日清紡グループの成長に向けて~M&Aの考え方~

代表取締役副社長
経営戦略センター長
(役職はインタビュー当時)
村上 雅洋

日清紡グループでは、経営理念から導かれた経営戦略に沿って事業構造を変化させながら、「環境・エネルギーカンパニー」グループとして社会の持続的成長に貢献していきます。M&Aも活用しつつ多様性に富んでイノベーティブな企業文化を構築していきます。

企業理念をベースとし、成長領域を追求する

企業にとって最も大事なことは、変化し続ける社会ニーズに常に応えられるよう、継続的に変化していくことです。過去の成功体験に囚われていると、社会のニーズの変化に対応できなくなります。2000年代半ば、当時の日清紡グループの事業構造は社会が求めるものから乖離しているという反省から、社会の要請に適う成長領域への転換を開始しました。そして社会や時代のニーズに適う成長領域として、環境・エネルギー分野に狙いを定めました。
「環境・エネルギーカンパニー」グループとして、環境破壊や地球温暖化という人間社会が直面する最大の課題にソリューションを提供し、安全で安心な暮らしに貢献することが、事業活動を通じて人間社会に貢献し、企業を成長に導きステークホルダーに報いることにつながると考えています。
事業を通じた社会貢献により我々も成長していくというプロセスにおいて、事業ポートフォリオを成長領域へとシフトさせており、その結果、事業の多様化、経営の多様化が進んでいます。多様化はイノベーションのインフラ、同質化はイノベーションの敵と考えています。イノベーションには常に新しい組み合わせが必要です。企業の事業と人財が多様化し、組織の価値観も多様化することでイノベーションの素地が生まれてきます。ただし、多様化した経営を束ね目指すべき方向に導くには、「多様性の中での団結」が必要です。その要となるのが企業理念で、健全な挑戦者精神を保つためにも、企業理念の浸透に努めています。

M&Aの考え方について

成長領域への事業ポートフォリオの転換において、M&Aは有効な経営手法の一つです。M&Aには、成長のための時間を買う、技術を囲い込む、市場競争力を強化するといった案件ごとの目的がありますが、その根底にあるのは成長事業領域の獲得です。目先の事業拡大や投資リターンを追求するのではなく、事業会社としての成長を目指します。
M&Aにおいては、対象会社が当社グループの企業理念を共有できるかどうかを最も重視しています。間接部門のPMI※は当然重要ですが、肝心なのは事業の統合です。互いの長所を伸ばし短所を克服していく過程において、目標に向かって直線的に進むためにも企業理念や価値観の共有は不可欠です。対象会社がいかに優れた事業や技術を保有していたとしても、理念を共有しえないM&Aは実施しません。
また、M&A自体を目的化しないことも大事です。当社グループではM&Aに関する専門部署を設置しておらず、
都度プロジェクトチームを立ち上げています。スタッフはルーティンワークを抱えながらなので大変ですが、専門部署を置くとM&Aが目的化してしまいがちです。成長事業領域の獲得という本来の目的を見失わないようにしなければなりません。そして担当者任せにせず、トップ自らが交渉に入り、すべてを把握した上で判断することを大事にしています。またM&Aはやりぬくことも重要ですが、途中でやめる勇気も常に持たねばなりません。買収価格に終始するわけではありませんが、高値づかみとならないよう慎重に検討していく必要があります。
事業構造の転換を図る過程で事業譲渡を行う場合もありますが、売却前提で進めるわけではありません。その事業が日清紡グループの中にあるよりも、さらに成長できる可能性があるかどうかを検討します。お客様やお取引先様の満足度向上、その事業に従事する従業員処遇の安定性・将来性の向上に資するかどうかが重要です。

※Post-Merger Integration

M&Aの基本的な考え方

多様性からイノベーションへ

当社グループは、2025年にROE12%超の目標を掲げています。さらにその先も見据えて、社会の安全性や利便性、エネルギー効率の改善に貢献する移動体の自動運転技術、CO2排出削減に貢献する水素エネルギー技術など、大きな成長が期待できる事業に取り組んでいます。そのためには、自前主義の延長である多角化から脱却し、さまざまな技術や価値観をベースにした多様性をイノベーションの原動力としていく必要があります。
当社グループは、世界の社会や経済が激変する中で、持続可能な社会の実現という社会ニーズに沿ってビジネスモデルの変革に取り組み、「環境・エネルギーカンパニー」グループとして事業を通じて貢献していきます。