トップメッセージ

「環境・エネルギーカンパニー」グループとして企業価値の向上に邁進します。

減収でしたが、純利益は大幅に増加しました。

当期の業績は、売上高が前期比2.9%減の5,120億円、営業利益が前期比208.5%増の150億円、親会社株主に帰属する当期純利益が263億円となりました。減収増益の要因は次のとおりです。
減収の主要因は、紙製品事業を大王製紙(株)へ譲渡したことです。当社は現在、オートモーティブおよび超スマート社会関連ビジネスに経営資源を重点配分する方針のもと、成長戦略を遂行しています。紙製品事業は70年の歴史を持つ事業で、直近2017年3月期には326億円の売上高(営業利益26億円)がありましたが、専業大手の大王製紙(株)のもと、一層の発展の機会を得ていくことが望ましいと判断し譲渡したものです。
営業利益の増益要因は二つです。一つは、エレクトロニクス事業において日本無線(株)が黒字化した(営業損益:前期▲54億86百万円→当期6億93百万円)ことです。主力のマリンシステム事業においてアフターマーケット向け機器や中小型船向け機器をてこ入れし、拡販につなげました。また日本無線(株)のソリューション・特機事業では大型防災分野での減収がありましたが、全社的な固定費削減などが奏功しました。もう一つは、ブレーキ事業において欧州のTMD社買収に伴って過去5期にわたり発生していたのれんが前期で償却終了したことです。これは、60億円弱の増益要因でした。
経常利益は営業利益増に伴い増益。親会社株主に帰属する当期純利益が大幅増益となったのは、紙製品事業の譲渡による関係会社株式売却益117億円と賃貸用不動産の売却益54億円の計上があったことによるものです。

決算ハイライト

(百万円)

17/3期実績 18/3期実績 前期比
  増減率
売上高 527,274 512,047 -15,227 -2.9%
営業利益 4,890 15,085 +10,195 +208.5%
経常利益 10,556 19,700 +9,144 +86.6%
親会社株主に帰属する
当期純利益
3,574 26,352 +22,778 +637.2%

長期業績目標のROE9%超を達成しました。

2009年、日清紡績(株)を分社化し、持株会社の日清紡ホールディングス(株)を設立しました。そのとき定めた長期業績目標は、2018年3月期に売上高6,000億円・ROE9%でしたが、そのうちROE目標を達成しました(当期10.6%)。売上高は未達でしたが、資本効率の改善が優先です。ただ当期は、事業譲渡や不動産売却に伴う特別利益の寄与が大きかったことも否めません。当社グループの営業利益を引き上げるべく、努力が必要です。
今期は、決算日を3月31日から12月31日へ変更するため、変則決算となり、業績としては比較しにくいですが、実質的には増収増益のペースです。
売上高・ROE推移 (3月31日に終了した事業年度)

成長に向けての経営資源を重点配分します。

成長に向けては、グループ経営とグローバル経営を強化し、攻めと守りのガバナンスの両方を高めていくことが重要だと考えます。2017年以来、各事業およびコーポレート・ガバナンスやステークホルダー関連において多くの取り組みを行い、成果をあげています。経営資源をオートモーティブと超スマート社会関連ビジネスへ重点配分する方針を掲げて、成長戦略を加速しています。

ROEとESGを重視して以下の施策を実践し、
量的成長と質的向上の両方を追求します。

投資家との建設的対話について

投資家と対話をする機会を大事にします。現在、機関投資家を招いて通期と半期、年に2度、決算説明会を開催しており、社長の私や担当役員が出席し、市場の声と直接向かい合う貴重な機会としています。
また、スチュワードシップ・コードの浸透を反映して、エンゲージメント・ミーティングの要望も増えてきています。ご要望には積極的に対応し、客観的な視点からの意見をもらって、経営に活かしています。

ROEの向上について

当社の資本コストからして、ROE9%はクリアしなければならない水準であり、かねてから長期目標としていたROE9%という目標は当期達成できました。しかし、特別利益の貢献による度合いが大きいのも事実です。肝心なのは営業利益を伸ばすことです。
次の長期業績目標では、ROEの目標を2025年に12%としています。ROE12%は、グローバル化を進める以上狙うべき水準と考えます。売上高の目標は1兆円。日清紡ホールディングス(株)設立初年の2009年から現在までのCAGR(年平均成長率)9.8%と比較しても実現可能なレベルだと考えます。しかし、売上高を追うことよりも資本効率の向上を重視すべきです。優先される目標はROE12%と考えています。
ただしROEを財務レバレッジで上げようとは考えていません。繰り返しになりますが、肝心なのは営業利益の向上です。以下に2025年時点でのB/Sと営業利益の想定を示します。

  1. 財務の健全性や事業環境の変化に対するリスクを考慮すると、自己資本比率は30%ないしは40%程度を維持する。
  2. 現在:総資産6,500億円以上(売上高5,000億円強)→2025年時点:総資産≒売上高ぐらいまでシェイプアップして、重いB/Sをより筋肉質にする。
  3. これらのことを勘案すると、2025年時点での株主資本はおよそ4,000億円。ROE12%のためには純利益で500億円程度、税率を考慮すれば営業利益は700~800億円ぐらいのレベルになる。

