トップメッセージ

「環境・エネルギーカンパニー」グループとして企業価値の向上に邁進します。

「技術新時代・超スマート社会への挑戦」をスローガンとして掲げ、グローバル社会にソリューションをもたらす企業へと成長を続けます。

2016年度の経営成績

当期の業績は、売上高が前期比1.3%減の527,274百万円、営業利益が前期比61.2%減の4,890百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比66.8%減の3,574百万円となりました。減収減益の要因は主に二つあります。
第1の要因は、エレクトロニクス事業の低迷です。セグメント利益では前期比11,558百万円減の3,240百万円の赤字となりました。中核企業である日本無線(株)において、海上機器事業(2017年度から「マリンシステム事業」と改称)では造船市況の低迷や海運市況の悪化により、またソリューション・特機事業では防災事業の大型案件の出荷が一巡したことなどにより、大きく業績が悪化しました。
第2の要因は円高によるものです。新日本無線(株)は出荷量ベースでは前期比プラスであったものの為替の要因で減益となるなど、エレクトロニクス事業では大きな影響がありました。同じくブレーキ事業でも為替が減収要因となっていますが、円高要因を除けば、TMD社ののれん償却前の営業利益も前期比224百万円増の5,914百万円となるなど着実に回復しています。
そのほかのセグメントについては、おおむね好調な業績となりました。

日本無線(株)の経営改革

日本無線(株)では、過去数年かけて大規模な事業構造改革を進めており、三鷹市から長野市への移転や長野日本無線(株)、上田日本無線(株)の完全子会社化など、抜本的な改革を行ってきました。しかし、依然として国内官公需や大型船舶向け製品の比率が高いことが今回の業績悪化の一因となり、これまでの戦略遂行にスピードが足りなかったことを反省しています。
現在同社では、ソリューション事業における国内官公需依存の状況を解消すべく、海外の販売体制強化に積極的に取り組んでいます。防災システムなど同社製品の拡販を狙い、2017年1月、インドネシアに現地の有力財閥の一つであり、繊維事業の長年のパートナーでもあるワルガ・ジャヤ・グループと合弁で現地法人を設立、本格的な販売とアフターサービスを開始しています。続いて、フィリピンやベトナムにも現地法人を設立する予定です。
経済成長が続くアジア諸国では港湾インフラの拡充、気象レーダや防災システムの整備などの需要がますます高まると予想されます。総務省が官民連携のプロジェクトチームを立ち上げるなど、日本政府も普及の後押しをしています。国内市場において大きなシェアを占める同社の防災関連製品は、すでにアジアでも広く使用され、高い評価を得ています。今後は自社による直販やメンテナンスサービスに注力し、成長を加速させたいと考えています。
マリンシステム事業では、日本無線(株)の子会社、Alphatron Marine Beheer B.V.を中心にグローバル主要拠点の現地法人化を積極的に進め、漁船やプレジャーボートなどの中小型船向けの製品ラインナップを増やし、収益力の向上を図ります。当事業においても、アジアを中心とした海外需要の取り込みが鍵となります。またこれからは機器の開発・販売のみならず、情報・サービスを含むソリューションの提供により、世界一の総合マリンシステムサプライヤーを目指します。そしてあらゆる船舶運航情報を集約管理することで、船舶間および船陸間での迅速かつ正確な情報共有と集積が可能となり、さらなる安全・効率運航の実現に貢献していきます。

日清紡グループの力を集結するADASへの取り組み

中長期的な取り組みとして、最も注力している分野は、ADASなど自動車の自動運転に関わる領域です。自動運転は、「認知」「判断」「操作」の機能から成りますが、私たちがターゲットにしているのは主に「認知」の機能です。日本無線(株)や新日本無線(株)の持つ優れたレーダ、レーザ、センサおよび半導体の技術を応用して、ADASビジネスを成長させていきたいと考えています。今年10月には日本無線(株)を完全子会社化することにより一層迅速果断な意思決定を可能とし、ADAS関連のビジネスの成長を加速させていきます。
日清紡グループはブレーキ事業や精密機器事業において、長年にわたり国内外のカーメーカーや大手Tier 1へ高品質な自動車部品を供給してきました。その実績に基づく信頼関係をベースに、さらにエレクトロニクス事業の技術を結び付け、成長事業を築こうとしています。
本格的に上市し収益貢献に至るのは数年先の見込みですが、今後の当社グループを担う新事業の一つになると確信しています。

※ Advanced Driving Assistant Systems(先進運転支援システム)の略

技術新時代・超スマート社会への挑戦

当社グループでは、2017年のスローガンを「技術新時代・超スマート社会への挑戦」としました。技術の進歩は加速しています。スマート社会、その先の超スマート社会を見据え、新時代に向けて常に挑戦し続けなければ、企業の成長・発展は望めません。より最終ユーザーに寄り添ったマーケットインの考え方を強化し、我々のつくる「モノ」を通して提供する「コト」や「サービス」を充実させ、お客様に「満足」や「体験」を享受いただき、当社グループの競争力を高めていきます。

※ 「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会のさまざまなニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といったさまざまな違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」(2016年1月22日「科学技術基本計画」)

