日清紡グループの財務戦略

長期業績目標の達成を資金調達面から支援

取締役 常務執行役員 事業支援センター長
奥川 隆祥

日清紡グループは、2025年度の長期業績目標として、売上高1兆円、ROE 12%超を掲げています。目標の達成に向けて、既存事業拡大のための設備投資や新規事業創出のためのR&D投資、戦略的なM&A投資も行います。この長期業績目標の達成を資金調達面から支援するため、財務戦略は以下のように考えています。

株主還元の考え方

当社グループでは、連結配当性向30%程度を目安として、安定的かつ継続的な配当を株主還元の方針としています。当期の配当は前期に引き続き、年間で1株当たり30円としましたが、この金額を基本として安定的な配当を行っていきます。研究開発、設備増強、M&Aなどの成長投資に要する内部留保を十分確保し、安定性にも配慮した上で、増配や自社株買いも考慮に入れ株主還元に努めます。

配当総額・自社株買い・総還元性向の推移

(注)2008年度は赤字のため、総還元性向は算出せず

キャッシュフロー経営の推進

当社グループでは、事業収益からの資金獲得を最大化すべく、キャッシュフロー経営を推進しています。具体的には事業ごと、子会社ごとにバランスシート上の在庫や売掛金などの運転資金科目に目標を設定し、PDCAサイクルにより実績をモニタリングしています。
CMS(キャッシュマネジメントシステム)も実施しています。国内子会社については、日清紡ホールディングス(株)に資金を集中させ、各事業の資金の過不足を調節することで、滞留余剰資金を最小化させています。同種のオペレーションを、中国では上海の拠点が、ASEAN地域ではシンガポールの拠点が、担当エリアの子会社群を取りまとめて行っています。そのほかの地域では、本社の事業支援センターが、細かくモニタリングしながら、インターカンパニーローンにより資金の過不足を調整しています。

事業ポートフォリオの最適化

ROE改善の最重要ファクターは、ROS(売上高純利益率)の向上です。
当期は、より成長を見込むオートモーティブおよび超スマート社会関連ビジネスに、経営資源を重点的に配分する方針のもと、紙製品事業の譲渡を行いました。今後も全体最適の視点に立ち、資本効率を高めつつ、成長戦略を遂行していきます。
当社グループでは、各セグメントの中で細分化された事業ごとに採算をモニタリングしており、3期連続赤字の事業については、経営幹部で継続の可否を議論します。また、新規投資案件の審査については、当該事業部や経営戦略センターだけではなく、事業支援センターも参画し、資金調達の面からも投資収益の適切性についてのFS(フィージビリティスタディ)を行っています。
現在、当社グループ全社の決算期を12月に統一することを検討していますが、これにより、各事業のモニタリングや比較検討が容易になると考えています。

長期業績目標の達成に向けた資金調達

長期業績目標達成のために、M&Aで2,500億円、既存事業の成長とR&Dから生まれる新事業で2,500億円という増収イメージがあります。目標期間中のM&Aを含む成長投資総額は4,000億円程度を想定しており、そのうちM&A資金として2,500億円前後を見込んでいます。設備投資については、期間を通して見れば、減価償却費で相殺できるでしょう。
M&A資金2,500億円のうち、約8割は既存事業からのキャッシュインで賄えると見ています。特に当社グループの不動産事業は、旧工場跡地の再開発により、大型商業施設の賃貸事業や有力ディベロッパーとの戸建分譲事業などを展開していますが、安定的なキャッシュ創出が計算できます。残る約2割の資金需要については、財務の安全性・健全性を考慮した上で負債調達を検討したいと考えています。
また、当社グループのコーポレートガバナンス・ポリシーに基づき、政策保有株式については、保有の意義および経済合理性の有無を定期的に検証した上で、その結果を取締役会に報告し、保有継続・売却の方向性を審議しています。これまでにもそうしたプロセスを経て、持合株式や政策保有株式の売却を行ってきました。
2017年3月末の自己資本比率は35.5%、有利子負債残高は2017年5月末時点で約1,100億円となっています。2025年度のROE 12%超という目標に向けて、過度に財務レバレッジを高めることは考えていません。今後も財務の健全性を考慮に入れ、自己資本比率は30~40%を維持していきます。その方針に沿った上で、社債の発行なども随時検討を行っています。社債の発行にあたって調達コストを下げるためにも、収益力の向上は重要な課題であると認識しています。