以上の想定から、事業特性により各事業でバラツキはありますが、全体では売上高営業利益率を7~8%以上に引き上げる必要があります。
一方で、「量的成長」に偏重するとどこかで歪みが生じ、持続的な成長が損なわれることになります。その軌道修正を「質的成長」すなわちESGの視点から常に行っていかないといけません。質量相まって成長して初めて健全な発展を遂げることができると考えています。

ESG・SDGsへの取り組みについて

海外投資家を定期的に訪問し意見を交換していますが、2017年は特にESG投資への関心の高まりを肌で感じました。我々日清紡グループは、もともと「環境・エネルギーカンパニー」グループを標榜し、「企業公器」を企業理念の一つに掲げています。
ESGの「E」については、事業を通じた社会貢献という形でしっかり根付いていると考えています。その一例として、グループ会社の日本無線(株)が現在進めている「ブラジル・パラナ州向け雨量レーダー普及促進事業」があります。これは、局地的豪雨による土砂災害リスクの高い地域の降雨量を高精度に計測し、早期に警戒を呼びかけるシステムです。2018年初から実証実験が始まっています。環境経営を推進する取り組みについては、こちらで報告しています。
ESGの「S」については、かねてから協賛してきたジュニアテニスの選手育成に加え、今年から卓球日本代表のオフィシャルスポンサーになりました。スポーツ振興を通じ次世代を担う若者の活躍を応援していきたいと考えています。
また、グループ組織風土を変革して、シニア層や女性など多様な人財の活躍を支援できるように推進体制を整備中です。まず今期は現状把握のために従業員サーベイを実施しました。並行して、世界各国・各地域にある拠点単位でも地域貢献活動に積極的に貢献しています。
ESGの「G」についてですが、当社は透明・公正かつ迅速・果断な意思決定のもと、攻めのガバナンスで持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めており、昨年は顧問・相談役制度を廃止しました。今年は、当社取締役の企業価値向上への貢献意欲をさらに高めるため、役員報酬制度を見直し、従来のストックオプションに代えて、譲渡制限付株式報酬制度を導入しました。
今後とも社会と共生し社会へ貢献していく企業として、より積極的にESGに取り組んでいきます。
同時に国連が提唱するSDGsへの取り組みも重要です。当社グループの長期業績目標は2025年に据えていますが、SDGsはその先2030年に向けて世界的な優先課題や世界のあるべき姿を明らかにしています。17の持続可能な開発目標には、我々の取り組んでいる開発テーマや保有技術と共通したものが多いと感じています。今期はバリューチェーンをマッピングすることから始めたところですが、経営へいかに統合していくかを見据えながら進めていきます。ESGに関するより詳しい情報は、当社グループのCSRウェブサイトをご覧ください。

コーポレートガバナンス・コードへの対応について

2018年6月にコーポレートガバナンス・コード(CGコード)が改訂されました。その趣旨をよく理解し、当社のコーポレートガバナンス・ポリシー(CGポリシー)も適切に改訂していきます。

複合事業体ならではの強みを発揮すること
⇒多様性のマネジメントを推進します。

当社グループでは、研究開発から人財戦略まで、多様な部門間を事業横断・組織横断的に横串を刺して交流させ、次の図のように現在9つのプロジェクトを並行して進めています。例えばオートモーティブ・プロジェクトは、事業セグメントの壁を越えて保有技術を見直し、それを組み合わせることによって、オートモーティブ関連ビジネスで事業シナジーを発揮し、さらにはイノベーションを起こそうという試みです。これらのプロジェクトの中から、ADASビジネスについては2018年4月に分離独立させ、新会社JRCモビリティ(株)を設立しました。

Mobility 日清紡がめざす移動体の自動運転技術

足元の業績を支える成長事業があります。

複合事業体ならではの強みを活かす横串機能の貢献が業績となって表れるまでの間、当面の成長ドライバーは、ブレーキ事業とマイクロデバイス事業です。

ブレーキ事業

北米全州で発効した環境規制に対応した銅フリー摩擦材は受注好調です。それに対応して北米における生産能力増強のための設備投資を行っており、業績への寄与は2019年から始まる見込みです。

※米国における環境規制に対応したブレーキ摩擦材。摩擦材に含まれる銅の含有量を最終的に0.5%未満へ減らすことが求められている。

Environment 環境問題の解決に貢献する独自技術

マイクロデバイス事業

従来「エレクトロニクス事業」として、日本無線(株)と新日本無線(株)は一つの事業セグメントでくくっていましたが、事業特性が異なることや、リコー電子デバイス(株)の連結子会社化により規模がさらに拡大することなどを考慮し、今期よりサブセグメントとして「無線・通信事業」と「マイクロデバイス事業」を設けました。
新日本無線(株)とリコー電子デバイス(株)がマイクロデバイス事業を担うことになりますが、両社の事業フィールドであるアナログ半導体は、世界市場規模としておよそ1兆円あります。テキサス・インスツルメンツ社を筆頭に、米国企業がシェア3位までを占めていますが、リコー電子デバイス(株)をグループに加えたことにより、売上規模は800億円レベルになり、世界の3番手争いが現実のものとなりました。設計・製造に関するお互いの強みを活かすことにより競争力を高め、グローバル市場で戦っていけるものと楽しみにしています。

新日本無線のマイクロデバイス事業戦略