横串機能の強化

エレクトロニクス事業、ブレーキ事業、精密機器事業のシナジーとしてADASビジネスが立ち上がったように、日清紡グループの最大の強みあるいは潜在力は、事業・技術の融合による新事業の創出力にあります。そのためには、グループ最適の観点が重要であり、その鍵となるのが「横串機能」です。
しかし、さまざまな地域、さまざまな事業分野に携わる当社グループの社員たちが、それぞれの領域の内部でのみコミュニケーションしていては、グループシナジーは得られません。自分たちの領域から出て、ほかの領域の社員とコミュニケーションを図ってこそ、新たな事業創出、グループ企業価値の向上につながります。
具体的には、グループ最適を目指し、生産技術力の強化やITインフラの整備を進めています。各事業の研究開発メンバー間の情報共有の場を増やし新事業テーマの探索力を高めます。若手社員をグループ横断で集めた勉強会も活発化させていきます。ADASビジネスやオートモーティブビジネスの推進、シェアードサービス化、同一国に併存する異なる事業セグメントのグループ会社同士の情報の共有化や経営管理面の効率性改善も進めています。こうした取り組みを当社グループのDNAとして根付かせるつもりです。
M&A後のシナジーにおいても横串機能は大きな威力を発揮します。前期に加わったプラスチック成形加工メーカーの南部化成(株)は、自動車部品だけでなく医療用機器にも強みがあります。このノウハウにエレクトロニクス事業のマイクロ波製品や医療用超音波機器の製造技術を組み合わせ、事業機会を一層拡大していくことを考えています。
当社グループは、M&A、既存事業、研究開発それぞれの分野で事業を融合し、シナジーを発揮させ、新たに生まれる事業を増やすことで、足し算ではなく掛け算的な成長を目指していきます。多様なアイディアや新分野が創出される風土を加速させていきます。

2025年度に向けて

長期業績目標として、2025年度の売上高1兆円、ROE 12%という数値目標を掲げましたが、私は売上よりも利益率が重要だと考えています。M&Aで2,500億円、既存事業の成長とR&Dから生まれる新事業で2,500億円という増収イメージを示していますが、横串機能から生まれるシナジーも重要です。2025年度までの成長のための投資額は4,000億円程度と見込んでいます。キャッシュフロー経営の加速により、現在想定される年間400~500億円の営業キャッシュ・フローをさらに高め、成長投資に必要な資金を調達します。
今後当社グループは、より成長を見込むオートモーティブおよび超スマート社会関連ビジネスに経営資源を重点的に配分する方針です。4月に紙製品事業を譲渡したのは、この方針に沿ったもので、今後も長期で全体最適の視点に立ち、成長戦略を遂行していきます。財務の健全性に配慮し、自己資本比率は30~40%を維持した上で資産の効率性を高め、利益率の向上を図っていきます。
株主還元については、安定的かつ継続的な配当を行っていきます。研究開発、設備増強、M&Aなどの成長投資に要する内部留保を十分確保し、安定性にも配慮した上で、増配や自社株買いも考慮に入れ、株主還元に努めます。
TMD社買収に伴い、毎年60億円近く、5年間にわたり発生していたのれん代の償却は、当期をもって終了しました。その間、TMD社では生産拠点の集約や移転拡張など構造改革に取り組み、収益性が改善してきています。また日清紡ブレーキ(株)と、原料の共同調達や労働安全の取り組みを行うなど、シナジー効果が発揮されてきています。今後もグローバルな視点から全体戦略をしっかり示し、2017年度を新たな飛躍の年にします。

日清紡グループの目指すもの

当社グループは、「環境・エネルギーカンパニー」グループとして、グローバル社会にソリューションを提供する企業を目指しています。今後、当社グループが存在意義をより一層高めるには、「モノ」づくりをベースとして、社会が必要とする「コト」や「サービス」をしっかり提供することが重要で、生み出す価値のキーワードは、「安心」「安全」「防災」「健康」「快適」「利便」「スマート」です。横串機能の強化によって社員一人ひとりが、組織横断的に全体最適の視点で考え抜く企業風土を創り上げたいと思っています。
現在の事業領域や事業区分が10年後も同じであるとは限りません。例えば自動運転は、自動車だけではなく、船舶、航空機にも広がり、陸海空をカバーするスマートモビリティやスマートトランスポーテーションの方向に発展していくことも考えられます。我々は柔軟な発想力と将来志向の戦略で経営資源を活用して、超スマート社会に貢献していきます。
また、より良いグローバル企業を目指し、コーポレート・ガバナンス改革を継続します。当期には任意機関として社外取締役を中心とした「指名委員会」「報酬委員会」の活動を始めました。さらに、ガバナンスの透明性に配慮し、これまで社長・会長経験者に対して委嘱していた相談役・顧問制度を6月に廃止しました。
世界的には地政学的リスクや外部環境の不透明性が高まってきています。短期・中期・長期の視点で、将来像を常に見据え、グローバル社会に一層貢献していける会社であり続けたいと思います。

2017年6月

日清紡ホールディングス株式会社
代表取締役社長

河田 正也