化学物質管理

基本的な考え方

日清紡グループは、「行動指針」 に環境負荷への認識と配慮を掲げ、各国の法律や規則に則り、有害物質を適正に管理し漏洩防止措置をとるとともに、製品に含まれる物質についても適正な管理に努め、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。当社グループの環境目標に売上当たりのPRTR対象物質※1 排出量削減を掲げ、KPI※2 を管理して計画的に対策を講じています。

【主な対策】

  • ①ISO14001の活動を通じ、各国の法律や規則に則り、有害物質に対し適正に管理・漏洩防止処置を実施
  • ②生産拠点での、PRTR対象物質使用量削減と、PRTR対象物質排出量および移動量の削減
  • ③精密機器事業などにおける、洗浄工程で使用する洗浄剤のPRTR非該当製品への変更
  • ④化学物質漏洩を想定した緊急事態対応訓練の実施

※1 PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)対象物質:「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づく制度の対象物質で、排出量・移動量の届出を義務付けられている物質

※2 KPI:Key Performance Indicator 業績管理指標・業績評価指標

推進体制については、「環境への取り組み」の「推進体制」の記載をご参照ください。

日清紡グループの具体的な取り組み

化学物質の取扱量

日清紡グループのPRTR対象物質取扱量実績は、2,625 tと前年度比6%減少となりました。長野日本無線マニュファクチャリング(株)において、トルエン、キシレン、エチルベンゼンをPRTR非対象物質へ代替する作業が進み、減少となりました。

PRTR対象物質取扱量のうち主要な物質は、ブレーキ原料のアンチモン(639 t)とクロム(330 t)、ウレタンの主原料であるメチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート(688 t)およびメチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート(387 t)です。

事業別では、ブレーキ事業がグループ全体の47%を占めています。

PRTR対象物質取扱量の推移

PRTR対象物質取扱量の推移

※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。

事業別PRTR対象物質取扱量

事業別PRTR対象物質取扱量

化学物質の排出量

日清紡グループのPRTR対象物質の環境への排出量実績は、21.2 tと前年度比20%増加しました。売上当たり排出量は、0.041 kg/百万円となり、前年度比20%増加となりました。精密機器事業のToms Manufacturing Corporationにおいて新たに使用を開始した洗浄剤によりPRTR対象物質の環境への排出量が増加しました。

PRTR対象物質排出量と売上当たりPRTR対象物質排出量の推移

PRTR対象物質排出量と売上当たりPRTR対象物質排出量の推移

※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。

化学物質別の排出内訳

物質名 排出量(t) 比率
トルエン 7.9 37.3%
キシレン  3.9 18.1%
エチルベンゼン  2.3 11.0%
1-ブロモプロパン  1.7 7.9%
ヘキサメチレンテトラミン  1.3 6.2%
フェノール  1.3 6.1%
その他  2.8 13.4%

物質別の排出量では、トルエンが最も多く37%を占めています。

事業別内訳では、キシレン、1-ブロモプロパンを排出している精密機器事業の比率が48%となりました。

事業別PRTR対象物質排出量

事業別PRTR対象物質排出量

※1 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。

※2 2019年度よりエレクトロニクス事業を無線・通信事業とマイクロデバイス事業に分離しました。

排水の浄化

日清紡グループの売上当たりのSS(水中の浮遊物質)排出量は、0.18 kg/百万円と前年度比 1%増加しました。売上当たりのCOD 排出量は、0.26 kg/百万円と前年度比 14%増加となりました。繊維事業において生産量が回復し、排水量が増加したことによります。

※ COD(Chemical Oxygen Demand):水質の汚濁状況を示す指標で、化学的酸素要求量または化学的酸素消費量

売上当たり排水への排出量推移

売上当たり排水への排出量推移

※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。

大気への排出

日清紡グループの売上当たりのSOx(硫黄酸化物)排出量は、0.07 kg/百万円(前年度比86%減少)でした。売上当たりのNOx(窒素酸化物)排出量は、0.09 kg/百万円(前年度比 83%減少)、売上当たりのVOC 排出量は、0.13 kg/百万円(前年度比 52%減少)、売上当たりのばいじん排出量は、0.02 kg/百万円(前年度比 78%減少)でした。繊維事業のPT. Nikawa Textile Industryが2021年11月から⽯炭ボイラーによる⾃家発電設備を停⽌したことにより、石炭の使用量が大幅に削減されことなどによります。

