日清紡グループの財務戦略

日清紡グループは、2025年度12月期の⻑期業績⽬標として、ROE 12%、売上⾼1兆円を掲げています。⽬標の達成に向けて、既存事業拡⼤のための設備投資や新規事業創出のためのR&D投資、戦略的なM&A投資も⾏います。この⻑期業績⽬標の達成を資⾦調達⾯から⽀援するため、財務戦略は以下のように考えています。

取締役 常務執行役員
事業支援センター長
奥川 隆祥

長期業績目標の達成に向けた取り組み

2025年の長期業績目標および2025年時点でのバランスシートや収益レベルの想定については、社長メッセージで述べられているとおりです。繰り返しになりますが、資本効率を向上させROE12%を達成するためには、営業利益の増加が優先課題で、そのためには、重いバランスシートをシェイプアップしてより筋肉質にすることと、営業利益700~800億円、売上高営業利益率7~8%レベルへ引き上げることが必要です。
当社グループは、「企業公器」、「至誠一貫」、「未来共創」の企業理念のもと、「環境・エネルギーカンパニー」グループとして、中長期戦略において、オートモーティブおよび超スマート社会関連ビジネスへ経営資源を重点配分する方針を掲げています。これを反映し、投資は成長投資と維持投資に分けて考えており、売上高営業利益率の目標レベルも、成長事業の方が既存事業より高いものが求められます。いずれにしても当社グループの資本コスト約6%を踏まえ投資判断しています。

これまでの業績

百万円

  2015年3月期 2016年3月期 2017年3月期 2018年3月期
期初
目標
実績 期初
目標
実績 期初
目標
実績 期初
目標
実績
売上高 530,000 523,757 550,000 533,989 570,000 527,274 520,000 512,047
営業利益 18,000 13,744 20,000 12,617 16,000 4,890 15,000 15,085
経常利益 22,000 20,650 25,000 17,034 21,000 10,556 20,000 19,700
親会社株主に帰属する当期純利益 10,000 13,693 16,000 10,775 10,000 3,574 20,000 26,352

成長のための資金調達と配分

当期は、営業利益と純利益で期初目標を上回ることができました。しかし、その前3年間を振り返ると計画未達の年が続いており、資金調達面からも事業収益力の強化は必須課題と捉えています。
収益力強化のためには、前段でも述べたように成長投資分野へのタイムリーな投資が重要です。ブレーキ事業では北米の環境規制にいち早く対応した「銅フリー摩擦材」の受注が好調なことから、増産投資を決定しました。また、今年リコー電子デバイス(株)を取得し一段とプレゼンスを増したマイクロデバイス事業は、今後も車載や産業機器向けを中心に需要増が見込まれることから、積極的に投資していきます。
研究開発投資は、売上高のおよそ4%程度を目安にしており、将来のキャッシュフロー創出のためには維持していかねばなりません。ターゲットは、やはりオートモーティブおよび超スマート社会関連ビジネスであり、2017年秋に新聞報道で話題になった燃料電池車向けの部材開発やJRCモビリティ設立(株)など投資需要は旺盛です。
こうした投資のためのキャッシュ創出に向けて、在庫管理のさらなる徹底を進めていく必要があります。2018年3月末の棚卸資産は約1,000億円程度あり、各事業の特性による事情を考慮しつつも、強力なイニシアチブをとって目標を設定することがオペレーション改革へと発展し、在庫削減によるキャッシュ創出につながるのではないかと考えています。さらに不動産や保有有価証券の売却による下支えも進めていきます。コーポレートガバナンス・コードを踏まえた当社のコーポレートガバナンス・ポリシーに則り、政策保有株式は縮減の方向を堅持した上で、保有の意義および経済合理性の有無を定期的に検証していきます。
旺盛な資金需要に応えるため、外部調達も増えると想定しています。現在有利子負債は1,500億円弱ですが、2,000億円まではストレスなく調達できると想定しています。ですが、欧米が金利上昇局面を迎えたことや、昨今の先行きの見通しづらい経済環境などを勘案すると、もう少し保守的な見方も念頭に置かねばならないでしょう。

グローバル戦略の支援

当社グループでは、持続的な成長に向けてグローバル経営の強化を加速しています。2018年3月期の海外売上比率は47%となっており、今後もこの比率は高まっていくと考えています。グローバル展開の加速に伴い、海外に拠点を置く子会社の数も増加傾向にあります。この状況を踏まえ、会計監査の一層の充実・強化を図るため、2018年3月期はデロイト・トーマツを会計監査人として追加選任しました。
また、グローバルな事業運営の効率化および経営情報の適時・的確な開示による経営の透明性の強化を図るために、グループ全体で決算日を12月31日に変更、統一することを決定しました。今後はIFRS(国際財務報告基準)への移行も視野に検討を進めていきます。
さらに、グローバル展開の進展に伴い、各国、特に新興国における税務やクロスボーダー取引への対応がますます重要になっています。税を経営課題として捉え、税務ガバナンス強化を図っていきます。

株主還元の考え方

当社グループでは、連結配当性向30%程度を目安として、安定的かつ継続的な配当を株主還元の方針としています。当期の配当は前期に引き続き、年間で1株当たり30円としましたが、この金額を基本として安定的な配当を行っていきます。研究開発、設備増強、M&Aなどの成長投資に要する内部留保を十分確保し、安定性にも配慮した上で、増配や自社株買いも考慮に入れ株主還元に努めます。

配当総額・自社株買い・総還元性向の推移

(注)2009年3月期は赤字のため、総還元性向は算出せず