な敷地の緑地エリアに特定外来生物法に該当する侵略的外来種の植物が事業所内に存在していないかどうかの調査・確認を実施しています。
2022年については、7月27日に調査・確認を総務担当部署が実施しました。実施した結果、事業所内に侵略的外来種の植物が存在してないことを確認しました。
事業所周辺の清掃活動
日清紡マイクロデバイスAT(株)では、毎年4月に会社周辺の清掃活動を実施しています。従来は会社周辺の清掃活動のみでしたが、2022年は吉野ヶ里歴史公園まで片道3.8 kmに対象エリアを拡大し、従業員の健康促進を兼ね、往路を清掃、復路をウォーキングとし、3ルートに分かれ目的地を目指しました。
清掃活動終了後は、吉野ヶ里歴史公園にて昼食をとり、新入社員を中心としたレクリエーションも行い、参加者全員で春のひと時を楽しみました。復路は健康のためのウォーキングです。日常生活の歩きや散歩とは異なり、しっかりと「健康のため」という目的をもって歩を進めました。
今回、新入社員や従業員とその家族、合計67名が参加し、穏やかな天候の中、爽やかな汗を流しました。今後も、地域の清掃活動を継続し、地域とのつながりを大切にしていきます。
ロイクラトン祭のクアン川でのゴミ収集
ロイクラトン祭はタイの各地で行われる祭りで、陰暦12月の満月に農業の収穫に感謝し、水の女神コンカーに祈りをささげる日です。そこでは多くの人がクラトン(灯籠)を川に流します。祭りの後には、多量の廃棄物が発生します。ビニール袋、紙、発泡スチロール、鋼線、バナナの葉などのゴミがあり、川の景観が悪くなるほか、川に住む水生動物にも悪影響を及ぼします。
タイのNisshinbo Micro Devices (Thailand) Co., Ltd.は、この問題に着目し、川の環境を綺麗に保ち、水生動物に害を及ぼさないようにする活動として2020年から社員が参加するクアン川沿いのゴミ清掃活動を実施しています。新型コロナウイルス感染症拡大の状況下、2022年は同社社員21人がランプーン市職員と協力して清掃活動を行いました。この活動を通じ、タイ文化の理解と環境影響の理解を深めることもできました。
今後もランプーン市と協力してゴミ清掃活動を行い、川の環境や水生動物の保全に貢献していきます。
増田公園ビオトープ活動
日清紡メカトロニクス(株) 美合工機事業所では、敷地内にある増田公園の「トンボ類の生息環境保全・創出」を目標に掲げ、2017年度より活動を継続しています。2022年度は、従業員とその家族に加え、今年より新たにNJコンポーネント(株) 岡崎事業所からも参加いただき、6月11日に23名、10月29日に20名の2回、ビオトープ活動を労使合同で開催しました。
活動の内容は、増田公園の池に生息している外来種であるアメリカザリガニの駆除、上池および下池に密生している外来スイレンの刈取り、公園に生息している希少動植物種である、ニホンカワモズクとヒメタイコウチの保護を目的とした公園内の除草、公園内を安全に散策できるように散策路の整備です。
2023年度も、さらに活動の輪を広げて、希少動植物種の保護とトンボの生息環境創りのビオトープ活動を進めます。
ヒメコマツ系統保存活動の継続
日清紡ケミカル(株) 土気事業所では、生物多様性保全活動の一環として、千葉県が策定する「千葉県ヒメコマツ回復計画」の「ヒメコマツ系統保存サポーター」に応募しました。
ヒメコマツはゴヨウマツとも呼ばれ、標高の高い山地などに生育する常緑針葉樹です。房総丘陵での生育数は急激に減少し、絶滅が危惧されて「種の保存」が急務となっています。2016年6月に配布されたヒメコマツの実生苗1本を、敷地内に植樹して保全活動を開始しました。活動を開始してから庭師による剪定を何度も行い、約7年で樹高が95 cmから208 cmに伸び、約2倍の大きさに成長しました。まだ実をつけていませんが、近い将来、着果することを期待しています。
この取り組みを広げるため、千葉県旭市にある旭事業所でも2017年3月からサポーターになり、現在も保全活動を継続しています。
絶滅危惧種ミナミメダカの保全活動
日清紡テキスタイル(株) 藤枝事業所は、旧事務所脇の小池を整備し、ミナミメダカの飼育を2016年5月より開始しました。
メダカは、遺伝的にキタノメダカとミナミメダカの2種類に大きく分類され、ミナミメダカは地域によってさらに9つの型に分かれ、それぞれ独自の遺伝的特性を持っています。ミナミメダカは日本固有のメダカであり、近年、環境の悪化や外来種の侵入、あるいは遺伝子操作されたメダカ(ヒメダカ)が飼育しきれなくなり自然界へ放流されるなどして、固有種としての生存が脅かされつつあり、環境省のレッドブックでも絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されています。
藤枝市内のビオトープを所有している企業から当初150匹の成魚を譲り受けて飼育をはじめ、井戸水を利用して適度に清掃や水の入れ替えを行いながら水温を適温(20℃以上で繁殖)に保ち保全活動を行っています。2022年には生体数が現在での水槽では限界に近い数量(1,200匹程)まで増えています。
絶滅危惧種カワバタモロコの保全活動
カワバタモロコは体長5㎝程度のコイ科に分類される淡水魚で日本の固有種ですが、宅地化の進行などによる生息地の消失や外来生物の捕食、環境の悪化などにより、環境省レッドリスト2020で特定第二種国内希少野生動植物種(絶滅危惧種)に指定されています。徳島県では、絶滅したとされていたカワバタモロコが、2004年に鳴門市大津町の農業水路で偶然発見されたことから、カワバタモロコの保護と増殖の取り組みをはじめました。
日清紡テキスタイル(株) 徳島事業所では、日清紡ホールディングス(株)、日清紡ケミカル(株)、ダイオーペーパープロダクツ(株)とともに、徳島県と協定を締結し、カワバタモロコの譲与を受けて、防火水槽を活用した増殖活動に取り組んでいます。2017年から活動を開始して、この6年間で200尾から1,344尾まで増え、絶滅危惧種の保全に貢献しています。