※ VOC(Volatile Organic Compounds):トルエンなどの揮発性有機化合物

売上当たり大気への排出量推移

売上当たり大気への排出量推移

※ 当社は2018年に、決算日を3月31日から12月31日に変更しました。これに伴い経過期間となる連結会計年度は、変則的な決算となっています。このため2018年度は、当連結会計年度と同一期間の12カ月間となるように組み替えた調整後参考値を記載しています。

グループ会社における活動事例

環境負荷物質の流出防止への取り組み

長野日本無線(株) 本社・工場では、構内の排水路が隣接した農業用水路に接続されていることから容器転倒や破損などによる土壌・水路への漏洩を想定して構外への流出を防ぐ緊急対応訓練を1回/年実施しています。

2022年度は10月19日、危険物保管庫を管理している部門から代表13名が参加し訓練を実施しました。訓練内容は、①保管容器、取扱の基本確認 ➁漏洩発生時の緊急連絡体制の確認 ③対応手順の確認および実地訓練(排水路堰止め場所の確認および堰止め、構内排水路へオイルフェンスの設置、吸着シートや柄杓を使用し有害物質の汲み取りなど) ④緊急対応保管備品、保管場所確認になります。
参加者は、自部門全員に訓練内容を展開し、環境保全に対する意識向上を図っています。

排水処理緊急訓練の実施による化学物質汚染リスク低減

NJコンポーネント(株) 山陽事業所では、排水処理施設での中和処理の薬剤として苛性ソーダ(アルカリ)、硫酸バンド(酸)を使用しています。処理施設は住宅から近い場所に立地しているため、漏洩事故発生時は土壌汚染にて近隣住民の方々に被害をもたらすリスクがあります。排水処理施設のトラブルによる漏洩は、平日・日中の管理者がいる時間帯に発生するとは限りません。

現在、休日・夜間は、施設に関する知識やトラブルの対処方法を熟知した作業者が点検を実施しています。しかし、トラブルはいつ発生するか分かりません。そのため管理者が不在となる休日・夜間の点検を実施している作業者2名に対し下記の訓練を実施し、土壌汚染を防止するとともに近隣住民の方々に被害をもたらすことのないよう努力しています。

  • ①土嚢の保管数、劣化状態、設置場所の確認
  • ②排水ポンプの稼働確認
  • ③漏洩を想定した処置対応訓練

SDSを用いた薬品の危険性の確認や応急処置の方法も確認し、安全教育も実施しました

化作業者訓練の様子
作業者訓練の様子
作業者訓練の様子

危険廃棄物および危険化学品漏洩対応訓練の実施

中国の日清紡賽龍(常熟)汽車部件有限公司では、2022年4月に危険廃棄物および危険化学品漏洩訓練を実施し、危険廃棄物および危険化学品の関係部署と緊急救援隊合わせて25名が参加しました。

訓練の想定は、作業者がフォークリフトで危険廃棄物化成液を運搬し、車載作業中の誤操作で、容器タンクのバルブが破損し、漏れが発生するという内容でした。

漏れの発生を確認次第、倉庫内の緊急物資を使い、危険廃棄物の漏洩防止処理を行うとともに、総務課へ状況を報告し、支援を要請しました。総務課は社内放送を通じて、緊急救援隊に通知し、緊急救援隊(緊急支援組、避難組、事故調査組)は現場で漏洩事故の処理(容器を交換し、地面の漏洩物を整理し、雨水バルブを閉鎖するなど)を行い、初期緊急処理後、地面に残っている危険廃棄物を水道水で洗浄し、収集された洗浄水を汚水処理設備で処理しました。最後に雨水のサンプルを採取し、外部に依頼した検査結果が合格となり、訓練の警報が解除されました。

危険廃棄物漏洩訓練
危険廃棄物漏洩訓練
危険廃棄物漏洩訓練

危険有害性物質漏えいを想定したシミュレーショントレーニング

インドネシアのPT. Standard Indonesia Industryでは、事業所内で危険有害性物質漏洩インシデントが発生した場合に迅速に対応できるよう、ラインプロセスのリーダーをトレーニングすることを目的に訓練を実施しています。

B3とは、インドネシアの業界標準でインドネシア語の「Bahan(物質)、Berbahaya(有害)、dan Beracun(有毒)」の頭文字をとった略称です。ヒトの健康や環境の持続可能性を危険にさらす可能性のある物質や物理化学的危険性物質のことを指します。B3は慎重に使用し、管理することが法令で求められています。

2022年7月に各部署から 10名が参加して、B3危険有害性物質の漏洩を想定したシミュレーショントレーニングを実施しました。

オイル漏れ緊急対応訓練

(株)エクセル東海では、機械設備のオイル交換時や廃油処理時のオイル漏洩事故を想定して、年1回新入社員を対象に緊急対応訓練を実施しています。

2022年度は8月8日に新入社員5名を対象に、ドラム缶転倒を想定したオイル流出防止対応訓練を実施しました。
「オイル漏洩事故対応手順書」に基づき、下記2点の状況に対しての処置手順を学び訓練を行いました。

  • ①フロアへのオイル漏洩は吸着ソックス、吸着マットを使用して漏洩元からの被害を断つ手順。
  • ②オイルが排水ピットに漏洩した場合を想定し、工場外への流出を防止するため、貯水槽排水口周りの処置対応手順。
オイル漏洩緊急対応訓練
オイル漏洩緊急対応訓練
オイル漏洩緊急対応訓練

設備導入によるPRTR対象物質使用量の削減

日清紡ケミカル(株) 徳島事業所では、カルボジイミドを製造しています。カルボジイミドは、イソシアネートを原料として、重合反応によりポリマー化することで製造しますが、この重合反応の進行状況はイソシアネート濃度(NCO%値)の監視により把握しています。

2022年6月、カルボジイミド反応釜(3台)にFT-NIR装置(近赤外線分光計)を導入し、これまで作業者が手作業で行っていたトルエン、キシレンなどの試薬を使用してNCO%値を算出する方法から、FT-NIR装置によってリアルタイムに測定されるNCO%値で反応状態が把握できる方法に変更しました。

その結果、作業時間1~2hrを削減することができ、作業者は他の反応釜の製造工程を進められるようになりました。さらに分析時に使用していたPRTR法規制対象物質に該当する試薬の使用量を2021年度比24%削減しました。

FT-NIR装置の説明
FT-NIR装置の説明

地震発生時の火災・漏洩対応力強化

日清紡ケミカル(株) 徳島事業所では、さまざまな化学薬品を使用し、24時間体制で生産活動を行っています。地震をきっかけとした火災や化学薬品漏洩などの緊急事態にも各人員が適切に対応できるよう、毎年さまざまな想定で昼専主体、交替勤務者主体の職場訓練を行っています。

各代表者は人員への指示を行う一方、消防など外部連絡や状況説明を行いますが、抜け漏れ無く情報を提供できるように、生産に使用する化学物質の簡易SDS(安全データシート)表や事業所マップなどの入ったリュックを避難時の携帯品としており、2022年度の職場訓練では地震による薬品漏洩から火災発生の想定訓練を行い、地震発生後の設備停止操作から人員の点呼、設備損傷個所の共有、漏洩した薬品の性状から適切な処置の指示までを円滑に行うことができました。

火災発生想定訓練
火災発生想定訓練
化学薬品漏洩訓練
化学薬品漏洩訓練

OEKO-TEX® STeP(エコテックス®ステップ)認証を取得

インドネシアのPT. Nisshinbo Indonesiaでは「OEKO-TEX® STeP」認証を取得しました。

OEKO-TEX®は、繊維製品の品質と安全性を評価するための国際的な認証制度であり、その中でSTePは、繊維製品を生産する工場や企業がいかに持続可能な体制であるかを証明する認証です。具体的には以下のような基準が設けられています。

  • ①従業員の安全と健康管理 
  • ②化学物質の管理
  • ③品質管理
  • ④社会的責任 
  • ⑤地球環境への影響

OEKO-TEX® STeP認証を取得することで、お客さまに対してより高品質で持続可能な製品を提供できることができ、環境や社会への配慮を実現することができるものと考えています。

液体アンモニア加工設備と緊急事態想定訓練

日清紡テキスタイル(株) 吉野川事業所では、織物・ニットの加工に幾つかの化学薬品を使用しています。液体アンモニアを使う工程があるため、加工で発生したアンモニアガスを回収貯蔵して再利用する装置を事業所内に有しています。

この装置は高圧ガス保安法の規制対象となるため、事業所には緊急時用の散水設備、非常用発電機や空気呼吸器、複数のガス検知器などを装備しており、指定機関による保安検査を毎年実施しています。

また、作業関係者についてはアンモニアの漏洩を想定した散水訓練や空気呼吸器装着訓練などの緊急事態テスト訓練を実施して、不測の事態にも対応できるように備えています。(2022年度は参加者7名で実施)①緊急時対応に必要な機材点検 ②アンモニアガスが漏洩した場合の散水手順 ③冷却水ピットのPH値が異常値となった場合の手順を保安係員の説明のもと訓練しています。

液体アンモニア貯蔵タンク
液体アンモニア貯蔵タンク
空気呼吸器装着訓練
空気呼吸器装着訓練